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日本版をもう一度観たくなる『異人たち』

ずいぶん前に劇場で予告編を観た時に「ウソでしょー!」ってなりました。山田太一原作『異人たちとの夏』の再映画化。
私は1988年大林宣彦監督作のこの映画が大好きです。好きな日本映画、10本の指に入る。

40歳の孤独なシナリオライターの、同じマンションに暮らす風変わりな女との恋愛話と、生まれ育った浅草に寄ったら死んだはずの両親が存在していたという家族の話が同時進行していく、ちょっと不思議なストーリーなんですけどね。

それがロンドンを舞台に再映画化されると聞いて「目の付けどころ抜群じゃーん!」って大喜びしました。

日本版とロンドン版の大きな違いは、ロンドン版は主人公の男がGAY。

だから、お母さんにカミングアウトするんですけど、お母さんも古い時代の人だから(もう何十年も前に死んでるし)、「え!?子ども欲しくないの?一生ひとりで寂しくないの?」なんて詰めてきたり。
それから恋愛相手も、もちろん同じマンションに住む若いGAYです。

まあ、でも、日本版も、ロンドン版も、一番の見どころは両親とさよならをする場面です。

日本版では浅草の今半で、秋吉久美子演じるお母さんが、風間杜夫演じる息子にすき焼き鍋から肉をとってやりながら「お前を大事に思っているよ」なんて言ったりして素敵です。

ロンドン版ではお父さんが息子にストレートに「I LOVE YOU」と言うのに対し、日本版の片岡鶴太郎演じるお父さんは、江戸弁で今半の仲居さんをからかいながら「コイツは偉いんだよ、子供の頃に両親を亡くしたけど、立派に生きてきた」なんて、間接的に息子へ思いを伝えるところなんかはお国柄ですかね。

まあ、とりあえず、どちらも泣けます。

最後は恋愛の方の話で終わるんですけど、日本版はここが賛否両論(否多め)だったんですよね。ちょっとやりすぎじゃない?って。
その反省を踏まえたのか、ロンドン版では静かなエンディングです。
だけど、私は、プッチーニのオペラが流れる派手な日本版のエンディングの方が好きかも。「ひと夏の不思議な物語」って感じがして。

なーんて、観比べたりするのもおすすめです。

ロンドン版の主人公は本当にGAYのアンドリュー・スコット、恋人役に『aftersun/アフターサン』のポール・メスカル、父役がすっかり大人(というかおじさん)になった『リトル・ダンサー』のジェイミー・ベル、そして母役に『ウーマン・トーキング/私たちの選択』のクレア・フォイ。
地味目だけどなかなかセンスの良いキャスティングと思います。

みなさんも、ぜひ。

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