『タクシー・ドライバー』
今日8月17日はアメリカの俳優、ロバート・デニーロの誕生日です
毎年彼の誕生日に彼の映画を観ている訳ではありませんが、今年はこの日が土曜日で、しかも東京は38℃も気温があって外に出る気にもなれませんので映画を観ました。
『タクシー・ドライバー』
私の人生を変えた映画と言っても過言ではありません。この映画のせいで、私の人生はむちゃくちゃになりました。
むちゃくちゃ楽しいものにです。
どんなふうに楽しかったかは説明しづらいので、それに関してはここでは述べるつもりはありません。映画について語ります。
この映画を初めて観たのは30年以上も前。それから何回観ただろう。ちゃんと数えたことはないので分かりませんが、それこそ何回も観ました。
どんなシーンがあり、どんなことが語られ、どのように物語が展開するかはだいたい頭に入ってます。
そんな私でも、観る度に新しい発見がありますから、本当に映画ってやめられませんね。
最大の謎は、これは初めて観た時からずっと謎で、観る度にそれなりの答えを見つけ出すことは見つけ出すのですが、どこかで納得していないのでしょうね、また次に観る時に改めて考えてしまうものです。
なぜ、トラビスは初デートで彼女をポルノ映画に誘うのか?
単純にネジが一つ緩んでる奴ではないですよね?彼は。とても理性的で、潔癖なところもある。常識も持ってる。
その彼がおよそ成功する見込みのない賭けに出る訳です。彼女がポルノ映画でのデートを喜ぶとは思えません。トラビスだって思ってなかったはずです。では何を求めていたのか?
よしんば、彼女がポルノ映画を受け入れたとしたら、それはそれでトラビスは幻滅したでしょう。どっちにしろ、あの初デートは破綻するハメにあった訳です。
ということは、無意識で彼は、初デートを台無しにして、深く傷付きたかったということになります。
嫌われるために、あのデートをセッティングしたのです。
だから、彼女が怒って帰ってしまったのも、深層心理では目的が達成されたことにほくそ笑んでいるのだと思われます。
でも後日、血相を変えて彼女の職場に乗り込んでいきます。そして、彼女も、彼女の仲間までも口汚く罵りますね。
その時のトラビスが、今日はとても哀しく、淋しく、孤独に見えました。今まではここまで絶望を感じることはなかったので、これが今回の鑑賞での新発見です。
この哀しみを彼女にも理解してほしかったのでしょうね。かなり遠回しな手法ではありますが、彼女と今後正直に付き合っていくために、トラビスにとっては必要なプロセスだったのでしょう。
この事件を機に、彼は一気に自分のなすべき事へ、ひたすら邁進していきますね。映画の中でトラビスも言っていますが、「今までになかったほど」に。
これが欲しかったのかな?まっしぐらに進める目標が。今までの人生にはなかったのでしょう、脇目も振らず猪突猛進できる何かが。
もしくは、ベトナムでなくしてしまったのか。
弱い自分と強い自分。正しい自分と間違った自分。
人間なんて二面性あって当たり前なのに、それを受け入れることができなかった。揺れる自分を許せなかった。
最後にピストルに弾が残っておらず、自分の喉に銃弾を撃ち込むことができなかったトラビスは、傷が癒えた後、そのことに気づけたのか?そんな自分を許せる人間になったのか?
トラビス自身がもし、それ以前と変わらないまま、また元のタクシー・ドライバーに戻ったのだとしたら、これ程のホラーはありません。