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085 読書にまつわる5つの質問

今の仕事では、わりと高校生や中学生と関わることが多いのです。
そして、そんな学生たちから、私は本の質問や相談をよくされます。
基本的に経歴は一切出していないのですが、もしかしたらどこかから過去に私が図書館や大学に勤めていたことがもれたのかも知れません。

今回は、よく聞かれる読書について、質問形式で答える、という記事です。
お茶と一緒にゆったりと楽に読んでいただけたらうれしく思います。

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Q1 普段、まったく本を読みません。でも、大学入試を推薦で合格した今、入学までに本を読んだ方が良いと言われました。どんな本を読んだらいいですか。(高校三年生より)

A 三つの提案をします。
① 教科書に載っている文章から読んでみたら良いと思います。短くて読みやすいものが多いですし、難しい言葉は教科書の隅に解説してあります。私は、中学生や高校生のころ、授業で扱わないけれど教科書に収録されている作品を読むのがすきでした。そこから安部公房や村上春樹、梶井基次郎を知り、どっぷりハマりました。もちろん、授業で扱ったものでおもしろいな、と感じる作品があれば、その作品を書いた作家の本から読むのも良いと思います。私はそれで夏目漱石、森鴎外、中島敦、芥川龍之介のファンになりました。

② 映画やドラマが好きなのであれば、その原作から読むのも良いと思います。本はおもしろいと感じなければ読了できません。みたことのあるお話であれば、ストーリーが頭に入っていますし、おもしろいことがわかっているので読み進めやすいと思います。また、映画やドラマとは違った物語のおもしろさを発見できるかもしれません。

③ 古典や文学賞受賞作品に挑戦するのも良いと思います。ちょっと敷居が高いかもしれませんが、時を超えて読み継がれている作品や評価されている作品にはそれだけの理由があります。また、賞でも本屋さん大賞の作品は比較的読みやすいものが多い印象です。毎日本を読んでも、一生で読める本の数は限られています。限られた時間の中で、素晴らしいものに出会いたいのであれば、これも一つの近道と思います。

本を読む目的にもよりますが、彼の場合は小説を読みたいとのことだったので、このように答えました。小説は、すぐに使える知識を習得するわけではないので、即効性のある効果を求めていたら合わないかもしれません。でも、読めば読むほど心が豊かになるのは確かです。

同じ本を読んだ人と出会えたら、感想を交換するば素敵で楽しい時間になります。
ほんとうに、人によって色々な視点があって、自分の思いもよらない読み方にふれたときは、視野がぐぐっと広がった心持ちになります。

今回質問をしてくれた男の子とは、同じ本を読んで二週間後に感想交換をするうれしい約束をしています。

また、気に入った本を折にふれて読み返すことも読書の楽しみです。中身は変わらないはずなのに、自分自身が変化しているから読むたびに発見があったり、印象にのこる場面が違っていたりして、おもしろいのです。こういう風に自分と向き合うのも、じんわりと良いものです。そして、何年もかけて読み返した本は、自分の人生の古典となります。


Q2 ひと月に何冊本を読みますか。(高校一年生より)

A 月によってさまざまです。
本によって文量も違えば内容も異なるので、一冊にかかる時間は変わるからです。専門外の本は、どうしても基礎知識の不足から理解するのに時間がかかってしまうこともありますし、好きな作家の本であれば、読み慣れた文章なので、すいすい読み終わることもあります。どういった本を開くかによって、ひと月に読める冊数は結構変わります。

よく誤解を受けるのですが、読書好きだからといって、読むスピードが速いわけではありません。速い方もいらっしゃるかもしれませんが、私はむしろ遅い方です。知らない言葉はいちいち調べますし、素晴らしい一文に出会えたら何度も読んだり、メモをとったりするからです。
本を作ることは、あるいは文章を書くことは、大変な作業だと思います。何度も推敲を重ね、ベストな言葉、文章を取捨選択し全体を組み立てています。
私はそんな本たちを早く読み終えよう、ではなくて、しっかりと内容を理解しようと思って読んでいます。冊数よりも、自分の心の栄養にすることが重要と思います。本を閉じたとき、私は私のままですが、読む前の私とはわずかに異なります。それをきちんと感じられる読み方をしたいと思っています。
これは、あくまで私の本の読み方であって、これが絶対的に正しいとは思いませんが、そんな風に冊数にこだわることなく私は本と向かっています。

Q3 電子書籍は読みますか。また、電子書籍について、どう思いますか。(高校三年生より)

A 読みます。ただし、雑誌や漫画、写真の多いエッセイ本(暮らし系?)に限ります。
漫画は、読みはじめるとどんどん増えて本棚に入らないためです。また、図書館にいたころ、資料の中で漫画が最も早く劣化すると感じたためです。あと、電子書籍であれば、漫画を電車で読んでもばれにくい(笑)ことも理由のひとつです。
雑誌も購入すると場所をとってしまうことと重たいからです。
そのほかの仕事で読まなければならない専門書や自己啓発の本は、基本的に紙媒体です。そもそも電子書籍になっていないものもあるからですが、電子書籍だと購入する時に中身をあまり見られないことが理由です。
あと、画集と小説は紙媒体が好きです。これは好みの問題ですね。
青空文庫を読むこともありますが、なぜか疲れてしまいます。
電子書籍も紙の本もそれぞれ良いところがあるので、うまく使い分けられたらいいなと思います。

Q4 本はどのように収納していますか。(職場の人より)

A 収納はまったくできていません。本棚からあふれています。
なので、お答えできないですね。
ちなみに、うちには文庫本用本棚、単行本用本棚、料理本や画集・絵本などの大型本用本棚があり、全部で三つの本棚があります。本棚以外の棚にも隙間があれば本をつっこんでいます。そして本棚の上、もしくは横に入りきらなかった本を積み上げています。
地震があったら大変危険な状態です。次の連休になんとかします。
こんな私に収納方法などお話できるはずがありません。
むしろ教えてください。

Q5 どういう環境で本を読みますか。(高校三年生より)

A 私は基本どこでも読めます。
普段は仕事の休憩時間、通勤の電車の中、夜寝る前に読んでいます。
休日は図書館や自宅で読んでいます。
椅子に座っていても、立っていても、寝転がっていても読めます。
歌詞のない音楽(クラシックやジャズ)をかけながら読むのも好きですし、静かな中で読むのも好きです。そうそう、私は本を読んでいると口がさみしくなる人なので、あたたかい飲みもの、もしくはお菓子、もしくはその両方の準備が必要です。

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いかがでしたか。
最近よく聞かれる読書にまつわる質問をまとめてみました。
基本的に毎日本を読んでいる私ですが、やはり秋が一番読書欲が高まる気がします。
ちなみに、最近読んだ本でおもしろかったのは川上弘美さんの『大きな鳥にさらわれないように』です。
本は、その一つ一つが世界を持っています。
そこに行ける楽しみ、そして気に入ったら何度でも行けるしあわせに取り憑かれて、これまでさまざまな本を読んできました。

仕事で出会う人たちにアドバイス(になっているのかどうかわかりませんが)ができて、これまでの読書クルージングも、少しは役に立ったのかな、なんて思います。


さてさて、今日はどんな世界に行こうかしら。

今回も最後まで読んでくださって、ありがとうございました。


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