大阪・大和温泉さん(生野区の銭湯)
大阪市生野区のまんなかは、鉄道がないエリア。ぽっかりと空き地に花が咲く。戦前から時が止まったような湯けむりがたちのぼる。
(1628文字)
大和温泉さん
生野区役所の南側は住宅街と空き地が点在する。再開発の「さ」の字もないエア・ポケット。ことしは昭和99年。そんな雰囲気がピッタリの大和温泉さん。14:00より暖簾がひるがえります。
もより駅は……
●JR大阪環状線・寺田町駅…徒歩約15分
駅から遠い生野区の秘境。大和温泉さん(銭湯)も知るひとぞ知る秘湯です。西方より古道の足あと。
くれぐれも迷子にならないでください。
ぐうぜんの命名? ヤマト
「ダイワおんせん」か「ヤマトおんせん」か? よみかた不明。
わたしは「ヤマト派」です。
大和といえば、戦艦大和。
生野区の銭湯、じつは最強です。
屋号がすごいのですよ。
大和 温泉さん
敷島 湯さん
千歳 温泉さん
加賀 温泉さん
橘 温泉さん……。
奇しくも、旧日本軍の戦艦などとおなじ名です。あまり詳しくないわたしでも知っています。アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の功績は大きい。
お気づきの銭湯ファンはおられたのでしょうか?
「加賀」にかぎっては、大阪銭湯・経営者のルーツが石川県人が多いそうで、その限りではありません。
大和温泉さんや、ほかの生野区の銭湯は、戦前のあの時代の開業でしょうか。
それともわたしの妄想でしょうか。
終戦は昭和20年。ことしは昭和99年。歴史は地層のようにふりつもる。戦艦《ふね》にあやかり武運を祈りし銭湯の湯船よ。平和な現在に感謝をわすれない。
たくさんの銭湯が 廃業するなかで。
タイル絵の旅情
入り口の白いタイルは、マンガ家・泉紗紗先生のサイン。大阪銭湯ファンなら知っています(銭湯マンガ「ゆとのと」)
これ以上はナイショです。
これだけではありません。浴室入り口のガラスにもイラスト入り。
そして圧巻は浴室奥のタイル絵。わたしは湖畔の絵と思ったが、よく見れば川のながれ。保津川下りの船頭さんも描かれています。
男湯は別の風景のタイル絵「瀞峡」むかしは、おいそれと旅行に行くことができなかった。せめて湯船で旅行気分に。おおきな湯船で手足をのばして。
そんな昭和の生活が、しのばれます。
サウナなし
浅湯・深湯・ジェット・電気風呂があります。サウナ・水風呂はありません。八角形の天井の窓。明るい陽から夕暮れまで、まぶしいくらいです。
大和温泉さん。外観は、古くていたんでいますが、内装や湯船のタイルは新しくキレイですよ。目地が白くて気持ちいい、お湯!
大阪市内にある「サウナ・水風呂なしの銭湯」は、みなこんな造りです。(個人の感想です)
◆壁はシンプルで清潔な白タイル。
◆旅情あふれる風景のタイル絵。
◆長い蛍光灯が2本組の粋な照明。
◆かけ湯につかう、ちいさな水鉢。
◆体重計は時計のような盤。グルンと回る針がブレて止まらない。
◆脱衣所の、おおきな鏡に近所のお店の宣伝(鏡広告)が書いてある。
◆カギつきの傘箱(かさばこ)がある。
大和温泉さんは、サウナ客もいなくて静かな銭湯。女将さんが、にこやかに座っている、ザ・コクピット。
女将さんは82歳と書いてあった。戦前の1942年(昭和17)生まれ!
まさに大和温泉と運命をともにする艦長。
湯上がりに、ビン牛乳をゴクゴク。記念にタオルを購入。
時が止まっている大和温泉さん。
脱衣所にテレビ1台。男湯と女湯のまんなか。
いまは男湯と女湯、別々にテレビあるけど。
昭和ってこうだった。
地球か……
なにもかも……みな懐かしい……。
沖田艦長の声が聞こえた。
【参考文献】
『ふろやの本』
発行 / 大阪府公衆浴場業生活衛生同業組合・大阪府浴場商業組合
いつも こころに うるおいを
水分補給もわすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。