[本・レビュー] アルファ
この世の始まりとは?ビッグバンと呼ばれる始点から、人類出現前までの140億年以上を既存の資料をもとにまとめられた大絵巻。この本を見て、何を考えるか、何を得られるのかはあなた次第だ。
出口治明さんの著書で紹介されていて気になった一冊。
なかなか本屋で見かけないし、見かけてもカバーがかかっていて中身がよくわからない一冊。
気になった方は、"イェンス・ハルダー、アルファ"といれて画像検索をしてみてください。ヒットすると思います。
絵のタッチは独特なので、好き・嫌いがあるかと思います。
私個人としては、絵のタッチ自体はそれほど好きとは言えませんが、眺めれば眺める程、味がでてくる感じがします。
本作は3部作の1作目で、第2部ベータの第一巻(ヒト科生物の誕生からイエスの出現まで)が2014年にドイツで刊行されているそうです。紀元後から現在までの世界を展望するベータの第2巻、未来の進化を描くとされる第3部ガンマの完成が期待されています。
本書を眺めていると、何度も気候が変わり、多くの種が絶滅し、その度に新たな種が出現した過程が見て取れます。まるで古代遺跡の壁画や、古代エジプトの絵画でも見ているような錯覚に陥りながら、「これまでの地球の歴史を絵で表すとこうなる」といった構造になっています。
ハルダー氏は、特定の宗教感や価値観を押し付けるものではなく、既存の資料を経時的にまとめあげることで本書がつくられたとされています。
帯にも『万物創世、宇宙と地球と生命の歴史を壮大なスケールで描く驚くべき大絵巻』とありように、まさに『圧巻』の一言です。
生命の誕生は非常に不可思議です。
エントロピーは増大するものと学びました。通常、何もしなければ秩序は壊れる方に物事は傾きます。
例えば、ビンにビー玉をいれたままにしておくと、いつかは倒れてビー玉はチリジリになる可能性の方が高いでしょう。何もせずに、チリジリになったビー玉がビンの中に入るとは考えにくいものがあります。
私からしてみると、生命の誕生はまさにこの「ビー玉がビンに入る」状況のように思えてなりません。何の力が働くこともなくそのようなことが起きると考えにくいのであれば、『神』もしくは『地球外生命体』などの力が介入したのでしょうか。
また、人間が神によって特別選ばれた存在とは個人的に考えにくいものがあります。人間が特別なのであれば、わざわざ人類誕生までに長い年月をかけ、恐竜やその他の種を絶滅させる必要はなかったと考えてしまいます。もちろん、神が存在したとしても、その御心は私達が理解できないものかもしれないため、否定はできません。
私たちは「人類は史上最も優れた知能を有している」と考えるのが一般的ではないでしょうか。しかしながら、もし仮に、私達が比較すると「微生物」ぐらいでしかない程の大きな生命体が存在したらどうでしょう。ミジンコは本当に単純な生物なのでしょうか。ミジンコはミジンコなりに、「自分達は優れている」と認識しているのかもしれません。反対に、私達のことなど、塵としか認識していない高度生命体が存在するかもしれません
ヒストリーチャンネルでは夜中に『古代の宇宙人』という番組を毎日放送しています。構成がしっかりしているので、うさんくささよりも、宇宙人がいると考えた方が普通かのような妙な説得力があります。
ピラミッド、ナスカの地上絵、ノアの箱舟、アーク、カラス天狗、天使と悪魔の戦い。
これらを宇宙人と絡めて説明されるのですが、教科書でそう書かれてあったら、そのまま信じてしまいそうなほどうまく説明されています。
私は見た事がないので「宇宙人肯定派」ではないですが、「存在しても全然おかしくない」とは思います。
そもそも人類が存在しているのに、その他の地球外生命体は絶対に存在しないと考える方がおかしな感じがします。「物事に絶対はない」。「ないというのは証明しづらい」というのが私の基本的スタンスです。
読み進めれば、進めるほど、どんどん環境が複雑化されていく中で、却って「始まり」や「無」とは何かの方が気になってきました。
みなさんは、この本をご覧になられて、どのような印象をもち、どのようなことをお考えになるのでしょうか。一人で楽しむもよし、皆でシェアして、それぞれの感想を話し合うのもよさそうです。
Amazonで検索してみると、ハルダーさんの「ギルガメッシュ」なる作品もみかけました。ベータなどとあわせて非常に気になります。いっそのこと購入して、ドイツ語でも勉強してみようかな。