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GAFAMはもちろん2チャンネルから仮想通貨、AI、VRまでテクノロジーを網羅! 「本・レビュー」ネットビジネス進化論

COVID-19が明らかにした繋がる世界・分断される世界の矛盾。
様々なネットビジネスのコンセプト、戦略に触れることで
現代社会を生きる上でのヒントを見いだそう!


[本・レビュー] ネットビジネス進化論 尾原和啓著


 著書の尾原和啓さんは、マッキンゼーでiモードの立ち上げ支援をしたのを皮切りに、リクルート、グーグル、楽天執行役員として、その時その時のネットの進化の最前線で、事業の立ち上げを担当されてきたそうです。「阪神淡路大震災」「東日本大震災」という二つの大災害でのご自身の体験からネットの進化を信じ、それをわかりやすく伝えることを指名とされ、これまで『アフターデジタル』、『ディープテック』などを共著されています。


 本書では、ネットビジネスとして、GAFAMはもちろん、楽天やYAHOO!、ウーバーイーツやYouTube、はてなブログや、リブラなど、あらゆる分野、あらゆる企業の根底にあるコンセプトや、ビジネス戦略に触れられています。


 もちろん、その範囲の網羅性のために、一つ一つの分野や企業の記述は少なくなっており、深度も浅くなりがちだとは思われますが、ネットビジネスの全体像を掴むことで、そこに一定の規則のようなものが見えてきます。


 尾原さんは本書を
"企業する人にはレシピ、利用する人にとってはグルメになる"
 と表現されており、まさにぴったりなキャッチフレーズだと感じました。


 GAFAMにみられるように、ネットビジネスではたいてい勝者は一人か二人で、それ以降はその他大勢となりがちです。


 市場規模や、提供するサービスにおいて、他を圧倒する必要があります。
 最初からその立場を確立できるわけではありません。


 市場規模や、登録ユーザー数で圧倒する前に、アイデアだけがもれてしまうと、競合他社にまねをされ、アイデアをそのまま奪われてしまうかもしれません。


 小倉昌男さんの『経営学』を読んでも、全国規模の配達網を達成するまでは誰しもが、無謀・不可能と考えていたにもかかわらず、クロネコヤマトがその体制を確立するや否や、マネをする企業が数多く出現したことがわかります。


 アマゾンも、資金を投入し、物流を抑えることで、インフラを整備し、他企業に大きな差を付けたことが窺えます。


 根回し、業務拡大等、事業の各段階においてタイミングが非常に重要であることを示唆しています。


 本書では、「フリクションレス」(ストレス=摩擦がない状況)をつくり出すことが非常に重要であることも強調されています。
 これは容易に想像できることです。


 キャッシュレス決済であっても、Wi-Fiであっても、使い始めたら非常に便利であることがわかります。


 しかしながら、その登録がめんどくさいために、なかなか使い始められないということは多いものです。


 この「めんどくささ」をいかになくすか。これが市場規模を拡大し、ユーザーを獲得する上で非常に重要となる点は異論がないところです。


 一人勝ち状態とはいっても、他企業に強調せず、独自路線をつっぱしればいいというものではないこともわかります。

 業務の中で、外部委託できる部分に関しては外部委託してしまうことで、企業色を出す業務に集中・特化することができる例も紹介されています。


 自社のサービスや技術を、他の企業に提供することで、却って自社の価値を高められる例もみられます。


 p.343 "アマゾンがクラウドサービスの「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」を始めたのは、もともと自社サービスのための膨大なサーバーを運用していたから、そこで培った技術やノウハウの延長線上で、社外にもサーバーとその運用をセットで提供すれば役に立つということに気づいていたからです。
 自社のために開発したシステムでも、世の中の役に立つなら開放して、インフラとしてみんなに使ってもらったほうが、結果的に儲かるし、自社の技術も向上する。他社とのつながりが強化され、アマゾンなしでは事業が成り立たないというくらい依存度を高めさせれば、自社の立場がますます強固になる。アマゾンが自社のために構築した物流倉庫のシステムを、FBAで他社にも開放したのとまったく同じ構図です。"


 今回のCOVID-19は世界規模の影響をもたらしています。その背景には間違いなく交通技術の発達および、世界各国のつながりが存在します。


 一方、経済格差や情報格差、思想の違いによる分断も明らかになりました。


 今日、パソコンやスマホを利用することで、時間をとわず世界各国の様々な情報にふれることができるようになりました。


 多量の情報がもたらす混乱も生じ得るものの、今回のような日本政府の情報公開のみで、インターネットがなかったと考えたら、私達の感染症への恐怖はもっと大きなものとなっていたのではないでしょうか。


 12月に入り、大雪での車の大往生も報道されました。スマホを通して情報を得ることができれば、何もわからずにただ車中に閉じ込められるより安心を得ることができます。


 そして、必要があれば、スマホを通して様々な情報の提供も可能となります。かつてのように家に帰らなければ連絡がとりづらい状況とは明らかに異なります。


 SaaSやCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア、消費者生成メディア)といった様々な用語もわかりやすく解説されています。


 ネットビジネスにお詳しい専門家の方には得られるところは少なそうですが、そうではない一般の方々には『レシピ』にするにしろ、『グルメ』にするにしろ、得られることの多い一冊だと思います。

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