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俺の本棚vol.3 なぜ僕らは働くのか【WACK】

「まあ、一杯やりながら君の話を聴かせてくれないか」

ここは、ノートガルドの一画、知に魅せられた者たちが集うソフィア街区にある大書院。その周囲には教会や書店、古物商など知に関わるものから宿屋や薬屋、魔道具屋などの冒険者目当ての店々までが、所狭しと立ち並び、さながらその一画が独立した街であるかのような賑わいを見せている。

そんな大書院に喫茶店が併設されていることは、過去に一度でも訪れたものであれば、誰もが知っている。そのオーナーこそが書院の主である、「大賢者 白」だからだ。

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今日もまた一人、彼の元へとやってくる。

「叡智」

それが、皆の求めるものの名である。

❇︎❇︎❇︎

「いやあ、実はジョブ?っていうんですか?あれ,一体何になればいいのかわからなくなっちゃいましてね。」

そこそこ年齢を重ねていると予想していたが、よくよくその風体に目を向けると、薄汚れたローブの向こうにある、光を内包した双眸から若いエネルギーの発露を見てとることができた。

「ジョブか…、親の跡を継がないのか?」

この世界の最もポピュラーなジョブの選び方だ。靴屋の子は靴屋。鍛冶屋の子は鍛冶屋。そうやって世襲によって伝統を紡いでいく。それは決して悪い方法ではない。伝統を守りながら、いつしか自分自身が新たな伝統となってゆくのだ。

しかし、その男は首を二、三度左右に振った。

「残念ながら、私は放浪者の息子。継ぎたくとも継げるようなものを親は持っていないのですよ。」

放浪者とは、このノートガルドに時おりやってくる異国のものの総称である。紛争や迫害を逃れ、この地に辿り着くものもいれば、自ら望んで国を捨てるものもいる。彼はその子どもらしい。ならば生業を持たぬのも頷ける話だ。

「そうか…なら、ちょうど良い書がある。まあ、珈琲でも飲みながら気長に待っていてくれ。」

そういうと、慣れた手つきで挽きたての豆にお湯を数滴落とす。そうして全体が湿り気を帯び、1、2滴珈琲が落ち始めたところで、ゆっくりと回しながら親を注いでいく。コーヒーの蒸れた薫りがあたりに漂い、ドーム状にぷっくりと豆が膨らんでいく。

「うん…?ああ、きいすは今日本の買い付けに行って、いないんだったな。仕方ない。わしがとってこよう。

…よし、できた。さあ、どうぞ。ミルクが必要ならこちらを好きに入れてくれ。」

白は、若者の前に淹れたての珈琲を置くと、書院の奥へと先を立つのだった。

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この本はこれまで俺が読んだ「働くことを考える本」の中で、最も感銘を受けた本である。

単に、働くとは何かということを解説するだけではなく、その一つ上の考え方を提示しながら話が進んでいくのだが、漫画を読み、その後にイラストをふんだんに交えた文章で、その章で伝えたいことがまとめられている。

非常に読みやすく、それでいて、最新の「働くこと」についての考え方が伝わる作りになっている。さすが池上彰さん監修だけある。

正直、これを生徒分買って配りたいくらいだ。そこには、従来の職業観ではない多様な社会が広がっていた。

きいすちゃん、ブックリストに入れてほしい逸品です。

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