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[本・レビュー] この一冊で「いま」がスッキリわかる!世界史と世界地理
地理を絡めて世界史を斬る!コンパクトにまとまった切れ味抜群の世界史入門書
私達は現代という「点」に生きているのではなく、
歴史の流れという「線」の中で生きている。
生活は地形に左右され、地形による制約は歴史を彩る。
歴史と地理をリンクさせることで、記憶も理解も飛躍的に向上する。
帯には
本書は、「世界史」と「世界地理」の二つの流れを通して、世界の国々の成り立ちに迫った、大人のための超入門書。
あくまで「場所」にこだわることで見えてくる以外な事実の数々とは?
あの「ニュース」の背景もよくわかる最強決定版
とあります。
私は、理科、社会が本当に嫌いで、成績もさんざんでした。高校時代の模試で1桁の点数などもザラでした。世界史関連の本を読んだのは本書が初めてなので、内容の真意については検証しようがありません(今後、どんどん読み進めていくので後程改めて検証します)が、本書は各国の歴史が簡潔にまとめられており楽しく読み進めることができました。
これまで私は地理や、歴史に苦手意識を持ち、まともに勉強をしてきませんでしたが、受験生の頃と違って私の意識を大きく変えたものがあります。それはアメリカでの生活です。寮ではユダヤ人、韓国人、ドイツ系アメリカ人友など、様々なバックグラウンドをもった人達と知り合い、四年半の間にアメリカ人、ヨルダン人、タイ人のルームメートと一緒に生活をする機会を得ました。別に海外生活をしなくても、世界のことについて学ぶことは自分にとって無関係ではないと思えることが大切だと感じます。
本書を読みながら、記憶力やIQ以上に、興味をもつということがいかに大切かということが認識できました。これまでの読書を通じて、歴史・地理を学ぶことの大切さを認識し、学ぼうとする意欲を持って、本書を読んだので、受験生の頃とは全く違った視点をもつことができました。
例えば、本書を読んでスペインは大航海時代に象徴されるように、ポルトガルと競うことが多く、あまりフランスより東側のヨーロッパの国とは競っていない印象をもちました。ここは同じ大陸でありながら、ピレネー山脈の存在が影響していたものと考えられます。
本書を読むと、人間の歴史というのは、侵略と抵抗の歴史であることがわかります。世界中いたるところで、何度も何度も支配者の民族・宗教、政治システムが変わっています。
近接する地域に宗教や民族が異なる人たちが暮らしているとします。水源や資源の利用で対立が生まれると、すぐにいさかいが生じます。大きな山脈が存在すると、わざわざ山脈を超えるよりも、越えなくて済む近隣に進出しようと考えやすいのはごく自然なことでしょう。物理的な距離は近くても、山脈が存在すれば、それは物理的な壁としての役割を果たします。
これまでピレネー山脈など、興味もなければ、記憶に残る気もしませんでしたが、こんなことを考えていると、すぐに記憶に残るようになりました。
1494年にはスペインとポルトガルの間でトルデリシャス条約が結ばれています。これは世界各国に両国が進出し、植民地化するなかでお互いの勢力範囲が被らないように調整する目的で結ばれたものです。他国の都合など考慮せず、自分達の都合のいいように、なわばりの調整を行ったわけです。しれーっと書かれていますが、これはとんでもないことです。
また、ヨーロッパとアフリカときくと、すごく距離があるイメージをもっていましたが、地図を眺めると、ジブラルタル海峡を隔ててスペインとモロッコは非常に近接していることがわかります。地中海に隔てられているものの、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプトとヨーロッパの距離は私が抱いていたものほど離れていたわけではないことが認識できました。距離が近いことは交易と同時に、戦争も起こりやすくなります。そして民族の移動も起こりやすいことがわかります。
歴史や地理にうとい私でも「スイスは永世中立国」との認識はもっていましたが、ここにも地理的な影響が大きく働いていることがわかりました。
スイスが永世中立国となったきっかけは1815年のウィーン会議でヨーロッパ列強の求めに応じたことによります。スイスは内陸部にあり、周囲の複数の大国(フランス、ドイツ、オーストリア、スロベニア、イタリアなど)とその国境が接しているため、いずれかと手を結ぶと、他国にとって大きな脅威となるという認識があったようです。
また、永世中立国としてのスイスの性格も私のイメージとは大きくかけはなれたものであることがわかりました。
“永世中立国といっても、武力を放棄して平和的中立を守り抜くという意味ではない。むしろ「武装することによって他国からの支配」を受けないという考え方が中心である。実際スイスには厳格な兵役制度があり、軍備も充実している。
ヨーロッパ列強はスイスの地理的環境を考えて、特定の周辺諸国と手を結ぶことを警戒したが、これは裏を返せば、スイスは常に周辺諸国から攻め込まれるリスクを負っていることでもある。
さらに、自国の有事の際にも他国に助けを求めることはできない。特定の国と接近して親密な関係をつくることができないからだ。このような土地特有の事情があるためか、国内には多くの国際機関の本部が置かれている。”
スイスの歴史や、社会構造から学べることは多そうです。今後意識して学んでみようと思います。
また、日本は第二次世界大戦中に、朝鮮半島、台湾、ベトナム、ミャンマー、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどといった実に多くのアジア諸国を統制下においています。
これを「統制下」とするのか、「植民地化」とするのか、「占領」とするのか、言葉の使い方だけでも印象がかなり変わってきます。
細かな内容については記載されていないので、実際にはどのような状況だったかは本書からは伝わってきませんが、太平洋戦争の日本の敗戦は、これらの国々にとっては独立の契機となったのは間違いありません。
終戦の日として、8月は太平洋戦争に関する特集も多く組まれていますが、その内容については非常に偏っていると感じざるを得ません。戦争の記憶を風化させてはいけませんが、内容の多くは広島・長崎を中心とした「被害者としての日本」的な内容が多い印象を受けます。敗戦し、アジア諸国から日本に帰国する上で、多くの子どもや女性が犠牲になったこともよく耳にします。これももちろん伝えていかなければならない歴史ですが、その前にどのような経緯で日本人がアジア諸国に移り住むようになり、そこでの生活や現地の人との関係はどのようなものであったのかも意識されてしかるべきです。
台湾については、言論統制の問題が報道されていますが、私達にとっても全く無関係な土地柄ではありません。朝鮮半島はもちろん、ミャンマーでも大きな民族の問題を抱えています。私達には無関係な土地として、モニターの向こう側の出来事としてのほほんとしていていいわけではないと強い危機感を抱くようになりました。
私のようにこれまで地理や歴史をまともに勉強してこなかったけど、今はかなりモチベーションが上がっているという人はそれほど多くないのかもしれませんが、ちょっと勉強してみようかなという人にもおススメできると思います。学校の授業で学ぶ程度の知識をすでにお持ちの方には物足りないと思われます、
それにしても、授業がつまらない先生が多すぎると感じるのは私だけでしょうか!?