「別れを告げない」を読んで考えたこと
祖母のこと、母のことがなんとなく
頭に浮かんでいた。
帰宅すると本が届いていた。
「別れを告げない」
ハン・ガン著
済州島四・三事件を取り扱い
「今日的でリアルな生き難さをかかえたふたりの女性の結びつきが、激甚な歴史の痛みを通過して生死をまたぐ愛の状態にまで昇華される。」訳者あとがきより
”済州島”・・おばあちゃんは「チェジュドー」って、
いつも言ってたなあ・・
大邱(テグ)は、祖父の故郷だ・・
(わたしの曽祖父母は、韓国からの移民だ。)
などと思いながら
祖母も母も、わたしにいろいろなことを語った。
そのイメージは苦しいものばかりだ。
苛烈な経験や記憶(PTSD)は
遺伝子に刻まれる、と考えている。
わたしが薬物依存を克服するとき
夢をみた。
先祖のひとたちがたどった道を
遺伝子の粒子があぶくのようになって
わたしをとりまき
たくさんの丸い粒子が、幾千と
そのなかから、父が手を差し伸べる
「あともう少しだから」
「ここまで来たのだから、あともう少しだから。
頑張ろう」
わたしの命はそのとき、おそらく消えようとしていた
先日看護師さんと話す機会があり、そう言われた
わたしがいまここにいることも、
みんなの道をたどって来てのことなのかな
この本の帯にかいてあることと
似ているのかな・・
「これが母さんの通ってきた場所だと、わかったの。
悪夢から目覚めて顔を洗って鏡を見ると
、あの顔にしつこく刻まれていたものがわたしの顔からも
滲み出ていたから。
信じられなかったのは、毎日太陽の光が戻ってくるということだった。
夢の残像の中で森へ歩いていくと、残酷なほど美しい光が木の葉の間から
分け入ってきて、何千、何万もの光の点々を作っていたの。(中略)
穴の中で膝を曲げていた背の低い人の幻影を
その人だけではなくて
そのそばに横たわったすべての人が肉をまとい
、顔を持っている、
そういう幻想を、あの光のなかで見たの。」
「別れを告げない 帯より抜粋」
言葉では上手く言えないけれど
ハン・ガンさんの本を読んで
生きること、命があること
奇跡的に、明日がくること
やり直せること
土の中の骨から
鳥の命になって
雪になって
われわれの夢になる
「ひとつ」の世界になるまで
すみずみまで分解され、浸透する
われわれの問題は普遍的であり
変わらない痛みは、誰の生にも存在する
無意識に同じ過ちを繰り返すにあたり
「知ること」が出来たら
人間にとって
「追悼」というのは
あまりに深い
痛みが人間の歴史だったとしたら
未来は