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中編小説『沈黙の女王』下
・四月
沈黙は短所だ。
「いい加減にしてください!」
ようやっとクラスメイトに馴染めてきたことによるざわめきはその言葉で瞬時に消え、教室にひんやりとした空気が流れる。かろうじて、空いた窓から入ってくる春風だけが、緊張の冷たさを和らげていた。
球技大会運営委員兼学級委員長と聞けば、それだけで彼の生真面目さが伺えるというものだ。その日は六月に控えた球技大会の種目決めをクラスで話し合っており、彼が
・四月
沈黙は短所だ。
「いい加減にしてください!」
ようやっとクラスメイトに馴染めてきたことによるざわめきはその言葉で瞬時に消え、教室にひんやりとした空気が流れる。かろうじて、空いた窓から入ってくる春風だけが、緊張の冷たさを和らげていた。
球技大会運営委員兼学級委員長と聞けば、それだけで彼の生真面目さが伺えるというものだ。その日は六月に控えた球技大会の種目決めをクラスで話し合っており、彼が