見出し画像

[本・レビュー]借りたら返すな! 大久保圭太著

この本は借りた借金を返さず、借り倒せ!と主張しているのではありません。経営者たるもの、会社のためには、借りて返したらまた新たに借りて、常に現預金残高を可能な限り残せ!と説いているのです。
 
現預金残高は会社にとっての血液であり、血液がとだえたら会社は死に絶えます。現預金をいかに残すかが最重要課題なのです。
 
経営していれば、資金繰りに困るリスクを常にかかえることになります。
いざ借入が必要となった時に、すぐに借りられるほど、世の中は甘くありません。
 
「銀行は晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を奪う」。
 
銀行というのは無機質なビルディングではなく、金勘定を必死で行っている人間の集合体と考えます。
手続きをすれば反射的に金を出してくれる機会の箱ではなく、借り手の返済能力や、貸し手の利益を必死で計算している頭脳集団といえるのではないでしょうか。支店長や部長や課長があーでもない、こーでもないと考えて利益を上げるため日夜がんばっているのです。場合によっては使えない上司の下で平社員が必死に頑張っているのかもしれません。過剰なノルマもあれば、パワハラもあるのかもしれません。
 
銀行にとって金を貸しやすいのは、今まで金をかりたことがない、真っ白の今まさに資金繰りにこまっている会社ではありません。
資金繰りに困っているが、今までも貸したことがあって、しかもしっかり返してくれた実績のある会社の方が貸しやすいのです。
その上、現預金が残っていて、それでもリスクを減らすために前もって金をかりたいという会社なら、より貸したくなるでしょう。
それをよく認識すれば、晴れの日に借りるという発想がでてきます。
 
そうはいっても、借りた金を返せないほど、つらい状況がやってくることもあるでしょう。
金銭消費貸借契約書により、会社は返済期限の到来まで銀行に返済しなくてよいという「期限の利益」という権利を有します。
期限が来たら返済の義務があり、無理ならば債務不履行となり、強制的に回収されてしまいます。しかし、3カ月は「延滞」として元利を支払わなくてもすむため、その間にリスケジュールしてしまえばよいのです。
もちろんリスケジュールしないにこしたことはありませんが、倒産してしまったら元も子もありません。
 
リスケジュールができたら、その期間中はとにかく返さない。期間中は新しく借り入れができないので、手元資金をとにかく減らさないことが大事です。無理して返そうとして倒産するより、定期的に銀行に事業計画の進捗状況を報告して、お伺いをたてるべきなのです。 
 
日本国憲法第25条で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が保障されています。我々は一生懸命働き、そこから多くを税金で徴収されます。ある程度は税金を払うために生きているとも考えられるのではないでしょうか。借金までして一生懸命頑張ってきたのに、返せなくなったらはいおしまいでは報われません。返せない時は、国に養ってもらえばよいのです。
 
つらい時に周囲の助けはかりにくいものです。そんなつらい人々を助けるために国は我々から税金を徴収しているのです。うまくいかなかったその時は、国の助けをかりながら、またはばたける明日につなげればよいのです。あなたは敗者ではありません。リスクを冒して会社を経営するために立ち上がれる戦士なのです。
 
またこの本は税理士に対する幻想もとりはらってくれます。税理士はお金の専門家ではなく、税金の専門家なのです。
もちろんよくできる税理士の中にはお金の専門家もいるでしょうが、基本的に税理士に求められるのは税金に関する知識なのです。
 
税金といえば、よく、税金対策で経費に!という言葉を耳にします。その出費が本当に必要で、税金徴収後の給与からでも買うつもりなら、買ってもいいかもしれません。
ただし、必要もないのに税金を払うのがもったいないという理由だけで経費としてお金を払うのは得策ではありません。税金がかかるのは、利益がでているからです。税金がかからないようにするには利益を0に近づける必要があります。
それはつまり、会社としての価値がないことに他なりません。顧客数が今後も変わらず、毎年の利益も変わらないか増えるようならそれでよいでしょう。しかしどの業界にも流行りすたりがあり、競合他社がいます。となれば売り上げがおちたら、資金繰りに困ります。そんな時に銀行はかしてくれないのです。
 
税理士によっては勧める生命保険の契約から手数料をもらっていたり、生命保険そのもののサービスも行っているというのですから恐ろしい。
知らなくて騙されているケースも多いのかもしれません。今後はそういうところも考えながら税理士の方々と接してみるのも面白そうです。
 
本書では顧問税理士のスキルを見分ける3つの質問が挙げられています。
「お金を使わない節税を提案してくれませんか?」
「今年の税制改正でうちに約に立つことはありますか?」(「御社に関係ある改正はない」と言われてしまったら「では大きい改正はどういうことでどういう会社にどういう影響があるのですか?」)
「税務調査が来ないようにできませんか?」
 
必要以上に関係がこじれない程度にしれっと聞いてみるのはいかがでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集