今年2番目に良かったよ『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
この日は前述の『65/シックスティ・ファイブ』と、この映画とあと1本の合計3本を鑑賞しました。もう少し若いころは4〜5本いけたけど、今は3本が限界。お尻の弾力が落ちてきています。ゲイとして死活問題!
さて、なんてったってキャスティングが良いです。
美しきルーニー・マーラーに、Netflix『ザ・クラウン』で若き日のエリザベス女王を演じて注目されたクレア・フォイ、いかにも玄人受けなアイルランド人女優のジェシー・バックリーに、言わずと知れた名優フランシス・マクドーマンド。
唯一登場する男性は、イギリス人俳優の可愛いベン・ウィショー。
で、タイトル『ウーマン・トーキング』の通り、彼女たちが話し合う映画なのですが…
ある村で女性たちが次々とレイプされます。
眠っている間の出来事なので記憶はないのですが、朝、目覚めると下半身が出血していたり、痣ができたりしています。
村の男たちは「悪魔の仕業だ」「作り話だ」と否定します。
だけど、ある日、実行犯の男が捕まります。
牛の鎮痛剤で一家全員を眠らせての犯行でした。
隣町に捕えられている男の保釈を求めて村の男たち全員が家を空けている(つまりそういう男尊女卑の村なのですが)2日間のあいだ、女性たちが自分たちの今後について話し合う、その様子がまるまる1本の映画になっています。
赦すのか。戦うのか。それとも去るのか。
村の女性たちは文字の読み書きができません。地図も読めません。自分たちがアメリカのどこら辺にいるかすら知りません。外には綿花畑が広がり、移動は馬車。しかも、この男尊女卑。
いったいいつの時代の話だよ?
暮らしや服装の感じからして19世紀か20世紀初頭あたり…と思うけど、実は設定は2010年、つまり現代のお話です。
現代技術を使わずにクラシックな暮らしを続けるキリスト教の教派「メノナイト」のコミュニティ内で、2000年代に実際起こった事件がベースになっています。
ルーニー・マーラーはレイプでできたお腹の子に愛情を感じ、クレア・フォイは3歳の娘を乱暴されて復讐に燃え、ジェシー・バックレーは男たちに対抗できない自分に内心イライラしています。
宗教コミュニティ内のお話ですから、赦さなければ天国へ行けない、復讐をしたら地獄に落ちる、なんていう話もでてきます。
だけど、赦すとはどういうことなのか?
愛した男たちとはどうなるのか?
今は幼い少年たちはどんな男に育ってしまうのか?
同じ意見を持たない女性たちがひとつの納屋に集まって、永遠にループするようなお話を話して話して話して話して話して…という映画です。
私はnoteなんかを細々とやっているくらいですから『言葉』が好きなので、この手の会話劇は大好物です。
「ときに赦しは許可と解釈されてしまうわ」なんていう心震えるようなセリフがたくさん散りばめられていますし、外で元気よく遊んでいた3歳の少女が、突然、お母さんに抱きついてきて
「どうしたの?」
「痛いの」
そんな一言が息を止めるほどに胸に突き刺さるシーンもあります。
#Me Too運動以降、こういう映画が本当に増えましたよね。
ちなみにこの映画も、以前noteに書いた『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』と同じ、ブラッド・ピットらが創立した映画会社『PLAN B』の作品で、映画総指揮ブラッド・ピットです。
やっぱりカッコいいなー、ブラッド・ピット。
そして、この映画は2023年度 米アカデミー賞 作品賞にノミネートされた10作品の中で、最後に日本公開となった映画でもあります。
これで私も全ノミネート作品を観たことになるのですが。
私の推しはやはりオスカー受賞の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ですが、対抗馬はこの映画でしたね。
すごく良かったです。
ちなみに監督はサラ・ポーリー。
私の大好きなゾンビ映画のひとつ『ドーン・オブ・ザ・デッド』の主演女優さんなので、なお一層、肩入れしたくなるのですが。
さて、女性たちは長い話し合いの末、果たしてどんな選択をするのか?
みなさんも、ぜひ。
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