この家どうするの?(27)葬儀屋さん今昔・3
さぁ、父の葬儀社を決めねばなるまい。病院以外でのたびだち。喪主のわたしは体当たり。
なにぶん不謹慎なお話です。つらいかたは、お読みにならないでください。
ガサ入れ
不適切なコトバ。しかし「ガサ入れ」しか浮かばない。1階で横たわる父のまわりで動き回る三人の刑事さん。
病院以外で人が亡くなると警察が来るのは……わかった。
事件性がないか調べる? なにを?
何をやっているのか、わからない。
にわかに、さわがしい父の家。1階と2階でカサカサ、ガタガタ。ゴソゴソ。
引っ越しとはちがう、家が泣いているような、おとがする。
がさがさ……がさがさ……
「それで、ガサ入れっていうのかな。知らんけど」
「ググろか?」
他人事のようなオットとわたし。
そんなことをいってたら、やっと刑事さん三人に呼ばれたのです。
刑事さんのしごと
リーダー格・目のキツイ兄さんが持っているのはビニール袋に入った、お札の束でした。
「終わりました」
「現金は、これだけ出てきました。これでお葬式はできます。」
兄さんの衝撃のコトバが続く。
「あなたのお父さんは、他人を信用してないですね。」
「預金通帳と年金手帳が出てきません」
えっ、なぜ会ったことない人間のココロのクセや習性がわかるのだ?
しかも刑事さんは、大阪弁のイントネーションでしゃべっていない。
大阪弁で「お父さんなぁ、うたぐりぶかい人やったんちゃいまっか?」と、馴れ馴れしくいわれると、わたしはムカッときたか笑ったかのどちらかであったろう。
刑事ドラマ寄りの標準語。それが……ほんとうを物語る。
演出セオリーかも知れないが……。
監察医の行政解剖
「お父さんの死因が、犯罪によるものか違うのかをハッキリさせないと、火葬や埋葬はできません」
「お父さんのご遺体は、監察医事務所でお預かりします。監察医が行政解剖し、死体検案書を発行します」
刑事さんに、だいたいこのようなことをいわれました。ドラマのなかのコトバと思っていた監察医という単語。
すでに単語が理解を越え、わたしは病院で旅立とうと思いました。
葬儀社を決めて連絡してください
「解剖の日にちや順番など、この場では、わかりません。終了したら、お父さんのお迎えになります。」
えっ、わたしが行くの?
「納棺業務はしてないので、葬儀社さんに2名以上で棺桶を用意して来てもらってください。」
葬儀屋さんの仕事か……
「なので、まず葬儀社さんを決めてください。大手の葬儀屋さんにするとか。ご家族や親戚でよく話し合って、トラブルにならぬように。」
親戚も知り合いも来ないよ……。
「葬儀社さんが決まれば、名刺のこの番号に。お迎えの時間は警察から葬儀社さんに伝えます」
お金持ち遺族は遺体の争奪戦?
だから葬儀社さんがお迎え?
お迎え日に「死体検案書」発行手数料20000円必要です。
そして「死体検案書」を、区役所の戸籍係に提出すると火葬許可証が出ます……」
キツイ目のお兄さんは、最後に低い声で言った。
「預金通帳と年金手帳、捜しておいてください。見つかったら連絡を必ずしてください。
火葬後でもかまいませんので……」
そして刑事さん三人で、ビニール袋の姿になった父を誘った。監察医事務所までドライブしに連れてってくれるって……。
そして、お迎えは葬儀屋さん、ふたりで来る。
独り暮らしだったから、最後は人と過ごしてね……。
オットは、自宅マンションに帰ってもらった。流行り病もあるし、娘や孫もいる。この先、頼りにしますので。
ガサ入れ終わった家。すこし荒れたままの。
ビニール袋に入った、バラバラのお札……
あちこちに分けて隠したのだろう。どこで見つかったのか、わからない。
捜索のセオリーとかあるのだろう。
貴金属とか生命保険は掛けてない。それは聞かれてない。警察の捜査すごいなぁ……。
あのキツイ目の兄さん、福沢諭吉先生のかくれんぼを突破したのか。
ひとやすみしたら、葬儀屋さんを決めねば……!
警察に申告しないといけない。
「これで、お葬式ができますよ」
「大手の葬儀屋さんにするとか」
キツイ目の兄さんのコトバが引っかかる。
なにか意味があるのかな?
大手の葬祭さん……。
そして電話をするのでした。
(不謹慎ながら来週も続きます)
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり、
ほんとうに、ありがとうございます。