【金曜日のしかけ#28】ボトムアップで目標が決まる
すみません!「日刊7秒しかけ」なのですが
毎週金曜日は「7秒しかけ」ではなく、フツーの会社の「すごいしかけ」を紹介します。
フツーの会社の「すごいしかけ」とは、GoogleやAmazon等の一流企業が実践しているしかけではなく、隣の優良な中小ベンチャー企業にしかけ研究家白潟がインタビューさせてもらい発見したしかけです。
この記事ではネームバリューや業界特性ではなくすごいしかけや社長の工夫をニュートラルに読んでもらいたいので会社名は最後に紹介します。
ただ、気になるかと思いますので、すごいしかけの実践者の名前だけは先に公開します。
第28弾の「すごいしかけ」は種田社長の「ボトムアップで目標が決まる」です。
社長、各営業メンバーの個人目標はどのように決めていますか?
『うちでは全社目標から逆算していって、各メンバーの目標数字を決めているよ』
トップダウン方式ですね、ひとつのやり方だと思います。
『うちでも全社目標から逆算はするけど、最終的にはメンバーの意見も聞いて決めてるかな。メンバーの意見次第では個人目標が変わることもあるね』
なるほど、トップダウンにボトムアップの要素を取り入れているのですね。
営業の個人目標の決め方は会社によって、社長によってさまざまだと思います。
その中でも今回は、とてもユニークな方式「ボトムアップで個人目標を決める」というしかけを紹介したいと思います。
1 ボトムアップで目標が決まるの内容
種田社長の会社では以下の3ステップで個人目標を確定させています。
① 各営業メンバーが来期の個人目標を考える
② 上司に提案する
③ 承認を貰う
まずは、各営業メンバーが来期の個人目標を考えます。
種田社長の会社は、景気の影響を受けやすい業界に属しています。
そのため自身の実力だけでなく、業界のトレンドやお客様の成長率など、
さまざまな観点から目標を考えていきます。
自身の目標を決めたら、上司に提案していきます。
ポイントは、提案 ⇒ 承認のフェーズで行われる、
メンバーと上司の会話にあります。
先に結論を言うと
「その目標にメンバーの努力があるのか?」を重要視しています。
例えば、以下のような目標設定が承認されることはありません。
・お客様の売上が横ばい予想⇒メンバーの目標数字も横ばい
・お客様の売上が10%成長予想⇒メンバーの目標も10%アップ
一方で、以下のような目標設定は承認されやすいです。
・お客様の売上が10%ダウン予想⇒メンバーの目標数字を横ばい
・お客様の売上が10%成長予想⇒メンバーの目標数字を15%アップ
お客様の成長率や業界のトレンドなどの外部要因によって
売上が上下するのはしょうがないことです。
しかし重要なのは、外部要因を外して考えたときに
営業メンバーの努力・成長が必要な目標設定になっていることです。
2 このしかけのすごいところ
① ”やらされ感”の醸成を抑えることができる
目標をトップダウンで決めてしまうと
メンバーが目標数字に納得できないケースが起こりえます。
目標数字に納得できていない状態では
メンバーは「頑張って目標を達成しよう!」と思うことができません。
「なぜその目標なのか?」というロジックが分かっていないので
目標達成へのエネルギーが湧いてこないのです。
「目標は上から降ってくるものであって、自分とは関係ない」
といった、うがった見方を醸成してしまうリスクもひそんでいます。
結果としては、目標未達になってしまうケースもあれば、目標を達成していたとしても、経営陣への不満が溜まっていくケースもあります。
しかしボトムアップで目標を決めていれば、そういったケースは起こりにくくなります。
自分で自分の目標を考えているため、
「なぜその目標なのか?」というロジックが分かっていますし、
目標数字が自分事になりやすいのです。
② 上司のコーチング力がアップする
ボトムアップで目標を決めていくと
上司のコーチング力がアップしていきます。
上手く目標設定することができない未熟なメンバーに対しては、「どのように目標設定をすればよいのか?」気づいてもらう必要があるからです。
目標数値へのフィードバックの際に、もし上司が指示・指導をしてしまっては、ボトムアップで目標を決める意味がなくなってしまいます。
メンバー:『○○さん、来期の目標について考えてみました。NN万円で行こうと思います』
上司:『え!なにその目標!低すぎるでしょ!もっと高い数値を設定しないと!』
メンバー:『はぁ…分かりました』
上司:『再度の提案待ってます』
(後日…)
メンバー:(うーん、○○さんが納得するのはNN万円くらいかなぁ…どうせ承認されないなら自分から提案する意味ないじゃん…)
せっかくボトムアップで目標を提案してもらったのに、
上司が指示・指導をしてしまっては、実質トップダウンと変わりません。
そのため上司はメンバーから提案された目標が低いなと思っても、グッとこらえてコーチングをしていく必要があります。
上司:『〇〇さん、目標数字の提案ありがとう。今回の目標数字に設定したこころを教えてくれないかな?』
メンバー:『はい、来期は得意先の○○社の業界トレンドが下降傾向に入ります。そのため今年の同様の売上をつくるのは難しいと思いました』
上司:『なるほどね、たしかに○○社の業界は下降傾向にあると思います。他にあるかな?』
メンバー:『はい、実は△△社から来期は発注の数を減らすかもしれないと言われています。競合と価格競争が起こっているので挽回は難しいかなと』
上司:「そうだね、私も価格競争は起きていると思います。ちなみに○○さんが提案してくれた来期目標を達成するには、〇〇さんにどんな努力が必要かな?」
(しばし沈黙)
メンバー:「うーん、昨年通りの自分で達成できそうだなと思いました」
上司:「なるほどね、本当にその目標設定でいいのかな?」
メンバー:「たしかに、何らかの努力をした上で達成できる目標設定が必要だと思います」
上司:「そうだね。また考えなおした上で提案してください」
メンバー:(来期の自分にはどんな努力が必要なのかな…?考えてみよう)
このように上司は上手くコーチングをすることで、
メンバーを導いていく必要があります。
またこの過程では、メンバーの目標設定力も必然的に向上していきます。
3 自社に導入する際の工夫・注意点
① 上司の圧力が強いと実質トップダウンと変わらなくなる
今回のしかけは上司の方の圧力やプレッシャーが強い場合は、上手く機能しません。メンバーの方が上司の顔色を伺って目標設定をするからです。
加えてボトムアップで目標を決めるやり方は、メンバーの不満を募らせることもあります。
メンバー:「実態は上司がイエスを出す高い目標を言うしかないのに、まるで”自分で言ったんだからやるよね?”って扱いをされる…」
こんな不満が溜まることも、めずらしくはありません。
② 上司が育っていないと逆効果になる
今回のしかけは上司の目標設定力がマイナスの場合は、逆効果になります。
具体的には、上司がメンバーから信頼されなくなるリスクがあります。
最悪なケースは社長が何度も、メンバーと上司が決めた目標設定にNoと言ってしまう場合です。
メンバー:〇 ⇒ 上司:✕
この場合は問題ありません。
上司とメンバーで目標を修正し、社長に提案するからです。
一方で
メンバー:〇 ⇒ 上司:〇 ⇒ 社長:✕
このケースは数が重なるとリスクが大きくなります。
メンバーは『ああ…どうせ上司がOKって言っても、だいたい社長に差し戻されるんだよな』と感じ、上司の言うことを信頼しなくなるからです。
種田社長は上司(幹部)が提案した目標にNOを言うことはないそうです。
③ 全社目標が昨対比150%など、急成長を目指す場合は難しい
ボトムアップで目標を決めると
メンバーはどうしても現状をベースに目標を考えます。
そのため目標数字は昨対比110%~120%に落ち着きがちです。もちろん社長が昨対比110%~120%の堅実成長を目指している場合は問題ありません。
ただ昨対比150%~200%という急成長を目指す場合は、ボトムアップで決めた目標が全社目標に届かない、というケースが発生することがあります。(足りない分を別の全社施策でカバーするという場合は別です)
ボトムアップで目標を決めた場合の成長率は、社長が目指す成長率とどのくらい乖離が発生するか?は事前に考えておいた方が良いと思います。
4 すごいしかけの会社はコチラ!
すごいしかけ「ボトムアップで目標が決まる」を実践されている会社は、本社が愛媛県四国中央市にある『Just in Just』を経営理念に掲げているジャスティン株式会社です!
義理人情に厚い種田社長が経営されておられる会社です。
現在、工業用のパッキン・ガスケットを主軸に製造している会社です。
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それでは、また来週!