飯田橋で、一度だけ出会ったあなたへ
こんなわたしにも、就活生だったころがある。
当時のわたしは、漠然と東京に行きたかった。東京で生きてみたかった。人生のなかで、「東京で生きた」と言える時代がほしかった。ここではない場所でなら、ただしく見つけてもらえると思っていた。聞き飽きた、よくある話だ。
小説家になりたかった。
でも、働いて稼がなければ生きていけないことはわかっていた。とにかく東京に行けばなんとかなると、思っていた。高速バスで足繁く上京した。常に金欠だった。パンプスのサイズが合わないので、スニーカーを携