4.高周波焼入れで発生する品質問題

4-1.割れが発生するメカニズム

世の中に存在する物が破壊される場合というのは、その物自体に何かしらの力がかかる時です。コップが机から落ちて割れるのはコップが床に落ちた時に衝撃力を受けるからですし、道路の橋が壊れるのはそこを通る自動車から力を受けるからです。このように物体にかかる力のことを応力と呼びますが、前者のように短期間で大きな応力を受ける場合も壊れますし、後者のように1回あたりの力は小さくても長期間にわたって繰り返し応力を受けることで破損につながることもあります。熱処理で製品に発生する割れについても応力がかかることが原因です。でも、熱処理によって外部から応力を受けているようには見えないですよね?製品を落としてしまったとか、作業者が製品を折り曲げようとしているなら別ですが、そういうイレギュラーな場合を除いて目に見える応力が製品に働くことはありません。では、なぜ製品が割れてしまうのかというと、熱処理によって熱応力と変態応力という2つの応力が製品に発生しているからです。これら2つの応力は外からは見えないので熱処理割れを難しくしているんですね。

これら2つの応力がどのような原理で発生するのかを見ていきましょう。

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