ウォール街CEO、米経済の強さを称賛-大統領選は主要リスクと強調
要旨
サウジアラビアで開催される「フューチャー・インベストメント・イニシアティブ(FII)」年次会合に出席するためリヤド入りした金融界の大物は、米経済見通しについておおむね楽観的であると同時に欧州の成長が相対的に低迷していることに懸念を示した。
会議参加予定者の全体意見
米国景気に対する意見
米経済見通しについてはおおむね楽観的
国際通貨基金(IMF)は今年の米経済成長率予想を2.8%に上方修正。
先週公表した最新の世界経済見通し(WEO)にて
年末までにもう1回利下げがあるかもしれないとの意見には、大半が同意した。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は先月、0.5ポイントの利下げを決定。
米労働市場の回復を目指した政策シフトで積極的なスタートを切った。
年内さらに2回の利下げがあると思うかとの質問に対し、手を挙げた人は誰もいなかった。
リヤドに集まった企業経営者の多くは、市場の米利下げ観測について行き過ぎている可能性があると示唆。
会議の登壇者らは、11月5日の米選挙も市場が直面する大きな不確実要素の一つだと強調。
米リセッション(景気後退)懸念がFII参加者の主要な関心事だった新型コロナウイルス禍後の数年間と比べると、大きな変化である。
欧州景気に対する意見
一方で幹部らは、欧州の弱さや地政学的リスクなどに、一連の懸念事項をあらためて示した。
欧州の成長が相対的に低迷していることに懸念を示している。
ユーロ圏の成長率は0.8%、英国は1.1%との予測。
予想を下回る成長率となっている
欧州の企業利益の伸びは、大部分が大陸以外の市場からもたらされているとし、「これは構造的な問題だ」と続けた。
参加者個人の意見
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン氏
「米経済はかなり好調で、非常に強靭(きょうじん)だ」と発言。
米国については「ソフトランディング」が自身の基本シナリオだと付け加えた。
「米国では選挙を通過して、政策行動に関して明確な感触を得るまで、2025年の金融政策について考えるのは難しい」とゴールドマンのソロモン氏は話した。
選挙後に打ち出され得る政策についても、明確な見通しが立っていないため。
カーライル・グループのハービー・シュワルツCEO
「世界中の中央銀行を評価するべきだと思う。特に米金融当局は多くの評価に値する。」
スタンダードチャータードのビル・ウィンターズCEO
「欧州はそれほど速いペースで成長していない」と指摘。
ヘッジファンド会社シタデルのケン・グリフィンCEO
「現在の予想では、ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスを勝ち取るだろう」と発言。
「トランプ氏が勝利する可能性が高いが、ほぼ半々の確率だ」と語った。
まとめ(日本語)
サウジアラビアのリヤドで開催予定の「フューチャー・インベストメント・イニシアティブ(FII)」年次会合に先立ち、会場に集まった金融界の著名人たちは、米経済の見通しに対して楽観的な姿勢を示す一方で、欧州の成長の鈍化に懸念を表明しました。
米経済に関して、参加者の大半は米連邦公開市場委員会(FOMC)による年内もう1回の利下げがあるとの見方に賛同しており、IMFも最新の世界経済見通しで米国の成長率を2.8%に上方修正しています。ただし、利下げが2回実施される可能性については、挙手する者はなく、市場の利下げ観測が過剰であるとの懸念も示されました。また、11月5日の米選挙も市場にとって重要な不確実要素の一つとされています。
さらに、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、カーライル・グループなどの企業トップが集まったパネルでは、パンデミック後の数年間で主要な関心事だった米リセッションの懸念が、今回は大幅に薄れているとされ、むしろ注目すべきは欧州の低成長や地政学リスクであるとの見方が共有されました。特に欧州経済はユーロ圏が0.8%、英国が1.1%の成長に留まると予測され、欧州企業の利益成長が欧州以外の市場によるものである点が「構造的な問題」とも指摘されました。
個別の発言としては、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン氏が米経済の「強靭性」と「ソフトランディング」の可能性に言及し、2025年の金融政策を考えるには選挙後の政策の方向性が重要であると述べました。また、シタデルのケン・グリフィン氏は、米大統領選においてドナルド・トランプ氏が勝利する可能性が高いとの見方を示し、その確率は「ほぼ半々」だと述べました。
全体として、今回の会合の参加者たちは米経済については前向きである一方、欧州の成長鈍化や地政学的リスクに対して慎重な姿勢を崩していません。
まとめ(English Version)
Ahead of the annual Future Investment Initiative (FII) conference in Riyadh, prominent figures in the financial world gathered at the venue expressed optimism about the outlook for the U.S. economy, while voicing concerns over the sluggish growth in Europe.
Regarding the U.S. economy, most participants agreed with the likelihood of one more interest rate cut by the Federal Open Market Committee (FOMC) this year, as the IMF recently raised its U.S. growth forecast to 2.8% in its latest World Economic Outlook. However, none of the attendees believed there would be two more rate cuts, signaling concerns that market expectations for rate cuts may be overextended. Additionally, the upcoming U.S. election on November 5 was highlighted as a key factor of uncertainty for the markets.
During a panel discussion that included top executives from companies like Goldman Sachs, Morgan Stanley, and Carlyle Group, it was noted that fears of a U.S. recession, a major concern in the years following the pandemic, have significantly waned. Instead, attention was drawn to low growth rates and geopolitical risks in Europe. The European economy is expected to grow by only 0.8% in the Eurozone and 1.1% in the United Kingdom, with European companies’ profit growth largely coming from markets outside the continent, which was described as a “structural issue.”
Among individual comments, Goldman Sachs’ David Solomon mentioned the resilience of the U.S. economy and the likelihood of a “soft landing” scenario. He also noted that future monetary policy would be clearer only after the election, when the policy direction is better defined. Meanwhile, Citadel’s Ken Griffin predicted that former President Donald Trump is likely to win the election, estimating the probability at “about fifty-fifty.”
Overall, while participants at this year’s FII remain positive about the U.S. economy, they continue to adopt a cautious stance on Europe’s slower growth and the various geopolitical risks facing the region.
参考文献
Wall Street CEOs Tout US Resilience Against Concerns Over Europe
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