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おかんのはなし~食堂かたつむりより~


以前も食堂かたつむりについて別の観点から感想を書かせていただいています。以下記事です。


今回は、食堂かたつむりのおかんと主人公に言及して記事を書いてみようと思う。

物語序盤、おかんは娘に愛情なんてない人なのかと思っていた。

しかし、突然恋人にすべてを持ち去られ無一文になった娘が実家に帰郷した時から、なんだかんだで愛情があることがわかる。

主人公は、この時点で声が出せなかったので
おかんは長い時間をかけて筆談し、娘と対話をした。
愛情がなければできないことのように思う。

そして馴染みの熊さんに、娘はいまごろ無花果の木にいるだろうから様子を見てきてくれないか…というようなことを言っていたりする。
このことからも娘のことをよく理解し、よく観察していることが分かる。

おかんは、初恋の相手を一途に想い処女を貫き通した。
ネオコンという愛人とも肉体関係はもっていない様子。
ん…?処女?なのに娘がいるってどういう矛盾?と思われた方。
ぜひ本書を読んでいただきたい。
ちなみにおかんは、主人公のことを水鉄砲ベイビーと言っている。
真相はお読みいただいてからのお楽しみ。

そんなおかんは、初恋の相手と再会。
しかし、ガンで余命数カ月ということが判明する。

この事実を告げられた主人公もまた、おかんを愛していたことが分かる。
その後、ショックと無気力感に苛まれてしまうのだから。
一緒に生活していく中で愛情に気が付き、また新たな愛情が芽生えたのかもしれないと考察する。

そんなおかんは初恋の相手と結婚することになり、その披露宴の料理は主人公が仕切ることとなった。
ガンで旅行に行くことが叶わないおかんを想ってせめて料理で世界一周気分を味わってもらいたいという娘の気持ちが形になった瞬間だった。

おかんは、娘の声を聞きたかったし、話したかったことが作中から伺える。
一方で娘の倫子についても、しっかり抱きしめてもらいたかったし、「ありがとう」と伝えたかった…という内容が記載されている。

おかんは、そんな思いを残したまま亡くなった。
残念ながら亡くなった人と話すことは叶わない。
私もその悔しさがよくわかる。

最近祖父を亡くした。あまりにも突然の出来事だった。
この経験から、生前祖父ともっと話しておけばよかった…もっといろいろ教わっておけばよかった…そう思うことが私自身最近よくあるから主人公の気持ちが刺さったように思う。

物語には、主人公にとっての守ってくれる心強い存在であり、尊敬しているふくろう爺というキャラクターが登場する。

ふくろう爺が届けてくれたおかんからの手紙。
この手紙を通じて、私自身もおかんを大好きになった。
そしてなにより、親子の愛を感じた。
感動する手紙なのでぜひ実際に本書を手に取ってお読みいただきたい。

その後、登場する野鳩はおかんだったに違いない。
料理をしなさい というメッセージを届けて、背中を押してくれたのだと信じている。
そして体の中に吸収されたエルメスとこのおかんの力が相まって、声が戻ったのではないかと思う。
再び倫子が動き始められたのは、おかんとエルメスのお陰だ。
やはりおかんは、娘を愛していたに違いない。そう私は信じている。


本書が気になった!という方はぜひお読みください。

次の記事では、エルメスについて・内容全体から感じたことをまとめる予定です。

お楽しみに。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。

【おまけ】

小川糸さんのおすすめ本のご紹介です。
こちらも気になる方は要チェックです!!


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