【右脳めし】癒し系ポスト・アポカリプス|ヨコハマ買い出し紀行(漫画)
「終末もの」というジャンルをご存知でしょうか。
終末もの あるいは破滅もの とは、フィクションのサブジャンルの一つで、大規模な戦争、大規模な自然災害、爆発的に流行する疫病などの巨大な災害、あるいは超越的な事象によって、文明や人類が死に絶える様を描くもの(Apocalyptic fiction)、あるいは文明が死に絶えた後の世界を描くもの(ポスト・アポカリプス、Post-apocalyptic fiction)である。
【Wikipedia:終末もの】
こう説明されると、ダークな世界観を連想してしまいますよね。
確かに、テレビシリーズ化されて大ヒットした『ウォーキング・デッド』は「ゾンビによる終末もの」ですし、『マッドマックス』や『北斗の拳』も終末ものです。
しかし、今回紹介する芦奈野ひとしの漫画『ヨコハマ買い出し紀行』は、それらの作品とは真逆の世界観を持つ作品です。
お祭りのようだった世の中がゆっくりとおちついてきたあのころ。
のちに夕凪の時代と呼ばれるてろてろの時間、ご案内。夜の前に、あったかいコンクリートにすわって。
これは、単行本第1巻のカバー袖に書かれている作者のコメントです。
「てろてろの時間」が、この作品の世界観を見事に言い表しています。
ストーリー
舞台は近未来の日本。主人公は人型ロボット、初瀬野アルファ。喫茶店「カフェ・アルファ」を営みながら、いきなりどこかに行ってしまったオーナーの帰りを待ち続けています。
スクーターで買い出しに行く横浜は、温暖化によって海面が上昇しており、今や横浜の繁華街は丘の上。道路は整備されておらず、思わぬ回り道をすることも。家はポツポツと点在するくらいしかありません。
作中の社会状況は、明言はされていないが、断片的な記述を総合すると、地球温暖化が進んで海面上昇が続き、産業が衰退して人口が激減し、人類の文明社会が徐々に衰退し滅びに向かっていることが示唆されている。しかし、その世界に悲壮感はなく、人々はむしろ平穏に満ちた日々を暮らしている。
【Wikipedia:ヨコハマ買い出し紀行】
そういえば、アルファさんはロボットだった
そんな世界で、アルファさんと周囲の人たちの交流や、穏やかな日常生活が描かれています。
カフェのテラスでくつろぐお客さんの隣で月琴を弾いたり、近所の子供と初日の出を見に行ったり、オーナーにもらったカメラで近所を撮影して回ったり。
その日常は人間のそれを変わらず、しばしば、彼女がロボットであることを忘れてしまいます。
登場人物が、アルファさんをいち住民としてごく自然に受け入れていることも、影響しているかもしれません。彼女がロボットであることを配慮する(例えば、お刺身を食べられない)ことはありますが、苦手な食べ物があるくらいの扱いですから。人間と変わらない接し方なのです。
文明社会が衰退していても、『ヨコハマ買い出し紀行』の世界に暮らす人たちは、ぼくたちのいる世界よりも、ずっと幸せそうです。
ぼくがこの作品を好きなのは、アルファさんたちの「てろてろの時間」に憧れているからなのかもしれません。
右脳めしとは?
右脳が司る「感性」や「創造力」の栄養源となるコンテンツのことです。
東雲創作堂ではクリエイターの力となる様々な右脳めしを紹介しています。