語尾のデザイン・・・宿題やらない子どもへの声のかけ方

(何度注意しても宿題しようとしない子どもにどう声をかければ?という相談に対し)

「宿題やったの?」「宿題いつするの?」という声かけだと「あなただけが○○しなさい、私は監視人、見張っているからね」という風に聞こえるせいか、「やらされ感」があるようです。この場合、子どもはヌラリクラリと逃げようとすることが多いし、いつまでたっても始めないことが多いです。

そこで私は「一緒に」感を出した言葉かけをします。そして実際、子どもが宿題に取り組む間は、そばにいるようにします。まず最初に声掛けするのは「今日は宿題あるの?」です。宿題するときは常に私も一緒にいるようにしているためか、子どもは素直に「○○がある」と結構素直に教えてくれます。

子どもはマンガを読んでいたりゲームをしていたりするので、それに見切りをつけるまでは楽しみの邪魔をしない、ということを言外のメッセージとして込めつつ、「そうか、何時から始めようか?」と声をかけます。この際、「何時から始めるの?」ではないことに注意。後者の語尾だと、

「おい、お前、何時から始めるつもりだ?約束しろよ、約束通りにしないと承知しないぞ」という脅し、尋問風なニュアンスを子どもは感じ取り、その状態で宿題をやったとしたらやらされ感満載ですから、やる気を失います。でも、前者の「何時から始めようか?」という語尾だと。

「その時間になったら一緒にやろうか、楽しみだね」というLet's感、一緒感が出ます。実際に一緒にいるつもりだから出る言葉なんですけど、子どもは親と一緒にいるのが好きですから、その気になります。また、マンガやゲームを楽しむ気持ちを尊重してくれているのも嬉しいようで、約束を結構守ります。

約束の時間が多少前後することもありますが、本人が「○○時になったらやる」と言った場合、不思議なほど、守ろうとします。これは、私が一緒にいようとするからというのもあると思います。その時間になると、マンガやゲームを伏せて「よし、宿題するぞ!」と子どもから言い出しますね。

私は「お!宣言通りだなあ、偉いもんだ」と軽く驚きの反応を示しつつ、「まずはどこから始めるの?」などと会話しながら、子どものそばに座って本でも読んでいます。すると、子どもは宿題を進めます。一緒にいてくれるのがちょっとうれしいみたいです。

言葉かけのデザインが「囚人と牢番」になっていないか、それとも「一緒に○○しようよ」というLet's感が出ているか、とても重要だと思います。前者の声掛けだと、仮に一緒にいたとしても牢番に監視されているようで嫌気がさします。後者だと、宿題は自分の意志でやっている気持ちになれるし、

その場の空気を一緒に楽しむ感覚で子どもはいられるようです。
以上、息子(小6)と違って、宿題するのがどうも好きになれない娘(笑)が宿題をするように仕向けるときのコツでした。

ほんのちょっとしたことなんですけど、語尾のデザイン、そして子どもとの関係性のデザインによって、子どもの前向きさが変わります。特に小さな間は、親と一緒に楽しく過ごすのが大好きなので、宿題している時間を楽しいものにするのが吉でしょうね。

宿題する時間はイヤな時間じゃない、という記憶が定着すれば、学年が進むと、自然と自分でやりだすようになると思います。息子も最初は宿題をしたりしなかったりがありましたが、今は何も言わなくても済ませてしまいます。宿題でイヤな記憶を作らないのが大切ですね。

小学2年生くらいまでは、時間の感覚が十分育っていないことがあります(10分がどのくらいかわからない)。その場合、大人の側が漫画の読み進んでいる程度、ゲームの進捗を見て、キリのよさそうなところが何分後に来るのか予想して、「じゃ、○○時から始めようか」と提案したほうがいいかも。

一方的な通告ではなく、今の自分が楽しんでいるものを尊重してくれ、しかも宿題をする際には一緒にいてくれるという約束も感じられた場合、結構その時間が来たらやめてくれます。まあ、夢中になると時計を見るのを忘れることがあるので、「あと5分で○○時だよ」と声をかけるのもよし。

以上、心構えをまとめると
・現在子どもが楽しんでいるのを邪魔しない。楽しんでもらえばいい。
・本人が楽しんだ上で、キリのいいところで終われる時間をこちらが提案。
・声掛けの語尾は「~しようか」と、一緒にやる感、Let's感を出す。
・実際、一緒にいるようにする。
・宿題をやっている時間は、明るく楽しく過ごす。しゃべる必要はない。「あなたとこうしてそばにいることが楽しい」という気持ちでいると、黙っていても不思議なもので子どもはそれを感じ取る。

こうした心構えで言葉のデザインと行動をとると、子どもは結構素直に宿題に取り組むようだ、というのが、私が試行錯誤から得た感触です。このアプローチは、職場でも活かしています。

なお、「何時から始めようか?」と語りかけるとき、一緒に眺めるのは針時計が望ましいです。うちには針時計しかありません。子どもが小さい間は時間の感覚が弱く、デジタルの時計だと、かなり大きくなっても時間の感覚がつかめないようです。それと比べると針時計の場合、

「4時から始めようか」と言えば、長い針が刻々と12に向かって近づいていくのが見えます。チラチラと時計を見て、あともう少しだな、というのも直観的にわかりやすいです。その間に覚悟が固まっていくようです。しかしデジタル時計の場合、3:58と出ていても、残り2分、という計算が難しい。

時間が迫っている、という感覚を、デジタルではつかみにくいようです。ですので、少なくとも子どものいることの多い空間では、針時計を壁にかけておくのが望ましいと思います。

補足。
「宿題やるの?」は、本人の自由意思、決断を尊重しているように見えますが、子どもからしたら決断するというしんどい作業を求められて、気が重くなります。「宿題しようか」というLet'sな声かけは、「もうやるのは決定だしね」と、決断する手間が省けて気が楽なようです。

言葉の意味は同じようでも、語尾に相手との関係性や、姿勢が現れます。この「語尾のデザイン」をおろそかにすると、関係性が悪化し、相手は硬直して動かなくなります。子育てでも職場の人間関係でも、語尾というのは十分気をつけたほうがよいかな、と。

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