お客様は神様?②
①「魔法使い」と「モンスターカスタマー」は同じ人
「魔法使い」とは「何とかしろ」「何とかするのがお前の仕事だ」と部下に対して思っている管理職のたとえですが、この「魔法使い」たちが労働者を疲弊させています。
そして実は「モンスターカスタマー」と同じ思考を持っています。
それは「自分がサービスを提供される側だから、相手が言うことを聞いて当然」だという思考で、気付かずに自分のことを「神様」だと思っているということです。
この場合のサービスの提供者は「部下」であり、「現場の人たち」になるので、この人たちは「魔法使い」とモンスターカスタマーから挟み撃ちにされているから疲弊するのです。
②現場が疲弊していく流れ
出世した「魔法使い」は、さらに出世するために同じ行動をさらに強化します。
部下に「何とかさせ」れば自分の成績が上がるし、楽で万能感も味わえるからです。
「値上げをするとお客様が来てくれなくなるから、安いままで『なんとかしろ』」
「人件費が増えると利益が減るから、増やさないように『なんとかしろ』」
「それでもサービス品質は落とさないように『なんとかしろ』」
「正社員が増えると人件費が増えるから、パート・アルバイトだけで『なんとかしろ』」
「トラブルが起こっても、クレームにならないように『なんとかしろ』」
そしてより無茶をさせる「魔法使い」ほど出世を続け、最終的に経営層までたどり着いてしまい、「今年度の目標はとにかく前年度の5%アップ。景気は悪いけど『なんとかしろ』」という大「魔法使い」になって、社員や現場の人たちを疲弊させてしまうのです。
③お客様は神様じゃないけれど…
こうやって疲弊した日本の現場を救うために、「お客様は神様だという考えが間違えだ!」という論調が増えてきているのだと思います。
「外国ではお客に対して日本みたいな扱いはしない」
「安くしているのに、丁寧に対応しすぎだ!」
といった話が増えて来ています。
確かにそういう面もあると思いますが、私はそれだけではないと思っています。
お客様は神様ではありませんが最も大事な存在です。
お客様を大事にしたり、良い対応をすること自体、何も悪いことはありません。
ただ同時に、そのお客様にサービスを提供してくれる従業員も同じくらい大事な存在なのに、その労力に報いない「魔法使い」と「モンスターカスタマー」が問題なだけです。
④「大事なお客様を幸せにする従業員」は大事!
日本の商習慣である他国より「お客様を大事にする」という点を、私は非常に良いところだと思っています。
問題はお客様と同じように「従業員(現場)も大事」にしていないことだと思います。
ふさわしい対価をいただけない、従業員を不幸にする人は、そもそも神様どころかお客様ですらありません。
私たちを幸せにしてくれるお客様だから神様扱いをするのです。
そう思うと、私たちを幸せにしてくれるお客様をもてなしてくれ、一緒に幸せになろうとしてくれる従業員は、お客様と同じくらい大事です。
だから日本には「三方よし」という言葉が元から存在するのだと思います。
「お客様は神様じゃない」という意見の表面だけを見て、もともとあった日本の良いところを失わないようにしたいと思います。