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じぶん達でつくる旅は、じぶんたちで「決め ていく」旅だった

真夏の太陽が照りつける季節に、自分旅では、千葉県鴨川市へ冒険旅行に。
テーマは、「じぶん達でつくる旅」。

合計17名。
4泊5日終わった後、帰って行く背中が、みんな大きくて、眩しかった。

何をするのか、何をしたいか

今回は、本当の意味で、「子ども達自身でつくる」時間だった。

我々スタッフは、
「最高な5日間にするために、どうしたらいいか、それぞれ考えて動こう」と伝え、
1つの条件として、「嫌な気持ちになる人がいない形で」
と伝えている以外は、基本任せる。

何をするのか、
どうやって決めるのか、
日々の作戦会議で、子ども達の中から司会を出し、話し合い、決定し、過ごしていく。

さあ、明日は、なにしよか?
動くチームはどうやって決める?

この空いた時間はどうする?
お昼に残ったコロッケ争奪戦、どうやって決めよか

決めることが山ほど。

すんなり決まることもあるし、全然決まらないことも。

最初は、「海に行く!」で、すぐ決まる日々でしたが、後半になるにつれ、それぞれの主張が出てくる。そして慣れてきて、相手に失礼な態度もチラホラ。

面倒臭かったと思う。オトナが決めてしまえば、よっぽど楽。

でも、彼らは最後までやり切ってくれた。そして、いい顔してた。

改めて、振り返ると、次第にいいチームになっていく過程には、必ず、ターニングポイントがある。

1つ目のターニングポイント:出し物しよう

1つ目のターニングポイントは、「各チームで出し物をしよう!」となった時。

元々、漫才をやってくれる2人がおり、それを楽しみにしていたが、その2人だけでなく、「各チームもやったらおもしろい!」と誰かが発案。採用された。

すでに海で丸1日遊んでヘトヘトのはずなのに、熱を持って取り組むメンバー達。食事時間も、各テーブル、議論が進む。

印象的だったのは、肝試しチーム。
部屋でやるようなものかなと思っていたら、気づいたら施設の屋外全体を使いたいと。

できるんだろうか。

ちなみに、今回泊まっている施設は、鴨川青少年自然の家。我々以外には、100人単位の他2団体も宿泊しており、夜は確か、静かに勉強しているか、花火をやっているはず。
外で騒ぐのも、外を使うのも難しいかもしれない。
オトナだったら、最初から実行しないアイデアだ。

でも、「屋外を使った肝試し」のアイデアは、彼らの中でかなり仕上がっている。成功するイメージしか無いようだ。

それならばと、「まず、施設の事務所の方に相談してみるといいよ」と、話を聞いてくれそうな、事務所の◯◯さんの名前を伝えてみる。

その日の夕方、「よっしゃー」とうれしそうに戻ってきた。
彼らは、◯◯さんに相談に行き、肝試しにいいコース、いい時間、そして、どの部屋の照明を何時に消してもらうかまで、取り付けてきた。

後で聞いたところだが、◯◯さんは、事務所で子どもたちに呼び出されることなどまずないので、ビックリしたらしい。でも、「彼らの熱量が素晴らしかったから」と、盛り上がるコースを提案してくれたのだそうだ。ありがたい。

さらに、彼らは、勉強合宿中の高校生に、「お化け役」までもお願いしていた。高校生は、勉強時間を喜んでこっちに当ててくれた。なぜか担任の先生も許してくれている。

交渉力、すごい。

そして、冷静に考えると、身内の肝試しで、知らない人が脅かして来ることほど怖いことはない。

下見や想定、肝試しの音までも、準備万端な肝試しは、見事大成功だった。

高校生に指示を出すメンバー達

その子のいつもと違う角度に光が当たること

期間中、何度か、おっ!とおもうことがあった。それは、メンバーの違う顔が出てくる時のこと。

「あれ、あの子、あんなに仕切るの上手だったんだ」
「普段は静かだけど、」
「あの子がアイデアに乗っかることで、会話が盛り上がっているなあ」

今回の旅も、学校や家とは違う関係性で行われるので、前提として、そういった「違う顔」は見えやすい。いろんな面にじぶん自身が出会う / 気づくということが、こうした合宿のいい点の1つだと思う。が、ある程度関係性ができてくると、固定化はしやすい。

そうした中で、特に、今回の「出し物」のように、「違うメンバー」で取り組むことは、別の角度から光を当て、その子の別の切り口のキラキラした面が見えてくる。

それは、いつもの家や学校と同様の光の当たり方かもしれないし、新しい仲間といる環境こその光り方かもしれない。

「私はいつもこんなに仕切ることないんだ」
と言いながら、この環境だから仕切ることにチャレンジしてくれた子もいれば、
その逆に、最初は大人しいのかなと思っていた子が、実はリーダーシップを発揮するのが得意だと、この出し物きっかけで見えてきたこともある。

人間は多面的。それでいい。

我々スタッフは、その新しい顔が見えた時に、大きく驚かず、ただただその時のその子を受け入れる。それだけを意識。

2つ目のターニングポイント

もう1つのターニングポイントは、「少し居心地が悪い」と提示してくれた子がいたことだ。

2日目終わりくらいから、ちょっと空気がピリピリしている。
疲れもあり、それぞれの主張も出てきたり、関係性もある程度固まって来たところで、前述した通り、少し失礼な物言いも出て来ている。
話し合いも、「それヤダ」の否定で進まない場面が増えていた。

これこそ、じぶん旅が5日間の活動にしている理由である。1泊や2泊だと、これで帰ることも出来るが、5日になると、もう猫被っていられない。それぞれの主張がぶつかり合う。うまくいかないことも多く出てくる。これをどうクリアしていくかが、この旅のハイライトなのだ。

少し居心地が悪い
は、そうした「何だか上手くいかない時間」が積み重なった3日目夜、1人が日記に書いた言葉だった。

当たりの強さは我々スタッフも気になっており、「空気悪くない?」と、子ども達に振ってみる。
思い当たることもあるのか、ちょっと静まり返る時間。そして、「うーん」と同意もありつつ、まあいいんじゃないもありつつ、どうしたら「サイコーな5日間」に出来るか、話が巡る。

そうすると、
「そもそも全員の名前を覚えていない。」
「名前を覚えよう。」
「服装を呼び名にしているのは良くないと思う。」
彼らなりの課題と、解決策が出てくる。

「紫パンツ」と呼ばれている子がいた。紫の短パンを履いているから。でも、そうした呼び方じゃなく、みんな名前で呼ぼう。そんなところから、いい空気を作ろうという動きはスタートした。

補足だが、記憶を辿ると、結局帰るまで、紫パンツの服装は、紫パンツだった。。。
呼び名は、名前に変わっていたが、彼の服装は変わらなかった。着替えあったはずだけど。。。日々送られてくる写真を見ている彼のお母さんだけが、気づいていた事実であった。

できないを経験するからこそ、できた!が響く

4泊5日の間、1度だけ、子ども達にアドバイスしたことがあった。

それは、相手の提案を即座に否定するのではなく、まず受け入れること。君らならできるからと。

「作戦会議」でやりたいことは、相手を論破したいのではなく、みんなが納得する着地点を探ること。

誰かの意見に何気なく放った「それ嫌だ」は、自分が思っている以上に、相手は「否定された」と重たく悲しい感情を持ってしまう。それをしたいわけではないことにまず気づこう。

だから、ここでは、相手の意見を頭から否定するのではなく、その意見の良いなと思ったところを言ってみよう。良いところが思いつかなければ、その意見の要約だっていい。それを伝えたあとで、自分はこうしたいを伝えてみようと。

そんな話をしてみると、子ども達の中で議論が煮詰まると、
「まずは受け入れる!」だよね
「否定から入らない!」だね
といったな声が出て来て、作戦会議中の表情が柔らかくなった。

伝わった。

「上手くいかない場」を経験したからこそ、その1つのヒントを、それぞれの解釈で咀嚼してくれたのだと思う。

そうして、なかなか決まらなかった4日目夜の作戦会議。子ども達が決めた最終日の活動は、「室内ウォークラリー」になった。海に行きたいメンバー、泳ぐたくないけど足だけ海に入りたいメンバー、屋外には出たくないメンバー、水着を出したくないメンバー、港の神社を見に行きたいメンバーなど、それぞれの意見がまとまった結果だった。

明らかに変わったのは、それぞれが意見を言っていたこと。否定されないことがわかると、些細な意見でも言いやすくなる。

何よりオトナが決めていたら、最後だし、海に行かせていたと思う。だって、海に来ているんだから。しかし、何をするかではなく、彼らがどう決めるかが大事な旅。オトナも試される時間であった。

旅の名前

4泊5日、ラストの作業として、メンバーそれぞれに、この旅の名前をつけてもらったので抜粋してご紹介。

チャレンジ旅
みんな挑戦していたから

自力の旅
自力でやることを自力でできたことが多かったから

最高の5日間の旅
すぐに終わって、あーって思ったけど、少し意見がぶつかったりしたけど、とても楽しい旅だったから

自分できめる旅
自分で決めて楽しい旅だった

自分たちが主役
みんなが先頭になって行動すると思ったから!

わたしたちは?
日々の生活で、先生やオトナ達は、もっと子どもに決定権を委ねることができると思った。考え続けよう。


そんなこんなで、4泊5日、あっという間に終了。真っ黒に日焼けした笑顔で、大荷物を持ってそれぞれ帰って行った。キャンプ中食べられなかったアイスやお菓子、ジュースを買うんだと言って。

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