助走の場・雲
ちょっと前のセシオネット親の会でのことです。 たまたま子供が不登校まっただ中の何年か前、一緒に泣いたり支えあったりしながら今日まで来たという方々が何人か集まってくださいました。 すでにその子らも20代後半になり落ち着いて社会生活を送っています。現在の状態は様々。結婚した子、赤ちゃんが生まれた子、介護福祉士への道を歩んでいる子、施設で働いている子・・・・。 その当時は、まさかこんな風に懐かしく当時を思い返したり笑ったりすることができるなんて思いもつかなかったことでしょう。
先日、ある不登校経験の高校生の話を聴く機会がありました。彼は不登校の時の経験を、得意のドリップコーヒーを楽しんでもらいながら話すという活動をしています。 不登校をした時の理由や気持ちはなかなか言語化できないものです。なのに、親や周囲は理由が知りたくて「どうして?」「なんで?」と質問してしまいます。 しかし渦中にいる子たちはほとんどそれを言語化できませんし、もし話したとしても本質からはちょっとずれた回答しかしてこないことが多いようです。 その理由などは本人にもよくわかり
男の子にとって父親はある時期とても大切な存在だと私は思っています。 それは、ロールモデルとして、または反面教師として。 そして何よりも乗り越える存在として。 男の子が自分の父親を客観視することは彼らの成長にとって大切な作業です。 そう!とても大切な、そしていつかは通る道なのではないでしょうか。 男の子は自分の成長とともに父親の見方が変わってきます。 今までは絶対的な、保護しても らう存在、大きな存在だった父親。 それが実はどこにでもいるような「普通の」人である
不登校の子たち、コミュニケーションに関しては大きく二つに分かれます。 あまり言葉で伝えてこない子と、とにかくよくしゃべる子です。 おおむね、よくしゃべる子の方が予後(その後の回復状況)が良いような気がします。 話し ながら徐々に自分の中で考えやイメージがまとまっていくのでしょうね。 とにかく母親をつかまえて何時間も話してくるミツオ君。 仕事で疲れているお母さんが眠そうな顔をちょっとでも見せると「聞いてないんでしょ!」と 攻め立ててくるのだそうです。 彼は、有
近年、コロナ禍の影響もあり子どもの自殺が増加傾向にあります。 2022 年 1 年間で自殺した小中学生や高校生は暫定値で 514人となり、初めて 500 人を超え て過去最多になったそうです。 経済的・社会的に多くのご家庭が疲弊してくると、弱い立場の子どもたちがさらに大きなス トレスにさらされてしまうのですね。 特に「学校が安全・安心な場でない」と感じている子どもたちがコロナ以後ますます増えて いるように感じます。 ここで数字をあげましたが、この数の中の一人一人
先日の親の会で、ある参加者の方が 「『普通』ってむずかしいですよね。」とおっしゃってい ました。 その時は「そうですよね。」と流していたのですが、実はずっと心に引っかかっています。 「普通」? この親御さんは「平均的・一般的とか 一般に・・・とか」世間で大多数がやっ ていること、大多数が違和感なく当たり前と思っていることを指しておっしゃっていたのでし ょう。 災害の多い島国でありムラ社会であった日本では、古くから「調和が重視され」、「はみ出さず」、 「目立たず」、「人と
子どもは親が自分にちゃんと向き合って話をしているのか、それともそうでないのか。 敏感に感じ取っているようです。 特に不登校など、問題を抱えている子たちはなおさら敏感 に反応してしまいます。 例えば、先生が家に来たり電話をしてきたとき、出たがらない子に「先生に悪いから出なさ い。」とか。朝、友達が迎えに来たとき、「待たせちゃ悪いから」と行かせようとすったもんだ したり。 過去の自分を含めて、そんな場面が少なからずあったと思い当たります。 自分の気持ちに沿ってくれず、世間
このところよく登場してくれるタカシ君、働き始めて早3か月。 初めての給料が出たときには、親や世話になった方にお礼の品を送ったそうです。 今回はその時のお話です。 彼はお母さんには感謝の気持ちとしてお花を送りました。 そこで花屋の人に、「母親に初めての給料で花を送りたい。どんな花がいいですか。自分は今 までずっと引きこもっていたけど、働いて初めての給料だから。」と話したんだそうです。 それを頼んだお花屋さん、彼は知らなかったようですが実はママ友だったんだそうです。
前回お伝えした タカシ君のその後です。 まさかまさかの就職をして 2023 年の年初めから働き出しています。 タカシ君は寝たきりのおじいさんの介護も終わり、猫を飼い始めました。 最近は電話でその 飼い方の質問をしてくれるようになっていました。 おとなしい彼としてはこれも喜ばしいこと ではあったのですが・・・。 このごろちょっと時間を持て余している様子も見られ、「それなら宅建(宅地建物取引主任 者・不動産の資格です)の勉強でもしてみたら。」と私は軽い気持ちで提案してみ
新型コロナの影響でずっと会えなかった 20代のタカシ君と2年ぶりに会って話す事がで きました。 繊細な彼は中学でつまずき、その後フリースペースに来て人と接する機会も増えました。 し かし、大学受験でまた外に出にくくなり、今に至ります。 それまで外に出るのが難しい彼は、一念発起して内職を始め、1年以上。 彼の丁寧な仕事は とても評価が高かったようです。しかしとにかく単価の安い仕事。1年やって、繁忙期の責任 を全うしてやめたそうです。そして次の段階として「自宅でできて収
NPO 法人助走の場・雲では、不登校支援の他に無料学習支援を行っています。 今回もまたその個別の無料学習支援のボランティア学生の奮闘のお話です。 2年前にミャンマーから来たリリーさん。中学2年生の女の子です。 お父さんは以前から日本に来ていましたが、2年前に家族を日本に呼び寄せたようです。 今ではお父さんより日本語が上手で、漢字などもかなり読める努力家です。 ところで、彼女とご家族が一番困ったのが、なんと夏休みの宿題の「読書感想文」! これが私たちの最初のタスク
NPO 法人助走の場・雲では、不登校支援の他に個別で無料学習支援を行っています。 今回はその個別の無料学習支援のボランティア学生の奮闘のお話です。 ミキちゃんは IQ130以上の小学校入学前の女の子。 知識欲が旺盛すぎてシングルのお母さまは疲弊しており、SOS を出してきました。 中高生を想定しての学習支援だったので当初は「お断りしようか。」という話も出たのですが、 お母さまの様子を目の当たりにして「やってみよう。」ということになりました。 最初は普通の
フリースペース雲では「雑談」を大事にしています。 この「雑談」ができる場というのは、緊張せずにいられる場ということでもあると思いま す。 とりとめのない話の中からお互いの立場を知ったり、自分でも気づかなかったことが意識 されたりするのです。 ある日のフリースペースでの雑談の様子です。 話の流れから、彼ら若者たちの5歳ぐらいのころの話が出ました。 キヨシ君は 「僕はいつも寂しくて泣いていた。」「お母さんも泣いてたから僕が守らなきゃと思ったんだ。」 今現在保育に興味が
フリースペース雲では主に早稲田大学を中心とした学生スタッフと不登校の子たちの間で生まれる「ななめの関係」を大事に活動しています。 縦でも横でもない、ちょっと年上の学生たちとのいわば「ななめの関係」は大きな効果を発揮します。 不登校の子たちにとって社会の中の人間関係はとてもむずかしいものなのです。 同学年の子たちとの「横の関係」は、不登校の子にとってはきついものがあり、乗り越える最後のハードルとなることも多いです。 彼らは学校に通えない自分の未来も見えず、「
先日、不登校引きこもりの親の会、セシオネット親の会※1に以前参加されていたセイジ君 の親御さんからお手紙をいただきました。 親の会に参加なさっていたころのことを思い出してのお手紙でした。 現在は大学を卒業して地方で働いているというセイジ君。中学の野球部の顧問の指導で傷つ き、学校から遠ざかってしまっていました。 親御さんは参加の度に暗い顔で「先が見えない。」とおっしゃっていました。でも、その度に 先輩の親御さんに「いつまでも続くものじゃないですよ。」「お母さんが明る
セシオネット親の会※1で出会った方々の事は忘れることはできません。 この会は杉並区の不登校相談会から発展した不登校の親の会です。 この会とはかれこれ15年以上のお付き合い。コロナの緊急事態宣言下の自粛期間を除き、毎月一回開かれてきました。 そこで出会った「不登校」は一つとして同じものがありません。一人一人状況も子どもの様子も勿論違います。 わが子の状況や困りごとを話すと、少し先を行くお親御さんから「そうそう、そういうこともありまし