本 ソロモンの偽証
宮部みゆきさんの、
ソロモンの偽証、読んでみました。
でも、私は名もなき毒とかの方が好きですね。
まだそこまで面白いとは言い難いのですが、まだ一巻なのでこれから面白くなるのかも知れません。
ただ読んでいて、実は、
おお!と思った箇所がありました。
まずそもそもこの物語は、
ある学校で起きた事件を中心に発展します。
少しネタバレしますと、
ある男の子が学校で亡くなっているのが発見されます。
彼は、自殺として処理されるのですが。
てんてんてん、、、と続きます。
この作中に中心的な少女、
涼子という女の子が登場します。
この涼子ちゃん、
すごく多感な少女でございます。
クラスメイトの自殺で、
クラスの女子たちの反応が肩寄せあって泣き崩れる、みたいなお決まりのパターン、
あるじゃないですか。
それが受け入れられないタイプの子でして。
その心情の移り変わりが実を言えば、私の少女時代そのもの。そっくりそのまま乗り移ったかのように一致。あまりにもそっくりでびっくりしてしました。
例えばこんな感じ。
女子生徒がまた泣き出す。
咄嗟に涼子は振り返り、うるさい、黙ってなさいと怒鳴りつけたくなった。柏木のことなんか気にもしてなかったくせして、勝手に気分出して泣いてんじゃないわよ!
涼子の目は乾いていた。
級友の死にショックは受けたけれど、涙は出なかった。泣かないあたしは心が冷たいのだろうかと、心の隅で考えた。
そうだ。彼ならきっと、まりこの振る舞いに苛立つ。もちろん、まりこだけじゃない。
まりこに代表される偽善だ。
気分だけの悲しみだ。
彼はそれを軽蔑するだろう。
ほとんど知らず、興味もなかった級友が、ただ死んだと言うだけで突然神聖なものになる。
突然、皆の心を集める。
皆が共通の罪悪感を背負う。
まさに私の子供時代もこんな有様でした。
特別な時だけ機敏に反応して場の空気に酔いしれてくる。可愛い自分に浸ってくる。互いに励ましあったり肩を抱き合ったり。そういう幼さ丸出しの背伸びをした子供の、少女じみた振る舞いを見ると嫌悪感を抱かずにはいられませんでした。
思春期特有の幼さと言うか。
それがもうこの涼子ちゃんのように大嫌いでした。
でもそれが自分の友達たちに向けての感情だったので、私は二面性があってすごく冷めていて友達を軽蔑する冷たい人間だ、最低だ、と凄く自分を責めたものです。でもどうしても自分が間違ってるとは思えなかった。だからその狭間でとても苦しみました。とても泣いた記憶があります。
当然、同じ気持ちを共有できる友達はおらず、本当は自分はとても孤独で寂しい人間だと感じていました。
そんなこんなで少女時代、
それは真剣に悩んだものでした。
今回、ソロモンの偽証を読んで、その時の自分の気持ちを代弁してくれている感じがして、凄いなあ、とただただ感心。
ですから、この涼子ちゃんを見た時、
もしかして宮部みゆきさん自身がこういう感じの少女時代を過ごされたのかな、とか。
色々考えてしまいました。
私だけじゃなかったんだと思ってホッとしたというか。似たような子はいるところにはいるもんなんだなって。
子供が女になろうとするその境界線のお年頃、
一丁前に泣くことでうっとりと女の部分を表現してくるわけです。ベタで白々しく、とりつく島もなく、私も私もと雪崩れ込む忙しなさ。しかも自覚がないだけに可愛くてタチが悪いというか。そのズレが気持ち悪くてうんざりして付き合いきれない感じ。
そこまで言うか、って感じですが、
成長して今でこそはっきり言えますが、
当時の自分には得体の知れないまるでお化けのようで、その淡い感覚の扱いに困りました。
今振り返るとデリケートでセンシティブだったんだなと。ちょっと大人というか。正義感がとても強かったんだと思うのです。人によってはこれを正義感と受け止めることはできないかも知れませんが、私はこれは正義感だと感じています。
辛かったのは、それでいてそういう一面は他の友達たちには絶対に見せないわけです。見せてもわからってもらえないから。だって自分でもうまく説明できないわけですからね。
今思うと凄く可哀想だなと感じます。
あの頃の私を抱きしめてあげたい気分。
私も、こんな子達と一緒にされてたまるかと、
涼子ちゃんと同じで反発してくるタイプでしたがそれでいてみんなと仲も良く友達も多かったので、その辺も涼子ちゃんと同じでした。
懐かしいですね。
でもあの頃の心情をここまで的確に表現出来る人がいるのですから、さすがは宮部みゆきさんだと思いました。
宮部みゆきさんは「名もなき毒」もそうですが、凄く細かい人間の影の部分と言うか、小さ過ぎて誰も気付かず通り過ぎてしまうようなヒエラルキーや捉えきれない二面性を、うまく捉えて緻密に描かれる気がします。
だから、宮部さんの著書は、エピソードを独自に掘り下げていくととても勉強になる気がします。
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