映画感想『ラストマイル』まさかの3回目
自分でもまさか3回目の感想をnoteに書くことになるとは思いませんでした。
楽しい映画ではないのに、楽しい
3回目を終えた大まかな感想はこの太字です。どうして3回も観てしまうかというと、やっぱり面白いからです。ですが実際の内容は非常に暗く現実的で、冷たさと内省を促す作りになっています。
逆に言うと、暗い映画なのに、面白いと感じられる......
つまり、明と暗のバランスがいいんですね。言いたいことはそれです。MIU404チーム、アンナチュラルチームの登場や会話の部分では明らかにエンターテイメントを追求していて、僕たちが欲している音楽や展開を用意しようとしてくれているのが伝わってきます。
ですがそれだけで振り切ってしまうと、小学生が人形を並べて戦わせるだけの物語になってしまい、きっと一部の人間の琴線にしか触れることができません。
でも考えれば考えるほど、それこそ小学生が考えるような単純な楽しみを持たせたまま、観る人に恐怖を与える作品を作ることは非常に難しいことだと感じます。単純な5:5の比率ではないでしょうし、脚本だけ、演出だけの力でもないでしょう。脚本が独りよがりをしていては暗さに引き込まれるでしょうし、アッセンブルの演出を出したい側に力がよったら能天気な物語になるでしょう。
人間1人ならまだしも、これだけ多くの人が集まって作る作品で、こんなカミソリの刃の上に爪先で立つような絶妙なバランスを目指し、そして実際に爪先で立ってしまっている(と僕は感じます)のは、正直意味がわかりません。
好きではないのに、好きな映画
メンヘラみたいなことを言ってすみません。
正確には、好きではなかったのに、強制的に好きにさせられた、ですかね。
当然人並みに映画を観てきた我が人生、好きなジャンルや雰囲気というものがあります。一概には言えませんが、表層的な例を出すと、恋愛やホラーではなくファンタジーやSFが好き、みたいなものです。
MIU404もアンナチュラルも、観た当時はここまで神聖化していなかったと思います。面白いとは思いながらも、アベンジャーズのように集結することを望んでいたわけではありませんでした。また、会話の内容やテンポも得意ではなく、敬遠していた部分がある程です。
ですが、この映画でひっくり返されました。404の掛け合いを観ていたら改めて404の雰囲気って良かったんだと気がつきましたし、アンナチュラルのコインの音が響くと、一気に心が静かに引き締まり、アンナチュラルの世界観はこんなにも引き込まれるものだったんだと気がつきました。2回目、3回目と回数を増やすごとに、エレナの心情を自分なりに読み解いていき、すると苦手だったはずの会話やテンポが噛み合っていきます。
どんな映画でもこういう変化が訪れるわけではありません。そもそも、苦手な部分がある映画を、劇場で何度も観に行こうとは思いません。
こういう映画こそが、僕にとって新体験の映画であり、想像を超えてくる映画であると感じました。3回行く価値がある映画です。