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ハラスメントに「言い返す」力〜専門家の本で検証してみた〜その2
前回からの続きです。
それではさっそく、実例をもとに検証していきましょう。
わかりやすくするために、次のような設定で話を進めてみたいと思います。
ハルさんは主婦パート。衣料品店を辞め、近くのスーパーで働くことになりました。
同じ時間帯で働く仲間は2人。
すでに長く働いている先輩主婦のフジミさんとカリタさん。
上司は30代男性店長のオキオさんと若い20代の社員のコトコさん。
店長がいない時には、コトコさんが管理代行者になります。
エピソード1
働き始めてすぐ、ハルさんは先輩パートのフジミさんにレジを教わることになりました。
先輩フジミ
「レジの経験はあるの?」
ハル
「はい、前の仕事でもレジをやってたんで」
そのまま1時間ほどレジ操作を習い、経験もあるのでほぼ問題なしと判断したハルさん。隣にずっとついている先輩フジミさんが通りかかった先輩カリタさんに「店長の指示なんだけど、自分の仕事ができなくて」と文句を言っているのを聞き、思わず気を遣ってしまいました。
ハル
「もし、他に仕事があったらそちらを優先してもらっていいですよ。一人でも大丈夫そうなんで😊」
遠慮がちに言ったつもりが、二人は何やらヒソヒソ話をすると、ふいにどこかへ行ってしまいました。
その後、しばらくしてやってきたのは社員のコトコさん。どういうわけかコトコさんは酷く怒っていて、怖い顔で睨みつけてきます。
社員コトコ
「一人でいいってどういうことですか?😡一人で何でもできるんですか?」
ハル
「え?😨」
社員コトコ
「教わらなくてもできるから必要ないって、それって人にものを教わる態度じゃありませんよね、すごく失礼じゃないですか?🤬」
ハルさんは突然の出来事にすっかりパニックになってしまいました。😱
一体どうしてこんな怖い顔で攻撃されるのか、なぜフジミさんではなくコトコさんが怒っているのか。しかも、どうしてそこまで一方的に責められるのか、その理由が全くわかりません。
ハルさんの言い分はこうです。
レジは経験があるので、ずっと横についていなくても大丈夫という意味だったのに……
思わず先輩フジミさんの方を見ると、彼女はコトコさんから少し離れた所に立って顔を背けています。
(え、何がどうなっているの?どうして当事者ではない人が怒ってるの?)
いきなり睨みつけられ、自分の意図とは違った解釈で責められ、ハルさんはすっかりショック状態に陥ってしまいました。🥶その時、頭の中に浮かんだことは、
(今すぐここから逃げ出したい……)
その後ハルさんは謝罪し、何とか許されましたが、心にはモヤモヤが残ったまま。そんな彼女に先輩フジミさんが優しく語りかけてきました。
「わかってくれたのなら大丈夫。後は私がフォローするから。今までの経験は忘れて、ここのやり方を一つ一つ覚えて行けばいいじゃない」
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ここでもう一度、流れをまとめてみます。
きっかけは新人のハルさんが「一人でも大丈夫そうなんで」と言ったこと。
その態度に怒ったのは先輩フジミさん。
フジミさんは直接には文句を言わず、より強い相手に訴えました。それが管理者である社員のコトコさん。
コトコさんは、フジミさんの訴えから「一人で何でもできるから教える必要はないと言われた」ことに同情し、ハルさんが悪いと判断したので、礼儀をわきまえるよう厳しく注意しました。それによりハルさんは謝罪し、両者は和解。
ここで何がハラスメントなのかというと、新人の態度に対し管理者が一方的に責めて精神的なダメージを与えたという点です。
子供同士の喧嘩でも、教師が一方の生徒だけを頭ごなしに怒れば問題になりますよね。管理者であるなら、まずは中立的な立場でお互いの話を聞き、当人同士の話し合いで解決させるのが模範的なやり方、といえるでしょう。
しかし、そんな理屈が全く通用しない職場環境はいまだに存在します。そんな相手から身を守るためには、攻撃パターンとその対処法を知るしかありません。
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ここで登場するのは、二つの攻撃パターンです。
一つは「ストローマン論法」、太字の部分。
「一人でも大丈夫」という言葉が、
レジ経験があるから「一人で何でもできる」
▶︎「教わる気がない」
▶︎「先輩を蔑ろにする礼儀知らずな人間」
という解釈になっています。
これを好意的に解釈すれば、
レジ経験があるから「ずっと側についている必要がない」
▶︎「自分の仕事ができる」
▶︎「ゼロから教えなくて済むので経験者でよかった」
になります。
相手の解釈次第で良くも悪くもなるという典型的な例でしょう。
ここでもう一つ、女性特有の攻撃方法が存在するのですが、お気づきでしょうか。
私が個人的に追加した、「人形使いなハラスメント」自分の腹立ちをより強い相手に訴えることで、自分が直接手を下さずに他の相手に攻撃させる方法です。
家庭内では、母親が父親をけしかけて子供に説教させ、自分は間に入って仲裁する、といった行為も同じで、別名「マッチポンプ」とも言われます。
このやり方のメリットは、自分は悪者になりにくいということ。周囲からは「被害者なのに相手を許すなんて、なんて思いやりのあるいい人なんだろう」という印象を持たれます。
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ハラスメントの種類がわかったら、いよいよ対処法についてです。
まずは新人のハルさん。
余計なことに気を使い、アクションを起こしてしまったことに問題があります。
ストレスが多く、皆が不満の捌け口を求めているような職場では、口数はできるだけ少ない方がいい。
そして、何より、自分と他人との境界線をはっきりと保つこと。
周りの様子に意識を向ける必要はなく、むしろ、仕事に集中した方がうまくいきます。
次に上司に詰められた場合の「言い返し」についてですが、ここで必要になるのが、それ以上怒らせることなく、言いたいことを相手に伝える方法です。
さっそく本に書かれた対処法に従って、相手を怒らせない模範的な解答を作ってみると、
まずは、相手の言うことを全面的に肯定します。
次に、「失礼」と言われたことに対しては、「礼儀知らず」なのではなく「誤解されるような言い方に問題があった」ことを強調し、自分の気持ちをはっきりと伝えます。そして最後には、「ご教授ください」という意味の言葉で締めくくる。
具体的には
「すいませんでした。全くその通りです、非常に言い方が悪かったと思います。
(驚いたままでもいいので、しっかりとした声で)
ただ、フジミさんご自身にもお仕事があるでしょうから、お忙しいならそちらを優先してもらって構いません、という気持ちで言いました。もし、側について教えていただけるのならありがたいです。ぜひ、ご指導お願いします。」
こんな感じでしょうか。
これで相手の怒りは一応収まると期待されますし、自分の気持ちも伝えられると思います。ただ、印象が良くなるかどうかは微妙で、そこはわかりません。
最初からいい印象を持たれていない場合、何を言っても捻じ曲げられてしまい、良くなることは少ないので、もしかすると、さらに悪くなるかもしれません。
ということで、次回は「印象操作にどう対処するか」について考えてみようと思います。