モグラたち 【詩】
訪日は無理そうだ
とパリのモグラ
鏡の中で
右から左へとぶ
今年は棟梁選挙がある
候補者が決まっていないんだ
と 出涸らしのお茶を淹れる
スタンフォードのモグラ
三月になると
体毛に変調が起きるのだ
太陽が大きくなったせいか
どいつこいつも気が変になる
とアラブのモグラ
…飛行機は飛ばないでしょう
…どこに飛んでいくかわからない
午後からは雨だ
と関東のモグラ
雨は本降りになりそうだ
とパリのモグラ
くり返される会話に
眠気が増していく今日この頃
今日は寝ていたいよ
と静岡のモグラ
静岡は関東ではないでしょう
とパリのモグラ
気取ってんじゃねえ
とアラブのモグラ
いっせいに左から右へ飛ぶ
予告もなしに南米のモグラが
ピストルを構え
鏡が割れた
パリのモグラの右肩から血が出ている
(暴力反対)
といいながら関東のモグラは
ちびちびとお茶を飲む