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『滅びの前のシャングリラ』 -凪良 ゆう- を読んで

あらすじ
「一ヶ月後、小惑星が地球に衝突し、すべてが滅びる」。

この衝撃的なニュースが告げられた時、荒廃する世界の中で、人生に苦しむ人々が集まります。

いじめを受ける高校生・友樹、殺人を犯したヤクザ・信士、恋人から逃げ出した静香など、彼らは最期の日々をどう過ごすのか?

滅びゆく運命の中、彼らは限られた時間の中で「生きること」の意味を見つめ直していきます。

人生をうまく生きられなかった人々が、終末を前にしてどのような希望や絶望を感じるのか――

切ないけれど美しい物語です。



感想
「滅び」を描きながらも、不思議と希望を感じさせる一冊でした。

絶望的な状況の中、人は何を思い、どう過ごすのか。普通ならば絶望しかないはずの設定ですが、読み終えた後には希望が湧いてくるのが驚きです。

登場人物たちは、普段の生活では自分の人生に絶望している人々ばかり。

しかし、滅亡が確定した途端、逆に自分の生きる意味や希望を見出し始めます。

限られた時間の中で、ようやく自分の本当にやりたいことを見つけて生きる姿が、切なくも力強い印象を残します。

また、人間の本質に迫る描写も秀逸で、死を目前にして初めて素直になれる人々の姿がリアルです。

命の重さと儚さを改めて考えさせられます。

物語の中で登場する家族の絆や、罪を背負いながらも生き抜こうとする姿勢は心を打ち、彼らの選択に対して読者自身も「自分ならどうするか」と深く考えさせられることでしょう。


どんな人におすすめか
感動的な人間ドラマや切なくも美しい物語を求めている方にはおすすめです。

最後まで希望と絶望の狭間で揺れ動く心情を丁寧に描いており、読み終えた後、少しでも「生きること」について前向きに考えられるようになるはずです。

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