マガジンのカバー画像

現場で役立つ高周波焼入れ技術

4
運営しているクリエイター

記事一覧

現場で役立つ高周波焼入れ入門

0.はじめに私はこれまで、鉄物エンジン部品の機械加工を中心として生産技術者を20年ほどやってきました。

機械加工の技術者がなんで高周波焼入れなの?と思われたかもしれませんが、後述するように高周波焼入れの大きなメリットとして機械加工設備と並べて置くことができる、というポイントがあります。
また、熱処理は前工程、後工程と強く関係があるので、私の会社では高周波焼入れは熱処理技術者ではなく機械加工技術者

もっとみる

2.高周波焼入れに関わる基礎知識

難しい理屈はできるだけ使わないと言いましたが、やはり熱処理によって鉄鋼が硬くなる理屈は知っておかないといけないでしょう。
ですが、ここでもできるだけ難しいことは言わず、最低限知っておけば良い知識に絞って説明したいと思います。

より詳しいメカニズムを知りたい人は金属学や熱処理の専門書を使ってより深く学ぶようにしてください
(このシリーズ記事のどこかで、さらに深く勉強するのにおススメの本をまとめよう

もっとみる

3.高周波焼入れの構成要素

高周波焼入れ、つまり高周波の交流電流を使った鋼を硬化させる工法の原理をここまで説明してきました。オーステナイト領域まで加熱し、そこから急速に冷却することでマルテンサイト組織を得ることで硬度を上げる。加熱するための方法として電磁誘導という物理現象から対象物に電流を流し、そのジュール熱を用いる。交流の表皮効果によって対象物の表面だけが加熱される、という仕組みでしたね。

ではここからはより具体的に高周

もっとみる

4.高周波焼入れで発生する品質問題

4-1.割れが発生するメカニズム世の中に存在する物が破壊される場合というのは、その物自体に何かしらの力がかかる時です。コップが机から落ちて割れるのはコップが床に落ちた時に衝撃力を受けるからですし、道路の橋が壊れるのはそこを通る自動車から力を受けるからです。このように物体にかかる力のことを応力と呼びますが、前者のように短期間で大きな応力を受ける場合も壊れますし、後者のように1回あたりの力は小さくても

もっとみる