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マルゲリータ 【詩/現代詩】

見えない矢が
かたちのない速度が
光の束になって

(どきゅん どきゅん)

純正の イロガミである
マルゲリータ 君を
切り刻んで バラバラにして
空いちめんに

散らす 舞わす…

(つないでおいてくれよ)

夕べ
カフェーで見かけたのは
青く 赤く ひかる
マルゲリータ
丸く 四角く 三角の
おがクズのかおり
楕円のものには 焦点が合わない
ねえ マルゲリータ

(グッとくるね)

ちょいと デンジャラスな
ハイヒールを履き
マルゲリータの眼鏡が青い

喉があいてる
鼻がぬけてる
ロフトの向こうで
片眼にヤリを入れた
手が三本で 斧の刺さった側頭部
毛先から バッサリと
キューピー人形の膨らんだ部分が

(ドキドキするね はみ出してるね)

七月の雨と
三月のあぶくが混ざる
ヒヤシンスの氾濫 八角形の
観覧車が斜めに

(がしゃん ガシャガシャ)

扉をあける
天井をひらく
雨が真っ逆さまに
降っているみたい
都市の匂い
羽音がして 鱗粉を散らして
アンテナが倒れていく 楕円の丘
チェーンの向こう側にも
雨が降っているね
とてもよいね すめろぎな香りが
して 喉もとうちふるわせて
マルゲリータが来るね

(つかまえておけ それ)

ドキュンする ばばん
ドキュンする ばば

丸く四角く三角のもの

(ちゃめっ気たっぷりの)

茎が出ている
柔らかい芽が吹き出している

(マルゲリータが来るね)

少しばかり
変形した
マルゲリータの輪郭が

(たてよこにざわついて)

近づいている
伸びちぢみしながら
近づいている
太陽マーガリンの塊になって

(どきゅん どきゅん)

猟銃にからみつく
虎のあやしい瞳
見え隠れしている 森の
腰つきが バター風味だ

マルゲリ マルゲリ まるまる
マルゲリータ
ああ マルゲリータが来る

(たてよこに揺らぎながら)

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