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映画感想『ミステリと言う勿れ』

ドラマ版も原作も知らず、ただもじゃもじゃな頭に興味を持っただけで観てみました。

ネタバレ気にせず

ミステリーに反発し、ミステリーの沼に落とさせる

ミステリと言う勿れ、という名前が表している通り、ミステリーの定番通りにはいかないぞ、というひねくれが随所に感じられる映画でした。

僕は人生においてたいしてミステリーに触れてこなかったわけですが、そんな僕でも、定番のミステリーとは違うな、と観ていて思いました。

四人の家族が、遺産相続の為に謎解きに挑む、なんて展開がきたら、四人が殺し合いを始めるのは必須と思われますが、今作ではまさかの全員善人です。あるいは、定番の展開が訪れそうになると、主人公の整さんが、「ずっと思ってたんですけど」、みたいなメタ的な視点で乱入してきて、定番の展開を自ら破壊していきます。

ミステリーへの反発、言い換えれば逆張りがたっぷりの映画で、結構好みの映画でした。

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とはいえこの映画、ミステリーの定番や、ありきたりな会話の流れに対しては一刀両断してくるのですが、ミステリーの根本自体は崇拝しているような気もします。

結局は部外者としてある一家の遺産想像に巻き込まれた主人公整が名推理を働かせて事件を解決するわけで、その部分に捻りはありませんでした。

当たり前ですけど、ミステリーは誰かが死んで、主人公が事件を解決して終わります。

誰も死なない、みたいなことはありませんし、主人公がたいして活躍しない、ということもありません。今作は真犯人もわかりやすかったですし、事故死だと思われていた人が実は殺されていた、という展開も普通です。

表層はひねくれていますが、基本的にはミステリーの王道をこよなく愛す、可愛らしい制作陣の性格が僕にはわかりました。

でも結局、それが面白いんですよね。ひねくれてはいても、タイトルにミステリと書かれている以上、心の内で求めているのはミステリーだったのです。

今の時代、ただの王道をやっても見栄えしない時代ですから、もし王道がやりたいなら、表面の形だけを邪道で作って、中には濃厚な王道を入れておく、というのも一つの手なのかもしれませんね。

ミステリアンチと見せかけて、「ミステリ最高!」の沼に誘う、魔性の映画、とでも表現しておきましょうか。

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そういえば、整のキャラクター像は不思議で、僕の中では絶えず針が、「気持ち悪い」と「魅力的」との間を行ったり来たりする、絶妙な匙加減でした。もしもう少し整が気持ち悪かったら(例えば最後まで人の家のお風呂に入らない強情っぷりを見せていたりしたら)、僕は観るのを中断していた可能性もあります。ミステリーにはキャラクターも大事ですね。

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