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【頼むから説明してくれ】アニメ映画『メイクアガール』感想
はじめに
私の名は、ツユモ。
恋愛アニメ映画マイスターである。
つい先ほど、アニメ映画『メイクアガール』を観てきた。
率直な感想から言うと、面白かったとかつまらなかったとか以前に、「なにこの…なに??」という感じで、全く理解と感情が追いついていない状態である。
もし私が誠実な映画レビュアーだったならば、きっとこんなときには2周3周と作品を観直したり、パンフレットを読み込んだり、ノベライズを読んでみたりして、「語れる」状態になったうえで感想を書いていたことだろう。というか、それが作品に対する礼儀というものである。
だが、今はそんな礼儀や敬意などどうでもいい。自分の中のモヤモヤをとにかく放出したいので、あえてこの大混乱中の頭で書き殴っていこうと思う。
細かいことは「うるせ〜〜!!!!! 知らね〜〜〜〜!!!!」の気持ちしかないので、もはや感想やレビューというより掃き溜めに近いものになるだろう。
誠実なレビューしか許せない方はブラウザバック推奨だ。
メイクアパニック
さて予防線を張ったところで、本作のあらすじを振り返っていこう。
物語の舞台は、人々の生活をサポートするロボット・ソルトが普及し、活躍する近未来。そんなソルトを開発した高校生の天才科学者であり、本作の主人公・水溜明は、失敗続きの研究に行き詰まりを感じていた。そんなある日、友人から「彼女ができたらパワーアップして仕事の能率が倍になったんだよ!」という惚気話を聞いた明は、その言葉を鵜呑みにして、わずか数日で美少女人造人間・0号を作り出す。0号h…
いや、ちょっと待て。
あらすじの途中で我慢できなくなってしまったが、
正気か??????????????
え? なにその謎の技術力は??
ペッパーくんみたいなアシストロボを作った超天才なのはわかったけど、食事も排泄もする人間を生み出すのは次元が違いすぎるというか、急にオーバーテクノロジーすぎませんか!!!!!
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だってさっきまであんたカップ麺を自動で作ってくれる自作メカを学校で見せびらかしてはしゃいでたじゃん! 近所のちょっと有名な発明おじさんレベルの技術力だったじゃん!!!!
『鋼の錬金術師』ですら「人体錬成は最大の禁忌」ってさんざん言われてたのに、それよりずっと現実社会に近い世界観で「一晩徹夜しました」くらいの軽いノリで人を一人生み出すとかやべえって!! コイツ今すぐ逮捕したほうがいいよ、世界の理に反してるって!!
いや、もう「研究が行き詰まってて超スランプで〜」とかどうでもいいわ、あんた人間を一人作る神の領域にいるのになんであんなロボットの研究は失敗しまくるんだよ!!
てか、他の人たちはなんで主人公が人間を一人生み出したことを当然のように受け入れているの?? 0号ちゃん学校にまで編入してきてるしバイトもしてるけど戸籍とかどうしたの? 周りの人々は彼女が人造人間であることを知ってるの? てか、こんなの世界中のマスコミが押しかけてくるべき案件だろ!!!!
頼むから今すぐだれか説明してくれーーーーーーー!!!!!!!!!
ハアハア…… ゲホッ、ガホッ、オエッ……
BAD END1「発狂」
と、序盤のあらすじを書くだけで「?」が無限に出てきてしまうのだが、とにかく主人公は人間を一人生み出せる超技術を持っていることは前提として受け入れないと話が全く進まないので、断腸の思いで受け入れるとしよう。
そうして世界観について飲み込んでみると、今度は「主人公の行動原理」に対して疑問が湧いてくる。
先ほども述べた通り、主人公は恋愛対象が欲しくて彼女を生み出したわけではなく、「パワーアップしたくて」彼女を生み出すわけだが、この理屈が常人には全くもって理解不能である。
確かに主人公は研究に行き詰まっていて、その打開策を探していた状態だったが、「彼女ができたらバイトの効率が上がった」という話で、なぜじゃあ「彼女を生成しよう」というロジックになるのかまるでわからん。いや、どこか人間的な感情が欠落した天才キャラなんだから、行動が常軌を逸しているのはある種当然なのだが、コイツもう天才というよりサイコパスだろ。
「パワーアップできると思ったから人間を生み出した」って、「葬式で彼にもう一度会えると思ったから息子を殺した」と同じレベルの思考回路じゃん。反出生主義の団体が聞いたら卒倒するレベルだし、少年漫画の世界だったら主人公に倒される側の発想だぞ。お前に必要なのは彼女じゃなくて倫理観じゃい!!と、ひたすら罵倒&ツッコミたくなるが、なぜか作中では主人公のクラスメイトも大人たちもすんなりこの状況を受け入れてしまうのだ。
「おかしいだろ!!」「目ェ覚ませ!!」と言いたくなるが、もうとにかく「この世界では人造人間を作ることは割と普通で、特に倫理的な罪にも問われない」のか、もしくは「この世界の人たちはとんでもなく懐が深い」のどちらかと仮定しよう。そうでもしないと頭がおかしくなってしまう。
しかし、ようやく脳が世界観に慣れていった物語中盤。主人公・明が0号に対して理不尽な怒りをぶつけ出す、という新たな試練が観客を襲う。
彼女を作ったはいいものの、パワーアップどころか研究は失敗続きのままなうえに、休日や放課後は一方的に好意を寄せてくる0号に連れまわされ、ペースを乱されまくった明はついに我慢の限界に達し、屋上で悲痛な叫びをあげる(ギャグシーンじゃないのになんか笑っちゃった)。
そしてついに明は0号を家から追い出し、別のアパートに住まわせようとする。それでも「主人公の傍にいたい」という想いから、明に必死で抗議する0号だが、「人造人間は創造主に反抗できない」という抑制機能が働き、自らの首を絞め出すという自傷行為に及び苦しむ。その姿を見て、主人公は悲しみに暮れるのだった…
ここまでのシナリオを見た私の頭の中はもう、この言葉でいっぱいだった。
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なに被害者ヅラしとんねん。
自分勝手な理由で命を生み出しておいて要らなくなったから捨てるって、サイコパス超えて育児放棄のクズ野郎でしかないだろ…
もう、この展開で完全に主人公を応援する気が失せたわ…
あとのことはもう、あまり覚えていない…
BAD END2「諦念」
と、まとめるには説明を端折りすぎているので多少フォローすると、一応この明の行動には「母の遺した研究を完成させなきゃ」という科学者としての焦りと、「病気で幼い頃に亡くなってしまった母の想いに触れたい」という寂しさが起因している。
が、正直この母親関連の話が本作では非常にわかりづらく描かれているので、このあと明が記憶の中で母親と出会い、改心して0号を助けに行くまでの心境の変化を初見で完全理解できた人はいないのではないだろうか。(てか私も雰囲気でしかわかってない)
話は飛んで終盤。
いかにも「悪者です!」という感じの仮面を被った悪者たちに車で誘拐されてしまった0号は、ソルトを改造したキックボードで追いかけてきた明の手によって助け出される。このあたりのチェイスシーンやソルトの変形シーンはアニメーションとして見応えがあったし、科学者としての特性を活かしまくったダイナミックな展開で普通に面白かった。(裸足で道路を走るのめちゃくちゃ危ないぞ、というのは気になったけど…)
※ちなみにこのチェイスシーンでは平気で信号を書き換えたりして交通機関がめちゃくちゃになり、衝突事故が起きまくっている描写もあるのだが、この世界の人々は懐が異常に深いので主人公が逮捕されることはないのだ。
そしてその後、助け出された0号はなんと明に刃を向ける。
0号は、自らの「明が好き」という想いが、単なるプログラムに過ぎないのか本物の恋心なのかわからず、傷つき悩んでいた。だからこそ「主に反抗できないプログラム」に反する行動を取ることで、自我を持った自分という存在を確立し、その想いが本物であることを証明したかったのであろう。
と、まあ映画を見終わった今冷静に分析しているとこの展開に割と納得感はあるのだが、劇場ではこの辺の0号の感情がよく理解できないまま感動的なBGMが流れ出してしまったので、気持ちが乗り切れなかったというのが正直なところである。
また、物語の本筋にはあまり関係ないが、主人公・明が義手である理由が劇中で語られないのも挑戦的だと思う。(終盤で0号に刺されまくってもすぐ学校生活に復帰していたことを踏まえると、実は主人公自身も母親の研究で作られた人造人間だったりするのか…?)
あと最後にこれだけは言わせて欲しいのだが、幼馴染の幸村茜が明に好意を抱いている設定が一番わけがわからなかった。
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単純に「あんなやつのどこがいいんだよ!!!」という怒りもある。
だがそれ以上に、この茜という理解者がいることによって明と0号の関係性にノイズが生まれるというか、0号がいなくても明は茜と結婚して普通に幸せに暮らしていきそうだなと思ってしまうのだ。
これは本当に好みでしかないのだが、「天才的な頭脳を持つが、その天才性ゆえに決して周囲の人間には理解されない孤独な男」と、「その天才が生み出した哀れな人造人間」の二人だけの関係性の方が切なくてよかったな…と思ってしまう。
おわりに
当初想定していたより随分長い記事になってしまったが、まとめると「わからないことだらけだったな…」という気持ちになる映画だった。
ただこれは私の理解力にも問題があると思うので、「良い映画かどうか」は、上記のような劇中で説明されない細かい疑問点を気にしない大らかさと、ある程度瞬時に脳内補完できる能力がどれだけあるかによって変わってくると思う。
ちなみに私は安田現象氏のことを全く知らないで鑑賞したのだが、この記事を書くに当たってググったところ、氏が4年前にアップロードしている以下の動画を見つけた。
キャラデザは大きく異なるが、本作のあらすじはほぼこの映像通りだったので、見にいくか迷っている方はこの動画にピンとくるかどうかで決めるのが良いのではないかと思う。
批判的なことばかり書いてしまって不愉快になった方がいたら申し訳ないのだが、この記事で自分と同じようにモヤモヤした気持ちが少しでも晴れた方がいれば幸いである。みんなも語ろう、メイクアガール!!