「1日24時間」で生活してる現代人、実はけっこう無理してる説
ところで、あなたは「通勤」をしているだろうか?
私は通勤がどうしても無理で、今はフリーランスとして家で仕事をしている。20代の時にはいわゆる「会社勤め」を数年経験したが、どうしても朝の満員電車が苦手だった。というか、そもそも体力がない+超夜型の私は朝起きられない。だからと言って会社を辞めてしまうのはちょっと極端な行動だったかも…と30代になった今になって振り返ることはあるが、後悔はしていない。「多様性」という言葉を聞くようになった昨今、私のような生活をする人はけして少なくない。
そんな私は、現代人は時間面でけっこう無理してるんじゃないかと思うことがそこそこある。要するに「1日24時間でやるべきことが多すぎて、普通に生活するだけで実はちょっと無理する必要があるんじゃないか」と考えた。
ということで「一般的な社会人は日常生活を無理のない理想的なスケジュール感で送ることはできるのか」「できるとしたら、1日の自由時間はどのくらいになるのか」を考えてみる。
考える前提として、
・今回は毎日通勤をする、一人暮らしの会社員の生活を考える
・通勤や労働は社会の平均で考える
・今回は男性の生活を考える(朝のメイク時間は考えない)
・どんな行動でも最低5分はかかる(5分単位で考える)
・体に無理をさせるようなこと(例:睡眠時間を削る、食事を削るなど)はしない
・急がない
・特別な行動はしない(日常生活を考える)
とする。
1.起きてから家を出るまで
だいたいの男性は、起きてからまず
・トイレに行く
・スマホチェック(SNS見たりニュース見たり天気調べたり)
・洗顔&歯磨き
・シャワーを浴びる
・仕事着に着替える
・朝ご飯を食べる
こんなことをしてから家を出ると思う。それぞれ時間を考えてみる。
・トイレに行く
だいたい5分で事足りるだろう。
・スマホチェック
LINEやTwitterのDM、メールなどを見ながら返信して、今日の天気やニュースを見ていると10分くらいはかかるだろう。もちろん朝食を食べながらや移動しながらでもスマホチェックはできるが、この10分は他のことをせずに(他のことをする手を止めて)スマホを見ている時間として確保する。
・洗顔&歯磨き
ある調査によると洗顔は1回あたり1~2分[出典]、歯磨きは最低3分(歯科では10分以上かけるのを推奨することも)はかかる[出典]ようだ。今回は無理をしないスケジュール感を考えるので、洗顔&歯磨きで10分かかるとしよう。
・シャワーを浴びる
ある記事によると、朝シャワーの時間は3~5分程度がベスト[出典]とある。体を拭いたり髪を乾かす時間も考えて、ここでは10分かかるとしよう。
・仕事着に着替える
職場によってスーツやオフィスカジュアル、作業着、私服など服装は異なるだろうが、ここでは服を選んで着るまでの時間を10分かかるとする。
・朝食
ある記事によると朝食を準備するのに平均9分、朝食を食べるのに平均12.3分かける[出典]とある。合計すると21.3分だが、今回は5分単位で無理せず考える前提があるので朝食に25分かけることとする。
ここまで済まして、やっと家を出れるだろう。
あわただしくない朝の生活を考えると、合計70分(=1時間10分)かかった。
2.家を出て業務が始まるまで
ある記事によると、家を出てから会社に着くまでの平均時間は39.5分[出典]らしい。また実際の通勤を考えると会社に到着してから始業時間までの待機時間が発生するので、朝の通勤と待機時間を合わせて50分かかるとする。
3.会社での生活
・所定労働時間
まず、「残業を除いた労働時間」を考える。
国の調査によると、1労働者あたりの所定労働時間平均は7時間42分[出典]だそうだ。今回は5分単位で考えるので、1日の所定労働時間は7時間45分と考える。
・休憩時間
労働基準法によれば「労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は45分の休憩時間を与えなければならない」とあるが、ある東京都の調査によると実際の休憩時間は74.4%が休憩時間を60分としているため、ここでも休憩時間は60分と考える。
・残業
ある記事によると、国が調査した平均残業時間は13.8時間(1日あたり約40分)、民間が調査した平均残業時間は22.2時間(1日あたり約70分)らしい[出典]。調べ方によって差が出たものだと思うが、今回は1日あたり60分の残業が発生すると考える。
所定労働時間に休憩時間と残業を加えると、会社で9時間45分を過ごすことになる。
4.会社を出て家に帰るまで
朝とは異なり「始業を待つ時間」はないので、純粋な通勤時間として40分かかるものする。
5.家についてから寝るまで
だいたいの人は家に帰ってから寝るまでに
・トイレに行く×2回
・夕食
・入浴
・歯磨き
このくらいはして、寝ようとするだろう。それぞれの時間を考えてみる。
・トイレに行く×2回
1回5分として、10分あれば足りるだろう。
・夕食
ある記事によると、夕食にかける時間の平均は33分だそうだ[出典]。今回は5分単位で考えているため、夕食の時間を35分として考える。
・入浴
ある調査によると、入浴にかける時間は11分~20分が最多、次いで21分~30分、10分以内、31分以上[出典]らしい。この結果をもとに、今回は入浴時間を20分とする。
・歯磨き
朝とは異なり、歯を磨くだけの時間として5分と考える。
ここまで済まして、やっと寝ることができるだろう。
あわただしくない夜の生活を考えると、合計70分(=1時間10分)かかった。
6.睡眠時間
ある記事によると、(個人差や年齢により変化するものの)理想的な睡眠時間は6~8時間[出典]とある。ただし実際の睡眠は横になってすぐ寝れるものでもないため、睡眠時間を7時間としてそれに「寝るために横になっている時間」30分を加えた7時間30分を今回の睡眠時間とする。
7.今回考えなかったこと
今回は「社会人男性が平日にしなければならない最低限のこと」を考えたため、以下の行為や行動は考慮していない。
・朝のメイク(女性):平均15分[出典]
・買い物:1回30分~1時間
・洗濯:1回15分程度(洗濯機を回す→干す→たたむ)
・掃除:1回約30分[出典]
・自分のための時間(趣味や学習など)
・人付き合いの時間
社会人が無理のないスケジュール感で生活を送ると…?
時間がわかったので合計してみる。
1.起きてから家を出るまで:1時間10分
2.家を出て業務が始まるまで:50分
3.会社での生活:9時間45分
4.会社を出て家に帰るまで:40分
5.家についてから寝るまで:70分
6.睡眠時間:7時間30分
合計:21時間5分
無理のないスケジュール感で日常生活を送ると、必要最低限のことをするだけで21時間5分かかる=24時間以内に収まったので、一般的な社会人は日常生活を無理のない理想的なスケジュール感で送ることはできると言える。
ただ、自由に使える時間は1日あたり2時間55分しかないこともわかった。女性なら朝のメイクでさらに10分は自由時間が減るだろう。この2時間55分で必要な家事(買い物や洗濯、掃除など)をして、人付き合いをしつつ、自分の趣味や学習もしないといけない。仕事のある日は余裕などほとんどないと言えそうだ。
また、これはあくまで平均的なケースを基に考えた結果だ。
もし毎日2時間残業したり、通勤に片道1時間10分かかったり、理想的な睡眠時間が8時間だったりすると、自由に使える時間は1日あたり2時間もない。
もし1日4時間残業する人がいたら、その人がその日自由に使える時間はもはや全くない。何かの時間を切り詰めて時間を作り出さないと、自由時間がないどころかプライベートな時間すらマイペースに生活できない、文字通り「仕事のために生活している」状態だ。
私の個人的な感覚だと、今の仕事が好きな人や好きなことを仕事にできている人はそこまで問題にならない生活だと思う。
ただ、「生きるために仕事をしている人の生活」だとしたらこれはどう考えても時間が足りないように思う。労働者の年間休日が平均115.3日、つまり「生きるために人並みの環境に住む人が人並みの社会人生活を送ると、年間250日は自由時間が3時間もない日々を送ることになる」とも言えるだろう。
ところで、ある刑務所では17時の夕食後から21時までの消灯時間まで、3時間以上の自由時間がある[出典]。自由時間だけで見ると、受刑者より一般的な社会人のほうが不自由だと言える。
こんな社会で、何が多様性だ。
何が「誰もが自分らしく生きられる社会」か。平均でこれなのに、平均以下になる社会人の半数はどう多様性を求めればよいのか。娑婆で過ごす社会人の約半数は受刑者よりも自由な時間が取れない生活を送る時代で、どう多様性を求めるために行動すればいいのだろうか。体を壊してでも時間や金銭を絞り出して、少なくない無理をしないと「多様性のかけら」も手に入れられないのではないか。
社会に少なくない数いる弱者が感じる、絶望を垣間見た気がする。
本当は「無理のない生活を送るための労働とはどの程度か」まで考えようと思っていたが、ここまで考えた結果にひどくがっかりしてしまったので日を改めることにする。