息子にとっての父親は
男の子にとって父親はある時期とても大切な存在だと私は思っています。
それは、ロールモデルとして、または反面教師として。
そして何よりも乗り越える存在として。
男の子が自分の父親を客観視することは彼らの成長にとって大切な作業です。
そう!とても大切な、そしていつかは通る道なのではないでしょうか。
男の子は自分の成長とともに父親の見方が変わってきます。
今までは絶対的な、保護しても らう存在、大きな存在だった父親。
それが実はどこにでもいるような「普通の」人であること がわかってくるのでしょう。間違ったり、迷ったり、悩んだりする、自分と同じ小さな存在で あることに気づく日が来るのでしょう。 それに気づくことはショックであったり、また戸惑いであったりもするようです。
以前出会った高3生のアキラ君は 「中学のころから父親とは取っ組み合いの喧嘩をしてきた。だけど最近ある時自分が掴んだ父 親の肩が『あれっ!』と思うほど弱々しくて小さかったんだ。それからはあまり手を出す気が しなくなった。」と言っていたのが印象的でした。
彼はこんなことから、一つ成長していった気がしています。
先日話した大学生のテツヤ君
「20歳ぐらいの男子って父親のことどう思ってんのかな?」ときいてきました。
中学からフリースペース※1を利用していた20歳の大学生です。
彼は小さい頃に親が離婚して母親と二人で生活してきました。
父親とはほんの時々電話で話す ぐらい。
ところが今回父親と話していてどうしても怒りが収まらなかったというのです。
父親が愚痴 をこぼしたり「お前には悪かった」と言ってきたのに切れてしまったようです。
「自分は謝ってほしくなんかない。愚痴るくらいならもっと何とかしてよ。あんたにも生き ていて幸せだって思ってほしいんだよ。」と言ったそうです。
「父親というのはもっと大きいと思っていたのにすごくちっぽけに見えた。」とのこと。
後味が悪くて、そして自分の感情を整理できなくて私に話してきたのでしょう。
しかし、こうして父親に感情をぶつけたことは良かったと私は思っています。今まで長い間一緒にいないからこそできなかったことです。
ずっと自分の中にたまっていた感情を吐き出す ことができたのかもしれないのです。
中学のころから見ているテツヤ君。彼の戸惑いとは別に、「ずいぶん大人になってきた。」と 私は感じたものでした。
「そう思ったのはテツヤ君が大人になってきた証拠だよ。」と話しまし たがどこまで腑に落ちたことか。
徐々に彼も大人の階段を上っていくのでしょう。 そうしてもっと成長して様々な体験をした後に、今度は「親父も大変だったんだな。」「この点 は 尊敬できるな。」とか「ここは 見習いたいな。」もしくは「こんなことは 自分はしない ようにしよう。」なんていう気持ちが生まれてくるのでしょうね。
こうして大人になっていくのでしょう。
これからが楽しみです。
※1フリースペース
フリースペース雲 WAVOC(早稲田大学平山郁夫ボランティアセンター)のボランティア学生中心のフリースペース。現在は日曜午後開催
(文中ではプライバシー保護の観点から仮名とし、内容も多少変えてあります)