リーディング・ゾーン
ああ、思い出した。
僕が昔、何より本が好きだった頃。
僕は、すぐにそこにたどり着き
長いことこちらに帰ってこなかった。
いてもたってもいられないから
時間がもったいなくて
隙を見ては本を開いていた。
1ページもあれば
僕の目は、確かに空を見上げ
僕の耳は、はっきりと息遣いを感じ
僕の口中に味わいが広がった。
遠くの方で自分を呼ぶ声が聞こえても
帰るのが億劫で
戻りたくなかった
あそこをリーディング・ゾーンというのか。
リーディング・ゾーンとは、『イン・ザ・ミドル』にあった言葉で、ざっくりいうと本に夢中になっている状態をさす、ナンシー・アトウェルの教室内での造語(多分)である。
リーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップという言葉を知ったのは、noteを初めてまもなくだった。
もっと教科教育の視界を広げたいなと思っていた矢先だったので、kanakanazemiさんの紹介するナンシー・アトウェルの『イン・ザ・ミドル』に興味を持ち、購入したのだ。
自分が実践の形に持っていくにはもう少し読み込まないとダメなのだけれど、その著書に出てくるリーディング・ゾーンという言葉に、自分のあの頃が結びついて、一気に立ち上ってきた。
本を読んだとき五感が働くことを、僕は当たり前だと思っていたけれど、
生徒に聞いてみると、どうやら、本を読んでも登場人物の声も聞こえなければ、色も建物も、食べ物や飲み物の味も、何も感じないという子たちが少なからずいるらしい。
それは、どうやらこのリーディング・ゾーンに入ったことがない子供たちなんだと、この本を見て思い至った。
同時に、そういえば最近、僕もそこに行ってないなと感じた。
最近読む本が、教育書であったり、啓発本であったりと、本の世界にどっぷり浸りこむ性質の本ではないからかもしれない。
久々に、あちらに行って楽しんでこよう。
そして、それを子供たちに伝えよう。
そんな気持ちになった日曜であった。