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シン・総合型選抜:桜美林大学がnoteとコラボする入試プログラム
桜美林大学はnoteを入試プログラムの一つとして採用するということがニュースになっていました。
こうしたnoteのようなプラットフォームを利用した入試を行うというのは非常に面白い試みです。
体験型のゼミによるミスマッチの回避
今回の試みは、2023年4月に開設する「教育探究科学群」の入試プログラムの1つにnoteを採用するというものです。
二日間にわたって中高生向けのキャリア支援プログラムを開催し、大学に入ってからの学びを体験し、その認定証を総合型選抜の一次審査の免除要件とするようです。
近年、入試においてこうした体験型の試験を課すケースが増えています。
もちろん、体験しただけで合格、とするのは問題がありますが、体験をすること自体は入学後のミスマッチを減らす意味でも非常に効果的です。
総合型選抜の試験内容は形骸化しがち
この手の総合型選抜の試験は工夫を凝らして設計をしている大学がある一方で、小論文と面接といった推薦選抜と大して変わらない基準で合否を決定している大学も少なくなく、形骸化しているケースがあります。
体験型の試験は試験の設計や人員の確保、評価基準の設定など手間と時間を要する割に、受験回数を増やしたために受験者が分散されてしまい、大学側の負担も大きいようです。
そうした意味で、noteという外部のプラットフォームを用いて試験を行うという取り組みは非常に興味深く、全国的に波及していく可能性を秘めているかもしれません。
オープンな制作物による評価
この入試プログラムをどのように活用するか、詳しくは不明です。
ただ、トップページにある「noteで好奇心を発信しよう」という文言から、noteのプラットフォームに何らかの記事を書くなどの発信行為を行うのではないかと思われます。
そして、その成果物をプレゼンし、討論した上で評価するという流れではないかと予想しています。
プレゼンテーションを総合型選抜で準備させるという試験はよく見ますが、オープンな発表成果を利用するというのはあまり見たことがありません。
使い道も無い、試験のためのプレゼンを作る行為よりも建設的で発展的な創作活動だとは感じます。
発信者としての自覚と責任
noteで発信するという行為は受験者は勿論ですが、このプログラムを受講するすべての中高生に意味があるものです。
彼らのほとんどはSNSを利用し、世界中に日々プライベートを切り売りして発信しています。
にもかかわらず、彼らはそれを自分の閉じたコミュニティの中だけで発信していると勘違いしがちです。
特にInstagramのストーリー機能などは時限性があるために、誰にも見られないと誤解していることが多いようです。
ここ最近世間を騒がせている回転寿司や外食関連の若者の多くも、内輪の盛り上がりを期待してあのような行動を発信しています。
そうした発信行動に対して、自覚と責任を持つ機会となる意味でもこうした体験は貴重なのではないでしょうか。
(ちなみに外食関連の無法者の所業に関しては、若者の道徳や倫理感が低下しているのではなく、発信という行為が助長させているだけだと私は考えています。あの手の行為をする人間は昔から存在し、可視化されていなかっただけ、また行為を自慢する相手や手段がなかったために顕在化してこなかっただけでしょう。)
今後、同様の取り組みに期待
こうした体験プログラムを入学試験として実施することで、選抜、マッチング、教育的意義の全てに効果のある取り組みとなり得るのではないか、と感じています。
とはいえ、コストがかかる上に必ずしも入学者確保につながる保証はないため、同様の取り組みをしていく大学が増えるかは未知数です。
ただ、こうした興味深い取り組みを「桜美林大学」という、それなりに名前の知られた大学が始めたということの意義は大きいでしょう。
(九州での知名度は低いのですが、先進的な取り組みをすることで有名ですし、決して簡単に入学できる大学でもありません。)
今後もこの動きは追っていきたいと思います。