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資生堂パーラーの美しい銀食器
資生堂パーラーが創業時から大切にしていることのひとつに「本物志向」があります。
それは、お料理だけでなく内装やサービスといった「食」に関わる全てにこだわること。食器やカトラリーに使用している銀食器も、そんなこだわりのひとつです。
真っ白なテーブルクロスに並べられた銀食器は美しく、食事の空間をより豊かなものにしてくれます。
今回のnoteでは資生堂パーラーの銀食器にまつわる話をお届けいたします。
銀食器は「本物志向」の表れ
銀食器はその名の通り、純銀やスターリングシルバーなどの銀製品で作られた食器です。その見た目の高級感や水や食べ物の腐敗防止につながるといった利便性から、1870年頃~1920年頃にヨーロッパの高級レストランで最盛期を迎えたと言われています。
資生堂パーラーが本格的な西洋料理のレストランをはじめるにあたり、当時の本場のトレンドを大いに参考にして、銀食器を使いはじめたのかと思います。
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茶こしの穴は花椿マークというこだわり
当時、日本で銀食器を使用したレストランが珍しかったことの伺えるエピソードにこんなものがあります。資生堂パーラーは昭和初期から多くの文士や文化人からも愛されてきたことから、さまざまな文学作品にその名が登場しました。
食通でも知られた池波正太郎氏の作品*の中に「おどろいたよ。チキンライスが銀の容器に入って出てくるんだぞ」と、銀食器に驚く様子が書かれていたことからも、当時の斬新さが伝わってきます。
このような「本物志向」と時代の先端を行く考え方は、今でも資生堂パーラーの中で大切に伝えられています。
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「ものを大切にする心を養う」銀食器磨き
現在、銀座本店で使用している銀食器の多くは2001年に東京銀座資生堂ビルが建てられた際に新調したものです。なので、新しいものであっても約25年は使い続けてることになります。
実は銀食器を綺麗な状態に保つことはとても手間がかかります。定期的に磨かなければ茶色く変色してしまい、本来の美しさが損なわれてしまうデリケートな食器なのです。
ただ、修繕や定期的なメンテナンスによって長く使うこともできるので、サステナブルな食器と言えるかもしれません。
そして、資生堂パーラーでは今も昔もスタッフが銀食器を磨いています。
時代が変わってもこのような手作業を続ける理由のひとつが「ものを大切にする心を養うため」です。
資生堂パーラーを支えてきた先人の想いを受け継ぎ、今もそのオリジンを大切にしています。
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「ものを大切にする心を養うため」の習慣は今でも続いています
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頻繁に磨かないと美しさを保ちにくいとか
銀座本店スタッフに聞いてみました
資生堂パーラーの伝統として続いている銀食器でのおもてなし。
実際に銀食器を扱っている銀座本店スタッフにその想いを聞いてみました。
<銀食器にまつわるお客さまとのエピソード>
「お客さまから頻繁に銀食器の美しさについてお声をいただきます。
それだけお客さまの目に留まる部分だと思いますし、そうである以上は汚れたものは見せられないと感じました。」
「お客さまから『磨いていますか?』と聞かれたことがあります。
その際に『茶色く変色しないよう、定期的に磨いています』とお答えすると、とても感心いただきました。」
「お料理だけでなく、食器も見られているという意識があります。そこに資生堂パーラーの歴史や伝統を感じます。」
<銀食器を磨くことについて>
「大変さをともなうが、大切にしなければいけない文化なので続いてほしいと思います。それが伝統ですので。」
「物量も多く大変な作業ですが、お客さまから『ピカピカね』ということを言っていただき嬉しくなりました。」
「習慣化されることで汚れていればすぐ磨きたくなりますし、大切にしようという感情が湧いてきます。」
「スタッフのキャリアに関係なく続けたほうが良いと思います。モノの大切さや磨くことによって見えてくる美しさにも気づきます。」
「率先して行うことでこの伝統の継承者のひとりでありたいと思います。」
このように、お客さまから銀食器について多くのお声をいただいていることからも、資生堂パーラーの文化や伝統が、お客さまからも大切されていることが伝わってきます。
そして、お客さまの喜ぶ姿が銀食器磨きという手間のかかる作業を続けるモチベーションになっているのかもしれません。
みなさまも資生堂パーラー 銀座本店を訪れた際には、美味しいお料理はもちろん、ピカピカに磨かれた銀食器にうっとりしてみてはいかがでしょうか。
では、また次回の更新を楽しみにお待ちください。
注 * 池波正太郎.『むかしの味』,1984年,新潮社
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