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わたしの短編集

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わたしの書いた短編小説を集めてみました。
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記事一覧

ショート 7 記号的な関係

ショート 7 記号的な関係

今日、さよならをした。

メッセージのたった2行で始まった関係を、
メッセージのたった1行で終わりにした。

元々近しい存在だった彼のことを、好きになるのに時間はかからなかった。
それは多分彼もそうだったのだろう。
ものの3ケ月ほどで告白をされた。

「ずっと前から好きでした。
 付き合ってください。」

メッセージで送られてきた、電子的で記号的な文字でさえも、その時の私にとっては胸高鳴る魅力的な

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ショート 6 いつかのわたしたちへ

ショート 6 いつかのわたしたちへ

お久しぶりです。
あなたに手紙を書くなんて、何年振りでしょうか。
懐かしく思えてきたので、ずーっと昔の私たちの出会いからお話ししますね。

約600キロ離れた雪国へ、出張でやってきた。
3ヶ月間の慣れない場所での仕事。
お客さんから喫茶店やバーで流して欲しい音楽を電話で受け付け、レコードを用意し流す。それが私の仕事でした。

1日に何百もの電話がくる。
今日も電話がなります。

「もしもし。」

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ショート 5 歩く君の俯く横顔

ショート 5 歩く君の俯く横顔

あの時、あの道を選ばなくてよかったと、安堵したことが僕にはある。

高校3年。卒業式も終わって、大学の入学式までの春休み。3年で同じクラスだったあいつに、ある女の子を紹介された。

あいつはいつも俺に、「おまえも彼女作れよ!!」と言ってきた。
「彼女作れよ」と言われても、好きな人も気になる人さえもいない僕にとって、そのセリフは左から右へ流れていくただの音でしかなかった。

そんなあいつと、遊んだあ

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ショート 4  ヴァンパイアの恋人みたいに

ショート 4 ヴァンパイアの恋人みたいに

●最近、なんだかずっと悲しい。
別に身内が亡くなったとか、仕事で失敗したとか、何か理由があるわけじゃないけど、
ここ最近、ずっと悲しい。

せっかくの休みの日もなんだか気分が上がらなくて、好きな映画も本も観たいと思わなくて。
無理矢理にでも気分を上げようと、お笑い番組を観たけど、訳もわからず泣いてしまった。号泣してしまった。

それでも、同棲中の彼に迷惑がかからないように、なるべく笑顔でいつも通り

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ショート 3 誇りある君へ

ショート 3 誇りある君へ

プロポーズをした。

約4年前、共通の知人からの紹介で出会った彼女にプロポーズをした。

「私がこういうプロポーズ、憧れてたって知ってたの?」
と目に涙を浮かべながら彼女は喜んでくれた。

こういうプロポーズ。
つまり、僕がしたプロポーズとは、行きつけの居酒屋の帰り道、毎回必ず寄る公園で、歩きながら手を繋ぎながら「結婚しよう」と言った。
そんなプロポーズ。

「まぁそんなとこかな」
なんてクールに

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ショート 2  アンラッキーガール

ショート 2 アンラッキーガール

バイトで怒られた。
しかも結構理不尽な理由だと思う。

飲食店でバイトをし始めて8ヶ月。だいぶ慣れてきたけれど、忙しい時はやっぱり余裕がなくなっちゃってミスをしてしまうこともある。
バイトメンバーは、学生が多く、歳も近いから、お互い励まし合ってはいるけれど。
1人、苦手な人がいる。
その人は、パートのおじさん。多分48歳くらい。その人、機嫌がいい時はいいけど、悪い時は八つ当たりされる。

今日は、

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ショート 1  日めくりカレンダー

ショート 1 日めくりカレンダー

〈あと3日〉
手作り日めくりカレンダーによると、
僕たちの記念日まで、あと3日。
記念日までの日付と、その日へのメッセージを書く。
学生の頃によくある、卒業までのカウントダウンをするカレンダーのようなものだ。

今日は、彼女の番。
3の数字の下には、彼女の字が並んでいる。

〈昨日は、あと4日もある!って感じだったのに、急にもう3日!って感じるね(笑)
今日は、私たちの好きな「アバウト・タイム」を

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