「マイぺースに都城弁」子育てエッセイ⑨
去年(2007年)ほど方言について、それも都城弁の独特さについて実感した年はなかった。
長女が大学進学で関東に住むことになり、そこでの生活をいろいろと報告してくれるのだが、都城を出たことのない私には驚くような都城弁エピソードがてんこ盛りなのである。
大学のサークルでイベントの会議があった時、
「あした、雨が降ったらどうなるんですか?」
と、ひと言発しただけで、30人いっせいがふり返った! とか、
アルバイトでジーンズ販売をしたら、お客様に
「君、なまってるね。」
と言われたとか・・・。
都城ではあいづちで使う「だからよ~」だが、それを言うと、向こうの人たちはその後に続く言葉を待っているそうだ。
「むじい(かわいい)」とか「おっじごっ(すごく)」などの方言を使わないように気をつけることはできても、都城弁のイントネーションの独特さを直すのは難しいようだ。
「雨」と「飴」は都城では同じように発音するが、向こうでは使い分けている。アクセントの位置が違うと説明されても、私たちの耳では違いがよく分からない。
昔、言葉のアクセントに関する問題が大学入試センター試験の国語に出たさい、地方出身者に不利な設問だと問題になったことがあった。
大阪弁、東北弁、沖縄弁などと違い、都城弁はマイナーなので
「この人たちどこの人?」
と思われるようだ。次女と2人で上京し、新宿で合流した長女と街なかを話しながら歩いていると、よくジロジロ見られるのである。
「ねぇ、あの人たち、こっち見てるよ。」
と次女が小声で言うと、
「心配するな。よく見て! あの人たちはアラブ系よ。外国人だから気にするな。」
と答える長女に、たくましさを感じた。
昔は、田舎出身と思われたくなくて、必死に標準語を話せるよう努力した人も多かったようだが、娘は、
「私は、こんな性格なんで気にしない。」
と言い放っている。
「最近、友だちが何も指摘しなくなったから、標準語になってきたと思っていたんだけど、それは私の都城弁を聞き慣れてきたからだってサ。」
とのメール報告も。
たしかに、夏も正月の帰省も都城弁のままの娘。いいかげん進歩のないヤツと笑ってしまうが、何だかホッとする気持ちもある。最近では、方言を売りにしているようでもある。
アルバイトのデパ地下たい焼き販売では、妙なイントネーションの売り子に魅かれるのか? 娘が店頭に立つとお客様が多いらしい。店長も
「いやぁ、このこは宮崎出身なんですよ。」
と宣伝し、
「ねぇ、あの東国原知事が言うのを言ってみて。」
とお客様から催促されたりもし、それに陽気に応えているらしい。
去年は、宮崎弁(正しくは知事も言うように諸県弁)の「どげんかせんといかん」が全国に広がり、方言としては初の流行語大賞をとってしまったほど。宮崎県出身者で、とくに娘のようなマイペースタイプには、追い風になったと言えそうだ。
しかし、かの娘も、友人らと韓国料理店で食事をしたさい、韓国人らしき従業員に、
「日本語うまいですね。どこ出身ですか?」
と聞かれたのは、ショックだったようだ。
「宮崎出身! と答えたら、その人ポカンとしていた。」
と語る娘も、さすがに
「私、日本人なのに……」
とへこんでいた。
マイペース長女、いったいいつ頃になったら、標準語をマスターできるのだろうか。
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