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不登校保護者支援を始めたきっかけ-3-

「娘の本当の気持ちに気づいた日」

10月の後期入学試験が近づき、私の心は高鳴っていました。前期試験に比べて募集人数が大幅に減っているのに、「娘がこの学校に通う姿が見られる」と疑うことなく信じていました。

試験当日、モタモタと支度をする娘を急かしながら車で試験会場へ向かいましたが、途中で渋滞に巻き込まれ、試験開始時間を過ぎてしまったのです。「時間に間に合わなければ受験はできない」ことは分かっていたので、イライラしながら運転していましたが、支度の遅い娘を責める気持ちは不思議と湧いてきませんでした。

駐車場に着いた時には、試験開始から5分以上が経過していました。会場へはもう入れません。私は娘に向かって、「ごめんね、お母さんがあなたの人生を潰してしまった」と謝りました。試験さえ受ければ、この子は合格していたはずだと信じて疑わない、私の心の底からの言葉でした。

すると、娘は涙を浮かべながら、こう言ったのです。「ううん、わたしが行きたくなかったからモタモタしてたんだ。悪いのは私なんだよ」と。

「行きたくなかった…」初めて聞く娘の言葉でした。驚いている私に、娘は静かに答えました。「うん…お母さんが一生懸命頑張ってたから、行きたくないなんて言えなかった」

その瞬間、私は自分の考えがどれほど一方的だったかに気づかされました。私は娘の気持ちを聴かず、勝手に「きっとこうだ」「こうに決まっている」と決めつけていました。「親だから子どもの気持ちが分かっている」と信じていました。ですが、実際は何一つ分かっていなかったのです。娘のためだと思っていたことは、すべて自分のためだったのかも・・そう思った瞬間でした。


気づくための場所

この後期入学試験までの半年間で、私の中に何かが変わり始めていました。その変化のきっかけは、自分の想いを話せる場所があったことです。子育てに悩んだ時、誰かに話を聞いてもらうことで「自分の捉え方には、癖がある」「自分の考え方には偏りがある」と気づけたのです。親になるのに免許や資格や学校があるわけでもなく、自分が育ったようにしか子どもを育てられない。だからこそ、何が間違っていたのか、どう捉え直すべきか、気づくのは難しいことだと痛感しました。

子育ての不安を抱える保護者、特に不登校の子を持つ保護者が、安心して思いを話せる場所がどれほど大切か、改めて感じました。娘とのこの経験が、今の私の活動の原動力です。同じように子どものことで悩む親御さんの話を受け止め、支えになりたい。私自身が変われたように、そして、子どもたちの心の声を受け止められるようになるために、きっと誰かの心の助けになれる——そんな思いで、不登校保護者支援に取り組んでいます。

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