「買ってよかった」と感じてもらえることが顧客体験戦略の目指すべき最初のゴールである。
こんにちは、Asobica / VP of Strategyの佐藤頌太です。
現在は、事業推進室 室長を務めております。
Asobicaでもアドベントカレンダー2025を開催することになったので、先日登壇したセミナー内容をドキュメントでも起こしてみようと思います。
今年のラインナップはこちら
本noteの趣旨
・Asobicaではコミュニティやゲーミフィケーションリサーチ、データ分析BI、データ活用領域のプロダクトなど様々なプロダクトを展開しています。
・BtoC / BtoB事業者問わず様々な領域に価値提供をしています。
・今回はメーカー企業やリテール企業などオフラインで商品やサービスを提供している事業に焦点を当てた内容を記載しております。
・Asobicaで働くことに興味がある人もぜひ読んでいただければと思います。
私たちは顧客体験をどう捉えているか?
早速ですが、顧客体験(CX)というキーワードは多くの企業が様々な表現をしています。私たちAsobicaとしても顧客体験というキーワードを活用しながら、様々な企業やブランドの商品企画開発や、販促企画、プロモーション、店舗体験戦略など、様々な領域で支援をしてきました。もちろん成功した事例もあれば、失敗した事例もあります。ただ、多くの経験則に共通して言えるのは、消費者の利用実態に基づく意思決定は精度が高いということです。
今回は、企業価値や売上等の重要指標を、顧客が買ってよかったと感じてくれる=満足度合いの総和と大きく捉え、顧客体験というキーワードを整理していきたいと思います。
このように、顧客体験というキーワードを
時間軸で
・「検討体験(購買前)」
・「購買体験(購買時)」
・「使用体験(購買後)」
の3つで並べ、
行動心理軸で
・「行動」
・「顧客心理」
で分割する。
そうすると顧客体験を6つのブロックに分けることができます。
次に初回購買と継続購買の関係性を整理します。
図のように、
初回購買は、
「検討体験(購買前)」「購買体験(購買時)」により作られる「期待=買ってみたい」の大きさによって決まり
継続購買は、
「検討体験(購買前)」「購買体験(購買時)」により作られる「期待=買ってみたい」の大きさに比べて、「使用体験(購買後)」の大きさはそれ以上でなければ成立しない
という論で整理しています。
顧客の使用体験はなかなか把握できない?
顧客体験の重要性は広く認識されていますが、実際にどう取り組むべきか悩む企業が多いのが現状です。そして、実務的な活用の領域においては、比較的オンラインサービス事業者が中心に事例が多く集中していると感じています。というのも、オンライン上でのサービス提供であれば、顧客のサービス利用行動を全てデータで把握でき、満足のいく利用を妨げるサービスの問題点や、サービス利用行動と売上の相関が見えるので、顧客体験の可視化が容易です。よって、最適化に向けたアクションやPDCAも実行しやすいです。他方、一般的な生活用品や食品や飲料、飲食点や小売など、オフラインで利用されるサービスの場合、そもそも顧客体験として取得できるデータが限定的であると捉えています。
それではここから少しだけ、当社が数年間に渡り取り組んできた顧客体験向上の取り組みから得られた知見をもとに、試行錯誤の末に見出した「顧客体験戦略」のプロセスをお伝えします。
特にマーケティングや商品開発に携わる方、そして経営層の方々に、ぜひ参考にしていただければと思います。
最も重要な「使用体験(購買後)」を捉えるための考え方|ZeroPartyData(ゼロパーティデータ)
特にオフライン事業者の皆様は、商品がどれだけ知られているか、どれだけ売れているのかを理解することはできても、お客様が家でどう使っているかまではわからない。
ましてや、使っているときの気持ちなんて、もっとわかりませんよね。ここで登場する考え方がZero Party Data(ゼロパーティデータ)という考え方です。
これは「お客様が自ら進んで教えてくれる情報」のことで、SNSやコミュニティでの書き込みや商品レビュー、アンケート回答などが該当します。
「使用体験(購買後)」のデータはできる限り持続的かつリアルタイムに取得し続けることが理想である
「使用体験(購買後)」のデータの収集において、1つ押さえるべきポイントは消費者の価値基準はリアルタイムに変化し続けるということです。競合製品も情報もトレンドもとてつもないスピードで変化をしています。例えば、思ったようにキャンペーンがなぜかハマらなかった、などはそれが要因です。ともなると、持続的かつリアルタイムに使用体験に関するZeroPartyDataを取得することができれば理想です。そのためには顧客との良好な関係性を構築し、自ら消費者が進んで使用体験データを発話してもらうことが有効的です。
使用体験報告はむしろリアルタイムでないと発話できない。時間が経てば精度が一気に下がる。
私たちはコミュニティという手段を一つのZeroPartyData取得の方法として持っておりますが、質の高い使用体験の発話時刻は、サービスの利用時刻とおおよそ一致することがわかっています。
つまり、お客様が自ら進んで利用体験を報告してもらうためには、サービス利用時にそのまま利用体験報告ができるような形を作らなければなりません。
コミュニティでのチャレンジ
ファンコミュニティでは、お客様同士の自然な会話から思わぬ発見が得られます。例えば、株式会社大創産業の「DAISO」の事例では、商品数が多すぎて、お客様に良い商品を見つけてもらうのが難しいという課題がありました。そこで、ファンコミュニティを作って「買ってよかった商品」を投稿してもらうコーナーを設けたんです。
少し、実例を見てみましょう。ある方が、DAISOの100円ドリルについてこんなコメントをしたんです。
「元塾講師ですが、このドリルはすごく良いです。薄いから子どもが1冊終わらせやすい。達成感が得られるんです」
これ、すごい発見じゃないですか?普通、教材って分厚い方が良いって思いがちですよね。でも、子ども目線で見ると、薄くて終わらせやすいことが大きな価値になる。
ここから考えられるアクションは、例えば「低学年向けのSKU(単品管理)を増やす?」「低学年向けには訴求を変える?」「おもちゃコーナーにおいてみる?」などの戦略が容易に発想できます。
こういった気づきは、お客様の声を聞かないと絶対に得られませんよね・・・!
ただ、コミュニティという空間はとても特別な空間で、全てのお客様が毎日利用してもらえるものか?というとそうではありません。Asobicaでは次のチャレンジとして、コミュニティ以外にもお客様が自ら進んで利用体験を報告してもらえるようなサービスを最近作りました。
coorum research|コミュニティ以外にもお客様が自ら進んで利用体験を報告してもらえるようなサービスを作りました。
コミュニティのように新たな顧客接点をオンライン上に作るのではなく、クライアント様がすでに保有している顧客接点(アプリやECや店舗や商品など)に、埋め込み型で起動するリサーチプロダクトです。特徴としては、ゲーミフィケーション要素がとても強いことで、お客様に対して企業が知りたいから業務的に答えさせるアンケートではなく、リアルタイムかつ持続的に使用体験を回答いただけるようお客様にとって楽しいゲーム機能を活用する中で使用体験データを蓄積できるサービスです。顧客IDや商品マスタとの連携も可能で、各商品評価につなげたり、LTVを向上するための顧客体験におけるキードライバーの発見なども分析を通じて理解することができます。
ニップン アマニ商品の使用体験収集事例
ニップン様のアマニ商品では、coorumを活用した、コミュニティやゲーミフィケーションリサーチを活用して、お客様の商品利用促進を助けるためのコミュニケーションを行いながら、商品の利用実態をつかむチャレンジを行っております。例えばアマニ継続チャレンジという企画では、お客様同士でアマニを利用するための工夫や応援による交流を発生させていたり、自分一人で商品利用記録を日記として残しカレンダー表示することで、使い忘れを防ぐための機能などをウェブサイト上に提供しています。
企業と顧客の間に生じる価値認識のズレ
ニップン様の事例において、使用体験データを膨大に収集したのち分かったことはいくつかありますが、おおよそ企業が元々想定していた価値とは異なる価値を消費者が感じていたことがわかりました。例えば以下の3点が挙げられます。
・健康に関する意欲の高い生活者がメインターゲット → そうではなかった?
・アレンジを楽しんでもらうことが継続利用には重要 → アレンジよりも習慣化する工夫の方が重要?(むしろアレンジは利用頻度を下げる?)
・競合製品よりも優れた成分を打ち出すことがブランド選択率の向上には必要 → 消費者の関心はそこにはない?
企業と顧客の間に生じる価値認識のズレ(概念整理)
顧客=消費者の利用実態に基づいたプロダクトコミュニケーションが重要である。これが私が最後に伝えたいメッセージです。
繰り返しとなりますが、「企業と顧客の間に生じる価値認識のズレ」は、あらゆる経営の意思決定やマーケティング施策の精度を低下させる要因になります。
ともなればこの「企業と顧客の間に生じる価値認識のズレ」はほぼ必ず生じるものだと、あえて前提に立つことが重要です。
まとめ
今回お話してきた「買ってよかった」顧客体験を引き出す方法のポイントを、以下にまとめました。
顧客体験は6つのブロックで捉える:(検討・購買・使用の各フェーズ × 行動・心理の2要素)
最も重要なのは「使用体験」:ここが「買ってよかった」につながる。リピートやUGCは「買ってよかった」がなければ生まれない
マーケティングの施策精度向上のためには見えにくい「使用体験」を持続的かつリアルタイムに可視化する:そのために、お客様が自ら進んで共有したくなるような体験設計が重要
coorumは面白い(マジで面白い)
コーラムはコミュニティやゲーミフィケーションリサーチ以外にもデータ分析、データ活用領域の様々なプロダクトを提供しております。
もし、具体的な取り組み方でお悩みの方は、ぜひお気軽にご連絡・お問い合わせください&定期開催されているセミナーでは、今回紹介しきれなかったノウハウや事例の詳細などをお話しているので、こちらもお気軽にご参加いただけるとうれしいです。
また、Asobicaでは現在、カスタマーサクセス、データ事業部をはじめとしたポジションで採用強化中です。船に乗りたい人ではなく、船をゼロから作って漕ぎたい人。そんな人をお待ちしています!