広告の企画書は、「好き」と「知られていない」のギャップの設定が大事
広告論の授業で100本以上の企画書を採点する中で、優秀な企画書の共通点が見えてきました。
それは、「この商品にはこんな良いところがあるのに、伝わっていないのはもったいない!」というギャップの提示があることです。
今日は、広告コミュニケーションの企画を考える上で大事な、「魅力と現実のギャップ」の作り方について書きたいと思います。
また、学生は好きな題材を選べますが、社会人は選べません。どうしたら担当する商品を好きになれるのか、3つの方法を紹介します。
優秀レポートは「好き」から始まる
ある大学で「広告コミュニケーション論」という授業を担当しています。
この授業の学期末レポートのお題は、「最近、伸び悩んでいるものを1つ選んで、市場拡大のための広告コミュニケーションの企画を考える」というものでした。
最後の授業では、約120名のレポートから、優秀レポートを20本ほど選び、授業の中で発表してもらいました。
選ばれたレポートには、例えば次のようなものがありました。
いずれもレベルが高い良い企画だったのですが、多くの優秀レポートに共通する、ある点に気が付きました。
それは、題材を選ぶ時に、自分が個人的に好きなのものを選んでいる事です。
優秀レポートに選ばれなかった企画書の中には、自分が好きというわけではなく、レポートのお題である「伸び悩んでいる」に主眼を置いて題材を選んでいるものありました。例えば、CDやDVDなどです。
もちろん、これらの企画書にも、アンケート調査やメディアの記事を元に、商品の一般的な魅力について書かれていました。しかし、自分自身が好きなものではないために、その内容がいまひとつ迫力に欠けているように感じました。
一方で、優秀レポートに選ばれた企画書は、なぜ自分がこの題材を選んだのか、その個人的な理由から始まっているものが多かったです。
例えば、両親の若い頃の古い写真が好きだから、インスタントカメラに可能性を感じた。もやしが大好きで、農家や小売を助けたい。地元の美味しいみかんが、東京で無名なのがショックだった、などなど。
そういう個人的な動機から来る企画書は、好きだからこそ分かる商品の魅力が深く堀り下げられており、「確かに、知られていないのはもったいないなぁ」という、大きなギャップを感じられるものが多かったです。
良い企画には、「自分が好きだからこそ分かる商品の魅力」と、「知られていないという現実」のギャップが大きく書かれている。それが、私の気づきでした。
好きではない場合はどうするか
ここでの気づきは、普段の広告コミュニケーションの仕事でも役に立ちます。
自分が好きだから、商品の魅力が深くわかる。魅力が深ければ、それが知られていない現実とのギャップも大きくなる。ギャップが大きければ、その打ち手のインパクトも大きくなる。
このように、魅力と現実のギャップを上手に作ることによって、より良い企画を生み出すことができます。
しかし、学生と違って、我々社会人は、自分が好きな題材を選べません。
私も、これまでさまざまな商品を担当してきましたが、個人的に大好きな商品ばかり担当してきたわけではありません。むしろ、知ってはいたけど使ったことは無い、という場合の方が多かったです。
では、どのようにして、商品の魅力が深く掘り下げるほど「好き」になれるのでしょうか。
私は、大きく3つの方法があると思います。
1つ目は、とにかく使ってみることです。できれば、自腹を切ってたくさん使ってみるとよいでしょう。
以前の記事で、パチンコチェーンの経営者と会うために、はじめてパチンコ屋に行った話を書きました。
これも、魅力と現実のギャップを見つけるための大事な作業でした。
2つ目は、作っている人の話を聞くことです。
例えば、優秀レポートに選ばれた「駄菓子屋の現代での普及アイデア」の企画は、まさにこれでした。
この学生は企画を考えるために駄菓子屋に行って店主と話をするなかで、「子こどもがお金の使い方を学べる場所」という、今まで知らなかった駄菓子屋の魅力に気づいたそうです。
そこでの気づきがその後の企画のアイデアに反映されていて、とても良い内容になっていました。
3つ目は、すでに大好きな人の話を聞くことです。
ユーザーの声を聞いて商品開発を行うことで有名なワークマンは、自社の製品を愛用している人から共創のパートナーを探しているそうです。
愛用しているからこそ気づく商品への不満が、新商品のヒントになる。これも、魅力と現状のギャプを生かした企画だと言えそうです。
このように、自分がそこまで関心を持っていない題材であっても、好きになるための工夫、魅力を掘り下げる方法は色々あります。
大事なのは、その多くがデータやインターネットではなく、実際に体験したり見聞きして、体で感じるものが多いということです。
強い「魅力と現実のギャップ」を作るには、いつものオフィスを一歩踏み出て、新しい世界に出かけていくことが大事なのかもしれません。
広告の仕事は、ます商品を好きになることから
競合分析や市場分析も大事ですが、商品の弱みを100個見つけても、強い企画は生まれません。
広告の仕事は、まず商品を好きになり、魅力を見つけるところから始まります。
これは、広告に限らず、例えば営業や人事などでも同じかもしれません。
自分が営業する商品や、自社の人材の良いところを見つける。それが相手に伝わっていないギャップを見つける。
どんな仕事でも、「魅力と現実のギャップ」を見つけるところから、新しいアイデアは生まれるのではないでしょうか。
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