
棘上筋の解剖学〜最近の治験に基づいて〜
お話しする棘上筋は回旋筋腱板(かいせんきんけんばん):Rotator cuffを構成する筋の一つです。
回旋筋腱板には下記のような作用があると言われています。
”前方と後方の腱板筋が共同して骨頭を関節窩へ引きつける作用”(force couple)がある。
腱板が機能することによって”上腕骨頭の前後方向の安定性”を高めている。
特に棘上筋に関しては竹村が下記のように報告しています。
棘上筋は関節を動かすよりも上腕骨頭に安定性を与えるのに適している。
このように、棘上筋は上腕骨頭を関節窩内に収めて安定性を与えることに適した筋であることが分かります。
では起始停止についておさらいしていきましょう。
起始:肩甲骨棘上窩
停止:上腕骨大結節
支配神経:肩甲上神経(C5-6)
作用:肩関節外転
学生時代は上記のように勉強をしていると思います。
しかし、臨床ではこの知識だけでは太刀打ちできない症例を何例も経験したため、棘上筋の機能解剖を一から学び直しました。
1.棘上筋の2つの線維
棘上筋の線維について下記のように報告されています。
棘上筋の最前縁には強い腱性部が存在し、棘上窩ならびに肩甲棘の上面に起始する筋線維の多くはこの腱に合していた。
その他の筋線維は、後方の薄い筋性部として大結節の内側に停止していた。

2.棘上筋の停止部
棘上筋の停止部について望月らが下記のように報告しています。
棘上筋はSuperior facetから一部では結節間溝を超えて小結節まで付着している

これらのことから、これまで棘上筋は肩関節外転・外旋作用が重な作用だと考えられてきましたが、棘上筋の腱性部が30%において小結節に停止していることから、屈曲運動にも作用すると考えられ、屈曲・内旋運動にも着目する必要があります。
また、細かな解剖運動や評価は後日ご紹介します!