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昭和の旅館を射的カフェにリノベーション|空間デザイン・ビフォーアフター比較

今回のお題はこんな建物。
この建物を全解体せず空間創続し、あらたな使命を担ってもらいます。

改装前の建物外観/温泉街の裏路地に佇んでいます

調査したところ、昭和44年に写真の左2/3の部分が建てられ、その後3回ほど増改築を施された、木造3階建ての建物でした。

3階は写真には写っていませんが、女中さんの部屋として1部屋分「ぽこっ」と屋根の上に飛び出す形で存在しています。

延べ床面積は339.44㎡、約102.6坪。
従前の用途は旅館でした。

改装後のほぼ同じ視点から撮影した写真がこちらです。

改装後の建物外観


クライアントや営業に関する情報、コンセプトやデザインに関する内容の要約はプレスリリースに掲載していますので、よければご覧ください。



それでは、ビフォーアフター比較してみましょう!
まずはヘッダー画像にもしている、メインコンテンツの射的カウンターを作った場所から。

Before

手前の一段下がったところが旅館の玄関でここで靴を脱ぎ、正面の窓口のようなところが受付だったようです。
ここは、、↓こうなりました。

After

ちょっと角度が違いますが、左の壁の位置は変わっていないので脳内で整合性をとってみてください。

ヘッダー画像をご覧いただくとわかるのですが、普通「射的」というと的を裏から見ることはできません。

しかし、今回デザインしたカウンターは的の後ろにスペースを設け、ガラスの間仕切りを入れることで、的の裏から銃を構える人を見ることができるようにしています。

子供が頑張って的を狙っているシーンなど、一緒にこの場所を楽しんでいる人の姿を、正面から写真が撮れる経験を提供する設計となっています。


次は、この写真の左にチラッと見えていますが、2階に上がる階段です。

Before

木に見える蹴込み板はプラスチックのプリント合板で、壁は安いクロス貼りでした。ここは↓こうなります。

After

同じ視点の写真がありませんでした。。
アフターは2階からの見下ろしになっています。

壁は左官、手すりを作り直し、下面に照明を入れました。木造建物は人が移動する音も大きく響くので、床面をカーペットにして軽減しています。

色のトーンを統一し、光を抑制することで、外の光に導かれるようなドラマチックな移動空間になるようにデザインしています。

次はこちら。

Before

1階の旅館の玄関から外の路地を見るところです。
このエリアは↓このようになりました。

After

家具を置く前の写真なので、よりわかりやすいですが、路地に対して縁側を作っていて、街に溶け込む感じで座ってくつろぐスペースです。
冒頭の改装後の外観写真の右端のスペースになります。

季節の良い日には建具の存在を感じさせず、すっきりとしたオープン空間にしたかったので、建具は全て外壁側に引き込める形状にしています。


次はちょっと視点がちぐはぐなので、説明を元に変化を想像してみてください。ここが、、これかな?というクイズのようなものかもしれませんが、ヒントとしてBeforeの3つの写真全てに、同じ場所を示す黄色の丸を加えました。

Before1|黄色の丸ちょっとした収納場所だったところ
Before2|解体が進みました。
天井を抜いて小屋裏を表し古民家の風情を出し、天井を高くしています。
Before3|ビフォー1,2の写真と視点が違います。
1,2で見える奥の部屋から振り返った視点です。
解体がさらに進み、床版の一部を撤去し、1階から小屋裏までの大きな吹き抜けを作りました。


アフターはどうなったでしょうか?
このようになりました↓

After1

ビフォー3とほぼ同じ視点でのアフターです。
壁は一面左官で綺麗に仕上げ、床はタモの無垢板を貼りました。
吹き抜けに面した部分に木製の手すりをつけ、吹き抜けにはペンダント照明を。
大きな吹き抜け空間は、冬季に暖気が高いところに溜まってしまうため、高い位置に天井扇を取り付け、空気を下に流れるようにしています。

After2

こちらは吹き抜けの下、1階から見上げた写真です。
黄色の丸がついた収納場所が宙に浮いたような設えになっており、見上げた時に「あそこは昔部屋だったんだな」と想像がつくようにしています。
床の間のようにしているので、後日ここに掛け軸などアートを飾ろうと考えています。


いかがでしたでしょうか?
以上でこの物件のビフォーアフター比較は終わりです。
昭和の雰囲気がビシバシ伝わってくる築54年の木造建物を、その雰囲気、空気感を少し感じながらも現代的なお店空間にできたかなと思っています。

建物を壊さずとも、全く違った体験ができる空間はつくることができます。
解体と新しく使う資材が少ないリノベーションは、環境負荷の低減や物価が高騰する現代においてはお店づくりの選択肢として優秀なものかもしれませんね。

それではまた、別のビフォーアフター紹介をお楽しみに!
最後に、建物外観の夜の良き雰囲気の写真を載せておきます。

お店が街に溶け込むようなデザイン。
縁側空間が気持ち良い。


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笹岡 周平 |空間デザイナー/株式会社ワサビ 代表取締役
建築・インテリアなど空間デザインに関わる人へ有用な記事を提供できるように努めます。特に小さな組織やそういった組織に飛び込む新社会人の役に立ちたいと思っております。 この活動に共感いただける方にサポートいただけますと、とても嬉しいです。

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