ここ一週間くらいの長い備忘録1
自宅にしばらくの別れを告げた。帰る日はまだ決めていなかったので、しばらくだ。化粧水など本当なら持っていきたい物も泣く泣く置いていく。極限まで物を減らして機内持ち込み手荷物の7kgに収めたリュックのみを背負い、電車に一時間ほど揺られて空港へ。旅人感。
飛行機で海を越える。通路側の席だったので実際に海は見えなかった。窓側の席で外の景色を見たいと強く思っていたのに、お手洗いなどに行きやすい通路側の方がいいかもなんて思うようになるのはいつからなのだろう。
到着した空港から目的地までは、まだ三時間ほどかかるらしい。地元民はあまり気にかけていない窓の外の景色を見ながら電車に揺られる。30分ほど過ぎた頃だろうか、だんだん人が増えてきて学校終わりの高校生が乗車してくる。あっ、方言。
薄紅色の美しい夕焼けに見惚れる私と仕事終わりでぐったりしたサラリーマン。そんな車内を出てバス停へと向かう。もうすっかり辺りは暗くなっている。
旅先のバスって意外と難しくないですか?バス停はここで合っているのか、この便で目的地までしっかり向かってくれるのか。始発は整理券を取らないシステムを学習しつつ、小銭を握りしめて闇の中バスに揺られる。
目的地まで2kmくらいのバス停で下車。距離的には全然歩けるので大丈夫と思っていたけれど、見ず知らずの街を夜歩くのは、暗いしここで合っているのか不安になる。そんな自分に追い打ちをかけるかのように現れた森道。トトロとか出てきそう。街灯もない中、ひとり心細く歩いた。
下り坂を下って分岐路に差し掛かったところで、集団で自転車移動していた高校生くらいだと見受けられる学生たちに出くわす。1人は空き缶を使って「ヴゥーン」というような音を出していて、そうやって遊ぶのかと興味深かった。向こうからすれば、1人でこんなところをリュックを背負って歩く私の方がよっぽど興味深かったかもしれないが。ほどなくして迎えの車と合流した。有難い。
会場に到着。木々に囲まれた静かな環境。
ここが二日後には、心躍る街になる。
暗くてなかなか誰が誰だか分かりにくかったが、手探りに過去zoomで顔を合わせたメンバーを見つけて挨拶し合った。彼らがこの街をつくる仲間。僕は人間関係において特に始めは様子を伺うタイプなので若干の緊張感がありながら今日は早めに眠りにつく。本番は語りが盛り上がって夜を超えることは容易に予測できるから。
次の日の朝は心地よい晴天に恵まれていた。他の人たちはまだ眠りについていたため静かだった。空気は少しひんやりとしているなかで、温かみを与えてくれる日光のシャワーは「生きている」をより感じさせてくれた。空気が澄んでいる。伸びをしたり軽く体を動かしながら、草木が揺れる風景を眺めて自身も生命の1つであることを思った。
まわりを見渡せばテントや建てかけのステージがポツンとある。まだまだこれから。そうしているうちに何人かが起きてきた。僕の所属するグループの活動まではまだ時間があったので、ストリングライトを木に引っ掛ける作業を手伝った。僕が脚立を支え、もう1人が脚立に上ってストリングライトをかけて移動することを繰り返していく。このような苦労を通して夜に温かな光が灯るのだと、前日この作業を進めていた他メンバーへ感謝しようと思った。僕の生活の中にこれまで登場してきたことのなかったストリングライトとの距離が縮まった気がする。
その後は僕の所属するチームの空間づくり。雑巾がけに始まり、重たい会議机や埃をかぶっていた椅子を木造部屋の二階に運び入れたりした。変に力が入って肩らへんをつったりもしてしまった。世の中の力仕事に敬礼。
どのように空間を作っていくかの計画はあったものの、やはりトラブルはつきものというかで必要材料が足りなかったり、マットの高さが足りなかったりした。そんな時に僕は決断できない・方向を示してほしいタイプなので(自分だけならまだしも、それが他の人に影響するという点で責任を負うのが怖いということが理由かな?)、逆に自分でどうにか判断して動けよなんて思われていないか不安だったりもしていました。
最終的には、他にも光の入り具合を見てからでないと作業を進められないという部分もあり、今日はもうあまり出来ることが無いという感じになった。
晩ご飯はBBQ。お皿を持ってお米をよそう列に並んでいたら、1人前のお友達がよそってくれた。それもどどん!と。幸せじゃ。
食べる。語る。食べる。語る。語る。語る。語る。あっ、食べる。
と話は盛り上がるのです。そういう環境、タイミング。こういう場で自分は食べてばかりで、焼き手に回った方がいいかなと思いつつ回れないのがあるある。こういう場で焼き手を担当してくれるみなさんに感謝。
イベント当日の朝。午前中は最終追い込み。何としてでも空間を完成させる。今日も僕は比較的早起きで、早起き組と少しお話した後、持ち場へ。
タイムリミットによる「やるしかねぇ」という意識と増員のおかげもあってか昨日までの不安を打ち消すかのように空間が出来上がっていく。最後の仕上げとして段ボールによる補強にみんなで協力して取り組んだ。
この時だったか、前日だったような気もするが、僕があまりリアクション大きくなく静かに驚く人であることに対して、そうなりたいと言った人がいて驚いた。僕はこれまで自身を否定してきた時間の方が長かったから、「自分を否定する必要はない、むしろそうであるから良い」とも思えるのかもしれないというのはシンプルに発見であった。
そうしているうちに空間が完成。
ここは「Nigebar」。1人になりたいけど独りぼっちにはなりたくない、そんな人のための居場所。こんな場所を僕も求めている。今回こうして「Nigebar」を形にすることに携われたのは嬉しかった。
お昼を過ぎて、参加者一同で広場に集まる。はじめましての人、顔は見たことあるけれどまだ話したことのない人。いよいよ、今から「心躍る街」が始まるのだ。
アイスブレイク。まだちょっとぎこちないハイタッチ。
それぞれが好きな物について語る。僕は柄シャツについて。
でもまた改めて考えたい、「私は何が好きですか?」
夕方-Magical Dinner-
物語の中でしか見たことないようなご馳走。
みんなで食卓を囲む時間は微笑ましい。
心を込めて作られたご飯を味わう。幸せだ。
Re:member 森の中の音楽祭。
楽器の音色、歌声が木々と私たちの心を躍らせる。
スモークが形を留めずに空を浮遊し、淡い色の光が雲を染める。
ステージの端ひとり、音楽が鳴りやんでもなお確かに存在する余韻を感じた。
「Nigebar」の“シフト”と言ってしまうのはなんとなく業務的すぎるが、自分がその場にいる時間になった。しかし、音楽ステージ終わりのこともあり、あまり人は来なかったので気楽に本を読みながら交代の時間を待った。
『チ。-地球の運動について-』も面白いぞ。
そこからは外を徘徊。みんなそれぞれ絵を描いていたり、ボードゲームをしていたり、屋外スクリーンに映る映画を見ていたり。そんななかで偶然にも僕は引き寄せられるようにコーヒースタンドにたどり着いた。
色々な人が流動していくこの場。変わっていく話題。
ストリングライトの明かりとあたりの闇の絶妙な均衡。
お湯が沸くのを待つ時間。
ゆったりと時間をかけて入れるドリップコーヒー。
何かに追われることもない豊かな時間。
ここにいていい。いたいと思う。そう思わせる何か。
時間はあっという間に過ぎて、3-4時くらいに眠ることになった。
本当はもう少し眠っていたかったが、いつもの通り8時くらいには目が覚めてしまったので、二度寝できなさそうなことを確認して起床。体内時計がそうなっているのかなど思いながら朝の身支度。たまたま起きていたメンバーにドライヤーを借りれたのは幸運であった。ありがとう。
ブランチの時間。カレーだ。彩も豊かで健康的。いつもは中辛だが今日は気分を変えて甘口を選んだ。箸袋の色が同色の近くにいた人たちと一緒に食べる。美味しい、幸せ過ぎる。このような食体験を通して幸せな時間を増やしたいという思いを持って今回の食事に携わっている方がいることを知った。おかげさまで私は今幸せです。
同時に、僕が持つ願いは何だろうと思った。
お昼のコンテンツまでの空き時間、とあるグループと立ち話をした。どういう流れか即席の三人で漫才をするみたいな遊びをすることになった。関西の洗礼?重要なのはそれがどうだったとかじゃなくて、やっぱりそういうのは苦手だと思ったこと。でももう少し笑いのセンスは磨かないと。今の僕には自分が何を面白いと思うのかがよくわかっていないんじゃない?やっぱり否定的な評価を怖がっている?
まあ、自分について分からないことなんて他にも沢山だ。それは本当に分からないこともあれば、きっとそもそも考える時間を取れていないこともあるだろう。お昼のコンテンツは、そんな僕にも嬉しい内省ワーク。
「心のかたち 未来のかたち」私は何を大切に生きているのか、時間があったら何がしたいか、過去印象に残っている出来事、どんな時に幸せを感じるかという問いから自分にとって大切な考え方とこれからどう生きていきたいかを考えた。
優しさ、自然体、調和、豊かさはキーワードになりそうだった。
僕は主にこのようなものをイメージしながら同じグループになった仲間と、一枚の絵を描いた。始めは筆で書いていたけれど、途中から絵の具を手に塗って手形をつけたり、そのまま指で線を引いたりした。童心にかえったようでなんだひたすら楽しかった。僕らの思いの乗った絵になった。
夜は星空のレストラン。
生地をまるく広げて、自分で具材を乗せてピザ窯でオリジナルのピザを焼いた。さすがにテンション上がる体験。アルミホイルがピザのそこに張り付きまくってしまったが味はめちゃ美味しかった。それぞれが焼いたピザを味見し合うのも幸せだった。
それに加えて超絶美味しいハンバーガーもあったり、その近くにはオープンマイクステージがあって他の人の表現に触れることが出来たりしたナイス空間。僕も何かを表現したい気持ちがありつつ、ステージとなるとうーんという状態。最初はみんなゼロからなんだから、とにかく好きとか楽しいと思う表現を気長に続けていくのがいいんだろうなぁ。何か一歩を今回僕は進められたの?
お腹も満たされたところで、音楽ライブ。
Re:play 真夜中の音楽祭。
準備の時に少し見たことのあった部屋はいつの間にか青いライトを基調としたライブ会場へと変身していた。そこで音が空間を伝う。表現を会場が温かく応援して見守る瞬間。カッコよさをバチバチ放っている瞬間。締めの主催者の言葉には心動かされるものがあったり、残りの時間を余すことなく嚙み締めようと思った。
その言葉通り、というのは結果論だが、僕らは日の出を見届けるまで語り明かした。コーヒーが功労者であることは言うまでもない。そんなに何を話すのか、と言われても様々だ。他愛もない話、創造的想像、今とこれからの話など。考えすぎないというか、結果はついてくるよねとどっしり構えているくらいのメンタリティが欲しいと思った。
仮眠をとり、目覚めてからは荷物をまとめ始める。今日が最終日だ。皆昨日は遅かったようで、ブランチの集合時間は当初よりも遅くなっていた。みんな徐々に広場に集まってくる。ちょっと小雨が通り過ぎたのでこのまま外にいられるか心配になったがなんとかなった。集まった僕らを待っていたのは、種類豊富なおにぎりと二種類の豚汁。臆病な表現者をそっと勇気づけてくれるような「満たされブランチ」だ。それぞれ選んだおにぎりをレジャーシートの上で仲間たちとほおばる。赤味噌の豚汁を味わい、おかわりで合わせ味噌の豚汁を味わう。沁みる…
心躍る街はもうすぐ終わる。
その現実をゆっくりと伝えるように、休憩が終わり、集合写真を撮り、看板や昨日僕たちが描いた絵を飲み込む炎は大きくなっていく。
心躍る街で過ごした証は形を変えた。
それぞれが自分の日常へと持ち帰っていく。
しばらくここでゆっくりしていたくなった僕は、横並びで、大地を背中に感じながら、目を閉じた。
こんなにも羽を伸ばして自然体でいることができて、
また会いたい人たちに出会うことができて、
いつもは目を向けたり感じることの出来ていなかった感覚に心を躍らせることができた。
それを覚えておきたくてひたすら書いていたら、こんなに長くなっちゃうくらいには忘れられない時間になったよってお話でした。
ありがとう