自然からの招待状
本日も研究の箸休め程度に。現実でも休日にとある絶景を求めて、身体を向かわせました。
兵庫県朝来市。数年前から「天空の城」と話題になるそこは竹田城跡です。
なぜ、ここまで有名になったのか。
それは、雲海を見ることができるからでしょう。9月から11月にかけてみることができる作:自然による絶景が、人々を引き寄せます。
自然なのに作という表現はどうなのかという問いはおいといて。
明け方の靄
11/3(金)。靄がかかる明け方、ライトに切り裂けれたその道をひた走る。その先にある不確かな確かを求めて…。
魅惑の雲
5時半ごろ、竹田城跡付近にある専用駐車場に到着しました。その時すでに100台超の車が停車。近隣駐車場から城跡までは安全な南登山道を使い徒歩約60分。安全とはいえ、きつくないとはかぎらない。勾配のきつい坂を登っていく、明け方の身体には少々かわいそうな目覚ましである。
ここで、救いとなるのが市の事業の一環である送迎バス。
ー徒歩15分圏内のバス停まで皆様をお運びします。ー
連休の初日、かつ雲海発生条件をすべてクリアしたまれにみる好条件の日。想像以上に集まった人たち。私たちはここで選択をせまられる。
日の出1時間前。バスへ並ぶ列が新大阪駅の551に並ぶ列の倍以上になったその時、係員さんが前に立ち、
「ここより後列の方たちは、おそらくバスに並んでいても日の出には間に合いません。」
選択を迫られた私たちは、次の瞬間歩み出す。
そう、明け方、まだ闇が優位の自然道へ。
危険をおかしてまで、躍動する身体は何を求めるのか。
自然からのいざないか。身体の渇望か。
絶景を求める挑戦的な身体はどこへ向かうのか。
いま、そこにある身体
思わぬ身体の躍動は、違和感を生み出す。
山道を登るおしゃれスニーカー。防寒対策をしてきたロングコート。
息が上がり、黙々と登り約30分。最後の階段を上がり、城内へ。
ついに、到達。無事、日の出にも間に合う。
すでに石垣にはあふれんばかりの人たちが、お城を守るように配置。
息を休めることを忘れ、顔を上げた瞬間、そこに広がる…
私たちは、自然の中に溶解していく。流れる雲海の上に立ち、光が迫るのを無抵抗のまま受け入れ、全身で浴びる。
そこに確かに自覚する、゛いま、ここにある身体の存在を。゛
影は伸び、上がった息は落ち着き、思い思いの世界に浸る。
自然は何か発信しているとは限らない。受け取るヒトに委ねられるという点で、主体はヒトなのかもしれない。
したがって、主体であるヒトが自然へと働きかけ、他者にあたる自然が現象を起こすとき、あたかもヒトへ還ってきたと受け取るのである。
ここに自然との相互性、溶解体験ともいうべきことが起こるのであろう。
雲散霧消
自然との対話は終盤に向かう。
写真という記録をしまい、いつか記憶に呼び起こす。
下山する身体は、思いのほか軽やか。
出発の駐車場に無事たどり着く。帰り支度をしながら、
「これはもう一回来てもいい」と友達がつぶやく。
どうやら自然からの招待状は有効期限がないようだ。
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