大学選びは「教育力が高い大学ランキング」ではなく、「マッチング」を意識すべき
大学通信ONLINEが毎年出しているランキングには「教育力が高い大学ランキング」というものがあります。
これの2022年版が公開されていました。
大学選びが多様化する中で、何を基準に選んでよいか悩んでいる生徒や保護者にとっては基準となる指標のようにも見えます。
「進路指導教諭」が評価するという謎
このランキングの最も注意すべきはいかにして選考されたものか、ということです。
記事内には以下のように記載されています。
要は「高校」の教員が「大学の教育力」を評価したもの、ということになります。
さて、では高校の進路指導教諭とはいかなる存在でしょうか。
「進路指導教諭」は入学までのプロ
「進路指導教諭」、「進路指導主事」より一般的に進路指導担当者はどのような職務の人でしょうか。
進路指導担当者は学校の種類によって、主に就職を担当する場合と進学を担当する場合があります。
主な職務は進路情報の収集、分析や斡旋、出願に関わる管理業務などになります。
こうした進路担当者は、当然ながら他の分掌の教員よりも企業や大学の情報に精通しているのは間違いありません。
どの大学や学部でどんな学問を学べるか、どんな資格を取得できるか、といった知識や、就職先の業種傾向や大学そのものの雰囲気などに関しては詳しいはずです。
しかし、「教育力」という指標を判断するとなると話は別でしょう。
大学の「教育力」とは何か
そもそも大学の「教育力」という言葉の定義が不明確です。
この言葉だけでは様々な意味に受け取ることができます。
どれほど高度な教育を行っているか、高度な人材を育成するのか、あるいは能力を伸ばしたのか、良い企業に就職させたのか、難関資格を取得させたか、非常に曖昧です。
そして、そのどれであっても大学の「教育力」の一部に過ぎず、しかも進路指導担当者が評価できるような知識や情報を持ち合わせていることはほとんどない、ということです。
大学で行う先端研究の多くは専門以外の人にとっては分かりづらく、どの大学や教授が良い教育を行っているかは業界の内部の人間しか分かりません。
もちろん、教員側の専門に近い分野であればそうした判断はある程度は可能化もしれませんが、門外漢の評価する総合大学の「教育力」などは明らかに眉唾ものでしかありません。
ここに並んでいる大学を見ても、TOP10の7大学は総合大学であり、その研究分野は多岐にわたっています。
果たして、高校の進路担当者がどれほどこれらの大学の「教育力」に精通しているのかは大いに疑問です。
ランキングに入っている大学は良い大学である
間違ってはいけないのは、これらの大学は悪い大学だ、と言っているわけではないということです。
このランキングに上がっている大学は、おそらく卒業生の評判やパンフレット、地域貢献や就職実績などで一定の評価を受けているのは間違いないからです。
進路担当者もそうした主観的な評価をもとに点数付けをしているに過ぎません。
したがって、それこそTOP50に入るような大学は間違いなく良い大学でしょうし、それ以下の大学でも良い大学が大量に含まれているでしょう。
つまり、このランキングにおける順位の些末な違いに惑わされてはいけないということです。
ランキングよりもマッチング
この手のランキングは順位が明確で、一目で上下が判断できる安易で安直な指標です。
そのため、情報やデータの読み取り方が不十分な人ほど、それこそ中高生のような人たちは容易に騙されてしまいます。
その代表的な例が予備校各社が出す偏差値ランキングです。
あのランキングは受験難度を示す指標として一定の価値を持つことは否定しませんが、あのランキングで大学のブランドや価値を一面的に判断する人が出るとい大きな弊害を抱えています。
選抜方法が多様化する中で、大学選びに必要なのはランキングで順位の良いところを選ぶという考え方ではなく、どの大学が自分に合っているか、校風や立地、研究内容や就職先などを考慮したマッチングです。
進路担当者に求められるのは、分かりやすいランキングに左右されないように情報リテラシーを伸ばすという意識ではないでしょうか。