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不本意入学の是非と、「ダメ元での出願」に関する雑感
共通テストの追試験も終了し、今週末には国公立大学の出願期間が終了します。
今年は数学の平均点の上昇や、生物の続落からの得点調整など波乱の多い一次試験となりました。
国公立大学の試験は、基本的には共通テストの得点と、2月末に行う記述試験の結果を合計して合否が決定することになります。
九州は本人、保護者ともに国公立大学への進学を希望する率が高いため、多くの教員は国公立大学への出願指導を行っています。
「ダメ元での出願」をする生徒
国公立大学の試験は共通テストの結果を利用するため、共通テストの結果が判明した時点で合格の可能性がほとんどない、という状況が多々あります。
令和5年現在において、出願調査のシステムの補足率や精度が向上しているため、逆転がほぼ不可能である、という状況は一目瞭然でわかるようになりました。
こうしたシステムのおかげもあり、私たち高校教員や塾、予備校の指導者などはかなり確度の高い合否可能性を提示た上での進路指導が可能となっています。
にもかかわらず、非常に確率の低い出願、「ダメ元での出願」を希望する生徒が存在します。
「第一志望は、ゆずれない。」生徒
某予備校で使われている「第一志望は、ゆずれない。」というキャッチコピーがあります。
その気概で勉強をしようという意気込み自体は否定するものではありませんが、出願決定時点においてはもっと冷静さが必要なのではないか、とも思います。
共通テストの試験結果は、合否を占う予備試験ではなく、本番の試験の半分の得点に相当するものです。
したがって、合否判定が著しく厳しい場合は、絶対に合格することはないのです。
A~Eの判定数値ではなく、合格最低点と現在の得点の合計を比較して、満点以上をとる必要がある状況などでは、もはやひっくり返すことのできないという事実を受け止める必要があるのです。
なぜ不可能な大学を出願するのか
こうした無理な出願をする生徒の理由はいくつか考えられます。
その多くは、諦めがつかず予行演習としての受験という目的でしょう。
不可能な大学の出願をする生徒は難関大学や医歯薬などの難関学部を志望しているため、浪人をするという選択肢が身近になります。
そうした場合、まずは次年度に向けて本番を使った「プレテスト」として受験をすることを目的として本番に出願することになります。
おすすめできない理由
ところが、こうした出願を個人的には勧めていません。
なぜならば、諦めるべきタイミングは合格発表の段階ではなく、共通テストの結果の時点です。
ひっくり返せない状況に陥ったそれまでの不勉強や見通しの甘さ、体調管理の不備などを反省すべきなのです。
また、無理やり出願をしたもののその中の多くの受験生はもはや点数が足りないことを自覚していることがほとんどで、心の底では諦めています。
しかし、周囲の期待や自分のプライドから諦めていないポーズをとっているに過ぎません。
そのため、実際には共通テスト後から前期試験までの1か月以上の時間を無為に使ってしまうことが多いのです。
受験の追い込み期は、いかに合格ラインに落とし込むかを考えた学習スタイルを構築するかが重要になります。
この時期に不可能な挑戦に血道を上げても、次年度の追い込み時期の練習にすらならないのです。
後期は現実的な受験をすべき
とはいえ、それまで第一志望として掲げた目標を諦め、すぐに方針を転換すべき、という主張が多くの人に受け入れがたいものなのも事実です。
それほどに感情を御することができる人ならば、その前段階で現実的な合格ラインの方向に舵を切れたでしょう。
ですから国公立出願期の進路指導、相談のとき、私は一通り現状の確認とほぼ不可能であることは伝え、その上で本人が前期試験に関して挑戦をするといった場合は止めないようにしています。
一方で、中期や後期に関しては、行きたい学部や学科の隣接領域や、多少の興味がある範囲で合格可能性のある所への出願を強く勧めています。
もちろん、最終的に進学先を決定するのは本人であり、無理やり受験させる(そもそも不可能ですが)ようなことはありません。
ところが、後期試験で第二、第三志望に合格した場合は生徒の意見が変わることがよくあります。
本人に合否確認の連絡をした際も
「行かずに浪人ですか?」と尋ねると
「何言ってるんですか、行くに決まってますよ(^▽^)」
と返されたことは少なくありません。
不本意入学は「悪」か
不本意入学というとあまり良い印象がありません。
親に無理やり、経済状況で仕方なく、学力不足が原因で、などその理由はさまざまですが、果たしてそれほど悪いことなのでしょうか。
経験則で言えば、第二、第三志望の大学で良い出会いや経験をした卒業生はむしろ多い、というのが印象です。
というよりも、本当に行きたい大学、第一志望が叶うケースという方がまれであり、現実には何かしらの妥協をしなければなりません。
(これは人生のあらゆる場面で共通ですが)
大学入試という場面で、自分の学力や環境と感情の落としどころを見つける経験は決して無駄ではないはずです。
その意味で、私は不本意入学は決して悪いことではないとも思うのです。