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期待して傷つくことと心の投影の関係

人に期待して応えてもらえない時に怒りの感情が湧くことがあります。
 
「どうしてわからないんだ」などと。
 
でも怒りは二次感情である場合が多いのです。
最初に感じた一次感情を防衛するための感情。
 
そしてその一次感情は傷ついたことによる悲しみであることがあります。
 
人に期待をして、それに応えてもらえずに傷つき、傷つきから自分を守るために怒りの感情を抱く。
 
この過程で重要な点は、相手に何らかの期待をする時に自分の心の中のものが投影されている可能性があるということです。
 
今回は、期待して傷つくことと、心の投影との関係について説明します。




対人関係のストレスは、期待のずれから生じる
 
対人関係療法」という心理療法があります。
 
対人関係療法では、対人ストレスの原因を「役割期待のずれ」と考えます。
 
私たちは他人に対して何かしらの役割を期待しています。
自分が期待した通りの役割を相手が果たしてくれるとストレスはありません。
逆に相手が自分に期待する役割が、自分が引き受けたいものなら、やはりストレスはありません。

しかし、その期待する役割がずれていると、私たちは対人ストレスを感じる。
 
「役割期待のずれ」はそのような考え方です。
 
期待というのはストレスと大きく関係するのです。
 
 
相手への期待は自分の心の中のものが投影されている場合があります。
 
投影」について簡単に説明します。
 
自分の中にある感情、欲求、価値観などを他人に映し出して、それを他人のものだと思うようにする心理です。
自分を守ろうとする心の働きで「防衛機制」の一種です。
 
 
期待と投影の関係を見ていくと、投影が期待の土台になることが多いと言えます。
 
「自分ならこうする」という思いから「相手も同じ行動をとるはずだ」と考えるようになり、その期待に応えてくれないと、傷つき、傷つきから自分を守るために怒るという行動をとります。
 
 
例えば、子どもに当然わかっているはずだという期待をしたのに期待と違う行動をされて、子どもを責める親がいます。
 
親自身が過去に誰かから裏切られるなどして傷つけられた体験が大きく残っていて、人を傷つけてはいけないという思いが自分の中にあります。
 
その思いを子どもも持っていると思い込んでいるのですが、子どもは子どもの考えがあるし、何を求められているのかわからなければ応じられません。
 
 
例えば、偏差値の高い大学に入ることを子どもに期待する親がいます。
 
親もそれなりに偏差値の高い大学を出ているのだけれども、入社した会社ではさらに偏差値が高い大学出の人たちがいて苦労して傷つき体験となっているかもしれません。
 
でもその感情や価値観は子どもの中にはないので、期待のずれから衝突することもあるのです。
 
 
では、この期待と投影が生むギャップによる対人トラブルをどのように解消するのかについてです。
 
 
①   自分と他者は違うという認識を持つ
まずは他者が自分とは異なる存在であると認識することです。
「相手も自分と同じはずだ」という幻想を捨てて、相手には相手の感情、欲求、考えがあるので期待しないこと。
 
②   投影に気づく
相手の中にある性質だと思っていたものを実は自分の中にある性質だったと気づき、投影していたものを自分のものとして引き受けることを「投影の引き戻し」と言います。
投影に気づいて引き戻すのです。
 
③   期待の共有
そもそも自分が期待しているものを相手は理解しているのか。
そして自分の期待は果たして相手にとって現実的なものなのか。
そのことをよく考えた上で相手と期待を共有するのです。
 
 
 
以上、対人ストレスの原因には「役割期待のずれ」があり、期待は心の投影からくることがあると話をしてきました。
 
意識してみることで対人関係が少し楽になるかもしれません。
 
 
今回は、期待して傷つくことと心の投影、という内容でした。
 
 
最後までお読みいただきありがとうございました。
 
 
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小林いさむ|公認心理師

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