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子供に中学受験させるべきか。東大生の中学受験講師がメリットとデメリットを深く考察。

概要

私は子供に中学受験をさせるべきだと思う。

前提

最初に議論の前提を整理しよう。

主な議論の対象

ここでは、関東の一都三県を想定して議論を行う。理由は、この地域とそれ以外の地域では、中学受験に関する環境、特に中学校の選択肢や塾の質と量が大きく異なるからだ。また、私の経験からこの範囲外のことは語れないという事情もある。

個人的背景

私は、都内の公立小学校から、中学受験をして都内の中学校に進学した。また、東大進学後中学受験大手塾で3年間講師として中学受験算数を指導してきた。そのため、経験や知識は、少なくとも私見を述べさせていただくに耐えるものだと考えている。参考になれば幸いである。

注意すべきこと

最初に断っておくが、子供に中学受験をさせるかは、最終的には家庭の保護者と子供が選択することであり、部外者が「すべき/すべきでない」という一般論を議論するのは誤っている。あくまで、私が親だとしたらどう考えるかという視点で書いているので、その点を留意された上で参考にしていただければと思う。

「何が正しいか」の考え方

哲学の世界でも、「何が正しいか」の判断の基準として、「損得を計算してプラスなら正しい」という考え方と、「数字に関係なく行為そのものが正しいか間違っているかは最初から決まっている」という議論がある。

ここでは、前者の立場から議論する。すなわち、プラスとマイナスをそれぞれ検討して、どちらが上回るかを考える。しかし、当然後者の立場からも検討可能である。ただ、この立場からはあまり客観的な議論にならないので、ここでは前者の立場から「子供に中学受験をさせるべき」と示す。

お気づきかもしれないが、損得を計算できるためには、最終的な目標が必要である。例えば、「今目の前のパンを食べるべきか」は、目標が「痩せること」なのか「栄養を補給すること」なのかによって判断が変わってくる。以下、「子どもの将来全体にわたる幸せの最大化」を目標としてリスクとリターンを検討する。

中学受験のリスク

まず、マイナスの要素、すなわちリスクを考える。

1. 家庭環境悪化

第一に、家庭環境悪化である。一般論として、受験に関わる問題で家族内の意見が分かれ、関係が悪化するという話はよくある。中学受験に関しては、親も子も初の受験であることが多く、皆が強いストレスにさらされるため、関係悪化のリスクは高まる。

また、小学生の子供に進路に関する意思決定をする能力はないことがほとんどなので、圧倒的な正義がない。つまり、大学受験くらいになると「子どものやりたいようにさせる」という、明白で正当性のある尺度があるが中学受験段階ではそれがないことが多いので、保護者同士の「正義」がぶつかり、子供もそれに巻き込まれる惨事が起こりやすい。

2. 勉強嫌いになる

第二に、子供が勉強嫌いになるリスクがある。大抵、幼稚園から小学校低学年くらいの子供は勉強が嫌いではない。何かができるようになるのは楽しいし、勉強ができるのはかっこいいという純粋な憧れもある。しかし、学年が上がって「自発的な行為に伴う楽しさ」を「強制的な義務に伴う嫌悪感」が上回って来るのが一般的である。その時期の早さに個人差はあれ、たとえ東大生でも、ほとんどの子供がこの時期を経験する。そして、中学以降の「自分の意思で勉強するか決められる度合い」が高くなる時期に、勉強への嫌悪感が拭われないままだと、20代くらいまでそのコンプレックスを抱えて育つことになってしまう。

こうなると、その後の進路はほぼお先真っ暗になる。もちろん、本来進路に優劣はないが、中学受験をさせる親は「その後の進路」を大きな意思決定指標にしていることが多いので、リスクとして記述している。

3. 他の習い事や遊びはできなくなる

第三に、小学5・6年生の間、塾以外の習い事や遊びは、ほぼできなくなることが多い。一般的には、中学受験をする家庭は小学4年、遅くても5年までに勉強以外の習い事はやめて、「学校・塾・宿題」の生活リズムに入る。これは、他の活動に価値を重く置く家庭にとっては「リスク」となる。

すなわち、子どもの可処分時間をなるべく多く勉強に使った方が、子どもの将来全体にわたる幸福を最大化できると信じる家庭にとっては、他の習い事や遊びをやめることはリスクではない。一方で、子供は受験を控えていても、たとえ志望校合格の可能性が多少下がっても、外で遊んだり、ピアノなどの習い事をさせた方が子どもの将来の幸せにつながると信じる家庭にとっては、中学受験に本気になることはリスクである。

リスクを考えるときの注意

ここまで、考えうるリスクを述べたが、もちろんこれらのリスクをヘッジすることは容易である。これらの事態が起こりうることを想定できていれば、「子供が受験をしたくないならやめる」とか「宿題や授業時間が短い塾を選ぶ」といった対策が容易に可能である。

リスクが「ある」という言葉は、「危険性90%」も「危険性10%」も同様に含むので、使い方と読み方には注意すべきである。危険性を低める努力は各家庭が簡単にできるはずなので、単純に0か1かではないことに留意されたい。

※今後の内容
ここまで検討したリスクの存在にもかかわらず、それでも中学受験をさせるべき理由を詳細に考察していきます。

中学に関係なく塾に行けば勉強はできるんじゃないか。
小学生にハードな勉強をさせても意味がないんじゃないか。
大学受験でも巻き返せるんじゃないのか。

本当にそうでしょうか。後悔をしない自信はありますか?

東大生の中学受験塾講師だからこそ書ける、中学受験が持つ恐ろしいほどのアドバンテージを明かします。

興味がある方は、ぜひ続きもご覧ください!

中学受験のメリット

次に、子供に中学受験をさせるメリット、リターンを述べる。

1. 環境の格上げによる進路のアップサイド

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